介護職に就いて、初めて夜勤業務に入ったときのオリエンテーションで、少し驚いて、少し「もやっと」したことがある。


夕方、入居者をデイルームから居室へお連れする。
歯磨きを済ませ、カツラと入れ歯を外し、トイレに座ってもらう。
排泄が終わったら、そのままパジャマへ着替えてもらう。

先輩職員は言った。
「トイレに座ったときにパジャマに着替えたら、時短になるし、
立ち上がる回数も減らせるよ」
……なるほど、理屈はわかる。

でも、心の中では思っていた。
私だったら、トイレで着替えるなんてイヤ。
ベッドで着替えさせてほしい。
トイレからベッドなんて、たいした距離じゃないじゃん。
そう言いたかった。
でも言えなかった。
代わりに口から出たのは、「なるほど」という相づちだった。
高齢者にとって、立ち上がる回数が減ることは、
きっと身体的には楽なのだと思う。
転倒のリスクも減る。

でも、元気だったころ、
「パジャマに着替える場所」に
トイレを選んでいた人は、きっと少ない。

とはいえ、時短になるのも事実だ。

職員側にとっては、確かに楽だ。

そして今の私は、 夜勤を一人で任されるようになり、結局、トイレで着替えてもらっている。
座った時点で、ズボンも下着も下ろしている。

紙パンツとパッドを確認して、そのままズボンを脱がせ、パジャマをはく。
上もさっと着替えられる。
効率はいい。
でも、それでも思う。
私だったら、やっぱりイヤだ。
ある日、自分の意見をはっきり話せる入居者に聞いてみた。
「トイレで着替えるの、どうですか?」
返ってきた言葉は、
「イヤだけど……でも、あなた忙しいでしょ?」
その一言に、胸が詰まった。

おっしゃる通りです。

入居者の想いを、ちゃんと尊重できていなくて、ごめんなさい。
入床介助って、どうしてあんなに慌ただしいのだろう。
2時間で15人をベッドに案内するなんて、正直、無理だ。
どこもこんな感じなのかな?
まあ、私の夜勤では、いつも終わらせていないけれど。
すべての入居者がパジャマに着替えるわけでもないし、全介助が必要なわけでもない。
それでも、夕食が終わる18時から、20時の巡視まで、
どこか「タイムアタック」の感覚がある。
どうにかならないかな、と思う。
本当は、入居者のペースで、ゆったり着替えてもらいたい。
でも時間に追われて、本当は自分でできる人のボタンを、私が留めてしまう。
話したそうな気配を感じても、「また明日ね」と言って、聞かずにベッドに入れてしまう。
トイレで着替えて、職員のペースで入床準備を進めていく毎日。
これでいいのか、
ずっと考えている。
今も、
その答えと解決策を探している。