おはこんばんちは~
今回ご紹介するのは
「12th Fail」(2023年)
Netflixでどんな映画を観るかって探す時、上がっているリストを見て目についたものをIMDb(Internet Movie Database)でチェックします。色々な情報と共に10点中いくつか、って評価がついていますので、参考にします。
チェックの結果7以上なら観るようにしていますが、6~7でも出演者など興味をひくものがあれば観ます。
6以下は、ちょっと考えます^^;
高評価でも観始めたらテイストが合わないってものもありますけどね。
それで、この「12th Fail」を見てみましたら、9.0なんですね。あの「RRR」でも7.8、「バーフバリ」が8.2。
ここの評価がすべてではありませんが、でもいままで9.0ってほとんどみたことありません。
まず予告を見ましたが特に劇的でもなさそうだし、どこが…って感じだったんですよね。
監督/脚本はヴィドゥ・ヴィノード・チョープラ
「きっと,うまくいく」の脚本を手掛けた方です。
観た後流石なのは分かりました。
主演は ヴィクラント・マッシー
助演 メダー・シャンカール
ヴィクラント・マッシーはこの映画でインド映画祭の主演賞を取ったようです。
地方の貧しい青年が、上級警察官試験に挑むという話です。
実話で、実名で出てきます。
どうも日本のネトフリでは見られないようなので、完全ネタバレでいきます。
1997年。インドの北、チャンバルという小さな村に住むマノージ(ヴィクラント・マッシー)。
後に生涯の親友となるプリタムがナレーションをし、マノージの事を紹介します。
マノージの父は真面目で、農民から植え付け用の種を搾取しようとする村長からの書類にサインをしませんでした。
その事をとがめた警官にはむかったため営業停止になります。
気骨のある父は高等裁判所に訴えることを決意し、そのため家を離れることにします。
兄とマノージは父が出て行った後の家計を支えると言います。
マノージは12年生(高校3年にあたる)の卒業試験を迎えていました。
マノージが通う村長運営の学校はカンニングが当たり前のように行われていて、校長は黙認していました。
村にはギャングも多く、その子供が落第したら学校が何されるか分からない…というのが理由の1つのようでもありました。
試験当日、新しく赴任した警視正のデュシャントが部下と共に学校に乗り込んできました。
別室に招き入れ、賄賂を渡そうとする校長をデュシャントは即逮捕します。
もう学校ではカンニングは許されなくなりました。
家計を支えるため、兄とマノージはお客をのせてリクシャーを走らせ収入を得ることにしました。
しかし、村長運営のバスに乗り換えさせようとその手下が邪魔した時争いになります。
村長の手下は、リクシャーで酒の密輸をしようとしたと事実無根の訴えをし、警官に2人を逮捕させます。
警官と言い争いになるうち、マノージが祖父のライフルで撃ってやると口をすべらすと、
ライフルを持ってこい!明日の朝まで戻らなければお前の兄を撃つ、と言われます。
警察署を出たマノージは家ではなく、警視正のデュシャントの家に向かい助けを求めます。
夜も更けていましたが、話を聞いたデュシャントは警察署に向かうと、兄を釈放し、部下たちをしかりつけます。
兄とマノージが歩いていると、デュシャントの運転する車が背後から来て、
2人を家まで送ってくれると言います。
車の中でマノージが言います。
「自分の父親はあなたのように誠実な人間です。でもその誠実さの故にどこに行っても営業停止になったりしました。そこで、誠実であることにはあまり価値がないのではないかと思い始めていました。…でもあなたを見て、誠実な人が力を持てば、物事を変えていくことができると思いました」
そして、車を降りる時に、あなたのようになりたいです。どうしたらいいですか?と聞くと、
デュシャントは「不正を止めること、それだけだ」と言って去って行きます。
1年後、デュシャントは異動になり、村は以前と同じ状態にもどり、学校ではまたみんながカンニングするようになりました。
マノージを除いて。デュシャントの言葉がマノージの心の中に響いていたからでした。
自力で12年生の試験をパスするのに3年かかりました。上を目指す学生なら落第することの無い12年生のテストに落ちる…これが「12th Fail」という映画の題で、最後のインタビューにも影響してきます。
試験に受かると、おばあちゃんがマノージを呼んで、箱に入ったへそくりを渡します。年金をコツコツ貯めたもの。
それを持って警察官試験を受けに行き、今度帰って来るときは制服姿で戻ってくるんだよ、と送り出してくれます。
勇んでバスに乗り、試験のある街グワリーヤルに向かいます。
着いたときうたた寝をしていたマノージ。もうまわりに誰もいません。
降りようとするとお金の入った荷物がありません。
車掌に聞くと隣の子連れの母親が持って行ったと言います
一銭も無くなった上、試験の予備校に行ってみると、
国の方針で、このポジションは無くなったため、予備校も閉鎖だと言われます。
お腹はすくがお金はない。
マノージは思い切ってレストランオーナーに何でもするから食事を食べさせてくれと頼むと、
快く出してくれました。
そこで同じテーブルになったのが金持ちのぼんぼん、プリタムでした。
プリタムは父親に言われて上級役人になるための試験を受けに来けれど、同様にそのポジションが無くなったので家に帰ろうかと思っている、と言います。
(インドの警察官、政府機関の役人になるシステムがイマイチ複雑で良く分かりませんので、間違いがあったらごめんなさい)
このプリタムとの出会いが彼の人生を切り開きます。
その時、プリタムの携帯電話が鳴り、父親から別の上級試験があるデリーに行けと言われます。
デリーでは、マノージがその存在さえ知らなかった、(受けようとしていたのより高い地位になる)IPS(Indian Police Service)のテストが受けられるとということをプリタムから聞きます。
マノージに切符代は後で返すからと執拗に頼まれ、プリタムは何故かノーと言えずに一緒に行きます。
デリーは田舎育ちのマノージには全く別世界、人であふれていました。
しかし、なんのつても無いこんなところで、一体どうすれば、と思っていると、
プリタムの所に食事などを配達している男がガウリを紹介してくれました。
ガウリもIPSを目指しています。
何回も受験し、今年がファイナルとなる(4回までしか受けられない)ガウリの元にはノウハウを学ぼうと多くの学生が集まっていました。
ガウリによれば、最終のインタビューにたどり着くまで難しいテストが幾つもあり、
インタビューまで行くのが200,000人中30人。後の199,970人はゼロに逆戻り。リスタート,再び始めるしかない。
受けられる最後のテストに自信をもって臨んだガウリでしたが、
残念ながら受かりませんでした。
ガウリは、俺はもう受けられないが、俺のやれなかったことを君たちがやれ、
地方から出てきた貧しい群れの中の1人でも受かれば、それは俺の勝利でもある、と
「リスタート」という名のティ―ショップを作り、試験に臨む学生たちを励まし、サポートするのでした。
マノージは図書館で働く所と泊まる部屋をもらい、ガウリの店も手伝いました。
出来る限り、ありとあらゆる仕事をしつつ、残りの時間は図書館で勉強しました。
マノージの最初のチャレンジは失敗。
ガウリが来てリスタート、やり直せ!と励まします。
「きっと、うまくいく!」の合言葉はAll is well!すべて、うまくいく!でしたが、この映画ではRestart!です。
補習校探しで知り合った、良家の子女サルダー。
医学校に行っていたが、自分は公共機関で働きたいと強く願うようになり、資格試験を取り直すことにした、と言います。
広い都会でマノージに初めて話しかけてくれた女性でした。
2人で同じ補習校に通い勉学に励みます。
プリタムも頑張っていますが、
父親に強制されてなので身が入りません。
本当はTV関係の仕事がしたいと思っているのだと打ち明け、
何がやりたいのかと聞いてくれたのはマノージが初めてだ、と言います。
2回目の挑戦で最初のテストに合格。次の段階のテストに臨みますが、
エッセーの課題を読み違え、大失敗をしてしまいます。
心を寄せていたサルダーに、「愛している。僕を愛していると言ってくれたら、世界をひっくり返してやる」と電話しますが、戸惑ってしまったサルダーからは良い返事はもらえませんでした。
落ち込んで、村に帰ってみると、おばあちゃんは亡くなって、兄は遠くに働きに行き、
母と妹が暮らしに困っていました。
おばあちゃんに制服姿を見せられなかった…
恋をしている暇はない!
デリーに帰ってリスタートします。
館長の誤解から図書館をやめる羽目になったマノージは、
粉ひき所で15時間働いて家に仕送りまでし、6時間勉強、寝るのは3時間という生活をしていました。
そんな所に父親が訪ねてきます。
いくら裁判で戦っても埒が開かず、もう諦め、妥協して生活しようかと思う、と言います。
そんな父親を、自分が頑張るから、戦い続けろと励ますマノージ。
めげない、まっすぐなマノージの笑顔に癒されます。
サルダーが戻ってきて、驚いただけで、つれなくするつもりではなかった、と言います。
マノージが働いている粉ひき所まで訪ねて来て、こんな環境では勉強できないから、お金を借りて…と勧めますが、
マノージはこのままで頑張れると言います。
しかし、現実は、3回目のチャレンジにも失敗してしまいます。
20問ある問題に12しか答えらえませんでした。
その夜、試験も上手くいかず、ガールフレンドが先に試験に受かって去って行ったこともあって、プリタムは酒を飲み荒れていました。マノージとサルダーが一緒にいるのを見て、サルダーと会っていなければ、マノージは試験に受かっていただろう。また試験に落ちたらサルダーも去って行くに違いない。どこの女が負け犬と一緒になるもんか!とわめきます。
席を立っていくサルダーをマノージが追いかけていくと、
サルダーが、言います。「言ったわよね、もしあなたを愛していると言ったら世界をひっくり返してやるって。『マノージ、愛してるわ。行って!世界をひっくり返して!』」
マノージは走り始めるとそのまま2年前に合格した男の所に行きます。
どうしたら試験にパスできるかと聞くと、彼はストップウォッチでマノージが書く速度を計ります。
そんなでは20問答えられない。無理だ、お前には出来ない、と言います。
それを聞いたガウリは、当たり前だ、粉ひき所で働きながら出来るわけがない、と店に勉強部屋を作り、母親には自分が仕送りをするから勉強だけに集中するようにと言います。費用は初給料で返してもらう、と。
ガウリの気持ちを理解すると、マノージはそれを受け入れます。
遂に4回目、最後となるチャレンジに無事合格することができました。インタビューを残すのみです。
しかし、インタビューで落とされる可能性は十分にあります。
12年生の試験で落ちたことがあるというのは大きなマイナスになります。
年配の案内係が、そういうのはごまかした方が良いとアドバイスしますが、
マノージは試験官の質問にすべて正直に答えます。
試験の途中で廊下に出された時、後で一人になった時に読んでとサルダーに渡された手紙を読みます。
「IPSになっても粉ひきのままでも、あなたと生涯を共に過ごしたいと思います。結婚してくれますか?」
それに力を得たマノージは後半のインタビューにリラックスして臨みます。
しかしマノージが立ち去る時、5人の試験官のうちの主任が(インタビューは)時間の無駄だったと言います。
2か月後の結果発表の日。
時間の無駄だったと言われたのだから、落ちているに違いないというマノージをサルダーは「IPSになれなかったら粉ひき所で働くわ」と引きずるようにして発表会場に連れてきます。
怖くて結果を見られない、というマノージに代わってサルダーが見に行くと、
マノージは合格していました。
偏見にとらわれていて高飛車な言い方をしていた主任以外の4人の試験官は、むしろマノージの誠実な人柄こそがこれからのIPSに必要な人材なのではと考えていたのでした。
ガウリも駆け付け、
最後の試験にも落ちて父親のプレッシャーも無くなり、さっぱりしとたプリタムが、(サルダーのアドバイスのお陰もあって)カムコーダーを手に、合格の様子をテレビレポーターとしての最初のニュースとして録画します。
電話を受けた母親は大喜び。
父親はそれを聞くと派出所の警官の所に向かいました。「お前がコケにしているのはIPSの父親なんだと教えてやるんだ」(IPSは警察組織全体に影響をおよぼせる)。
そして、その一年後、
1人のIPSがマンダサウル警察署を訪ねます。
みんな敬礼し、彼に敬意を示します。
署長はデュシャントです。彼も直立不動で敬意を示します。
入って来たIPSはデュシャントの前に来ると、(足先に触るという、インドでは)最大の敬意を払い、最初の結婚式招待状を受け取って下さいと渡します。
何故、年下とは言え自分より地位の高い彼が敬意を払い、招待状をくれるのかと戸惑うデュシャントに、マノージは、「僕の事を覚えていないんですね。昔、不正をするのを止めろ、と言ってくれました。不正をするのを止めました」と言います。
「君は、あのリクシャーの少年か!?…良くやった!良くやった!」とマノージをハグするデュシャント。
その前あたりからかなりウルウルですが、このラストは爆泣きです。
思いだしても泣けてくる。
デュシャントが出てくるのは、学校でのシーン。マノージから呼ばれ警察署に行き、車でマノージと兄を送るシーン、そしてこのラストと(全2時間26分中)計7~8分でしか無いのですが、これが全体をバチーンと決めているというのか、このシーン無しには成り立たないですね。というか、このシーンの為に他があるとか…分からん。とにかく良い(笑)
アクションも、ダンスも、セットも派手な物はなーんにもありません。
背景はド田舎。雑然とした都会の片隅。教室。試験会場…
実話で、青年が試験に挑戦する話とくれば、大体結末は悪くないに決まっています。
なので、そんなにドキドキもない。
映画としては地味。
でも、場面が、セリフがぐいぐい来る。
なんなのこの映画!
素人なのでカメラワークとかなんタラとか良く分かりませんが、
車の中で、デュシャントとマノージがバックミラーを見ながらする会話のシーンはなんとも言えないです。
他にも、ガウリがみんなに訴えかけるシーンや、お母さんが電話に出るシーン、など、なんだか残ります。
そして物語の流れ、家族、友情、恋愛の構成のバランスが絶妙。
これが今年のMyベスト映画になるんじゃないかなんて気がしています。
日本のネトフリで観られないみたいなのが残念ですが、
もしどこかで見かけることがあったら是非観てください。
暖かいパワーのもらえる映画です。
おまけ:
これが実話というのが本当に驚きです。
左が本物のマノージさんとサルダーさん、右が演じた役者さん達
画像はすべてお借りしました。