CB400SF VTEC 中古車仕上げ:体重は増え、毛量は減り、見た目は変わったが・・・ | M.B.A.E.S

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現在製作中の車両・現在販売中車両・過去の販売車両を「どのように何をしたか」といった作業内容・詳細を記した記録です。


~~ プロローグ ~~

ある日、店の電話が鳴った。

「CBなんですけど、買取り出来ますか

昼過ぎに相棒2が車両を引き取りに行くことになった。   



車両を店に持ってきて見てみると記憶にある車両だった。
私は人の顔と名前は驚異的に覚えられないが、バイクはかなり覚えられる。

私:「このバイク、何か見覚えあるんだけど何だったかなぁ

相2:「アレじゃないっすかね!?修理に入れたけど後で押して帰った・・・」


ああそうだ・・・。
数年前の事。
個人売買で買ったけど、エンジンが掛からず・・・。
ウチに持って来たけど、アチラコチラがダメで・・・。
見積りを出すも、お金が無く・・・。
「エンジンが掛かるようにだけ」と言われたが、

「タイヤもブレーキもダメ!!前後のサスも全然ダメだ
!!

 

エンジン掛かるようになったら乗るだろ!?危ねぇよ!!

最悪自分が怪我するだけならまだしも、園児や小学生の列に

突っ込んだらどうすんだ!?責任取れねぇだろ!?


と、強い口調で修理を促すも、「自分らで(整備)ヤルんで・・・」と押して帰ったやつだ。
その後しばらくの間、「整備したかな」「調子良くなったかな」「都合の良いバイク屋に巡り会えたかなと気になったのを覚えている。

外観であれから乗ってないことが見て取れた。
あの時より酷い有様だった。
『放置期間』・『雨曝し期間』が長かったようで、“アルミ部分”と“メッキ部分”が壊滅的な状態。
買い取り金額を連絡した。
「そ・そんなに高く取ってくれるんすか!?お願いしようかな・・・」
と買取り成立した。

数時間後、オーナーが金を取りに来た。 
「ウチから押して帰ってから自分らで整備したの乗ったの
と尋ねたが、キョトンとしていた。
少し話したが、話が食い違う・・・。

彼が言うには、
このCBは十代の青春を共に過ごした大切なバイクだった。

調子良くてスピードも出て、誰にも負けた事がなかった

車に乗る歳になって、だんだん乗らなくなったが、手放さず保管していた。

それを後輩が「売ってください!」とあまりにも頼むので、売ったらしい・・・。

他の用事で、数年ぶりにその後輩に家を訪ねたところ、庭にCBが放置され

 

ていたので引き上げた
という事らしい。ウチから押して帰った2人の内のどちらでもないのね・・・。

買取り代金を渡したが、話を止めようとしない。
どうやらピロートークが必要みたいだ。
私達からすれば車両を買い取る行為は日常茶飯事だが、一般人からすれば特別な事だ。
『車両を手放す寂しさ』なのか『後ろめたさ』なのか、はたまた『物を売って現金にする昭和的行為の恥ずかしさ』なのか・・・。
バイク王が想い出も一緒に買い取りますと、CMを打っているので、私も少し付き合うとする・・・。
元オーナーが一通りCB想い出話を話していた。
すると、「俺のこと覚えてないっすかと言い出した。

私:「い・いや・・・。ゴメン・・・。覚えて・・・いない・・・」

元オー:「あれ!?違う人かな・・・ここのオーナーさんっすか

私:「そうだけど・・・」

元オー:「じゃあそうだな。昔、髪長くて後ろで縛ってました

私:「そんな時代もあったね」

元オー:「間違いない昔、怒鳴られてスゲー怖かったのを覚えてる!!

私:「怒鳴った!?俺が!?

元オー:「今みたいな雰囲気じゃなかったっすよなんか丸くなりましたねぇ(笑)」

私:「十年前と比べると、頭はハゲ上がったし、太ったからね・・・」



なんでも、車とのチョットした接触事故でウチに修理を依頼したみたいで、その時「本当は痛くないけど通院して〇〇〇万円引っ張ってるこっからあと1年ぐらい引っ張って〇〇〇万円保険屋から引っ張ってやる!!と得意気に話したところ、「ダセぇな。痛ぇのを痛くないって言うのが男だろカッコ悪いんだよ!!と、私は怒鳴ったらしい・・・。

「覚えてないけど、今でもその考えは変わっていない。だからきっと言ったんだろうね」

十数年で私もCBも外見は変わり果ててしまったが、私の中身が変わっていないようにCBの中身も変わっていないような気がする。