32.遅い初恋《邦義と貴志》 | ディズニーとアニメと創作と

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オリキャラをこよなく愛しているので、同性カップルも異性カップルも分け隔てなく書きます。(まぁ腐女子でもあるので男性同士が多め?かもしれない。)なので色々注意。

おまたせしました(待ってない)!邦義が恋に落ちた時の話です。邦義って多分元来は恋愛感情がない子なのかもしれない…って思い始めたのがきっかけでかけた話です。

貴ちゃんへの恋愛感情はあるよ!多分!でも、私の中で、邦義は貴ちゃんに対してもあまり欲情しないというか…性的欲求があんまりないキャラなんですよね。ただ、貴ちゃんからの欲求には応えてくれるというか。うん。



部屋で原稿に向かいながら唸っていると、ドアを叩く音がする。


「…どうぞ?」

「ごめん、兄さん、修羅場だった…?」

「醍ちゃん、珍しいね、俺の部屋に来るなんて。」

「…いや…ちょっと聞きたいというか…まじめに話したくて…」

「…そこおいで?」


進まない原稿は一度投げ捨てて、可愛い弟の話を聞くことにした俺は醍ちゃんに椅子に座るよう促すと向かい合って椅子に座る。


「で?真面目な話って?」

「…いや、なんか、今更聞くのもあれなんだけど…兄さんはどうして立石さんと付き合ってるのかなって。」

「…うーん、難しい質問だねぇ。どうしてそんなこと聞くの?」

「…俺にも恋人ができたんだけど…」

「あぁ、そろそろ一年だっけ?」

「うん。いや、ちゃんと多分好きなんだけど…いかんせん初恋?だとおもうから、いや、でもなんか、不安になってきてさ。」

「醍ちゃんは俺よりコミュ力あるし、人付き合いが器用だから問題ないと思うけどなぁ。俺は…貴ちゃんが初恋だし…認めたくないけど一目惚れだしね。認めたくないけど…。」

「認めたくないのに一目惚れなの?」

「振り返ると一目惚れとしか言えないんだけど、なんとなく認めたくないし、本人には言ってない。」

「えっ…?」

「…まぁ、遅い初恋は変にこじれるものだよ。」


高校生になった頃には「多分自分は誰かを愛することはないのだろう」と漠然と思うようになった。男子校とはいえすぐそばには共学の学校もあったし、全く女性と関わりがなかったわけではなかった。同級生の話題はもっぱらアイドルやすぐそばの学校のマドンナについて、本当にごく一般的な学生の持ち出す話題だったと思う。


「邦義ー!お前はどっちが好み?」


よくある質問だ。可愛い系かキレイ系か。この場合は「性的に」どちらが惹かれるか、そういう意味で聞かれていることはわかるが、正直どちらも惹かれることはない。


「…お前はどっち派なの?」

「俺はやっぱりこっちの子だなぁ!胸大きいし。」

「ふーん。」

「邦義、先生に呼ばれた。手伝ってくんない?」

「しげちゃん、いいよ。」

「…大丈夫?」

「なにが?」

「邦義、あの手の質問嫌いでしょ。」

「うーん。正直人を抱きたい気持ちがわからないからなぁ。」

「それはどういうこと?」

「俺は、俺以外に触れられたくない。」

「潔癖症?」

「じゃないのは重原がよくわかってるでしょ。」

「だよなぁ。」


『そういう目』で見られることも『そういうこと』を想像するのもそれだけで吐き気がする。でも『少女漫画』とか『ドラマ』の世界で『他人』がそれを楽しむのは別に問題ないし、それはそれでいいと思う。ただ、『自分』が対象になること、それが死ぬほど嫌なのだ。でも重原や家族、それを大切だと思う気持ちはあるから決して『冷めた』人間ではないと思いたい。


「そういえば妹さんそろそろ七五三?」

「麗ちゃんと醍ちゃん二人で七五三さんだよ。姉さんが張り切ってデザイン作ってた。二人ともかわいいんだぁ。」

「そういう顔してればもう少し友達できんじゃない?」

「うるさいなぁ、今が楽しいからこれでいいんだよ。」

「…もしかしなくても、ロリコンとか?それか熟女系がいい感じ?」

「それ考えたことあるけど、弟と妹以外にはとくに興味わかないからなし。年上も屋敷にたくさんいるけどそれもないね。」

「なるほど…まぁ、それでも、人生困ることはないからいいんじゃね?」

「ちなみに重原の好みは?」

「俺、人間に興味持てないから…ロボットとかが好きなので。」

「お前も人のこと言えないよね…」


同級生達に言わせると俺と重原は『女子ウケ』がいいからそばの共学との交流企画に来てほしいと言われる。重原は「対象外」すぎて逆に参加をしているようだが、俺はどうしても『不快感』が勝ってしまうから参加をしたくない。それでも仕方ない行事は耐えられるだけ出てあとはトイレに逃げてから帰宅する。これを悟られないように気がついたら知り合いに対して「パーソナルスペース」の近い「人懐っこい俺」が完成した。人間こちらから詰めるとこっちには詰めてこないものなのだ。


「…大学、重原と同じで良かったよ。」

「また必要最低限としか付き合わないつもり?」

「んー、そうだね。」

「まぁ、俺が適当に友達つくるよ…」

「…えっと、学籍番号順だから、ちょうど折り返しで重原は俺の後ろか…」

「ラッキー。あ、邦義、隣のやつくらいは仲良くしとけよ。どうせ色々被るんだから。」

「うん。」


正直面倒だなー、そう思って先に座っていた『隣の席の人』に話しかけた。長めの前髪がいかにも「目を合わせるのが苦手」そうな男で、長い図体を縮こまらせて座る様子があまりに可愛くて、初めは言葉を失ってしまった。気を取り直して自己紹介を済ませた俺に向こうはおどおどと自己紹介をしてくる。いかにも『関わりたくなさそう』な反応が逆に新鮮で、目を合わせればなにかに怯えるようにこちらを見てくる。初めての感情だった。ときどきぶつかってしまう手も、当たってしまう膝も、いつもなら耐えられないような距離感もすべてが問題なく感じる。いつもの吐き気も不快感も感じない。だから、不思議と手に入れたくなったんだ。


もしかしたら俺はこの男になら愛されてもいいかもしれない、本能で感じたその気持ちに名前がつくのにたいした時間は必要ではなかった。




ご察しかもしれないですが、「触られたくない」のは「例の事件」からです。でもあれがなくても多分そういう欲求はなかったと思う。貴ちゃんは知らないけど、邦義が触ることを許容してる人間って家族と貴ちゃんだけなんだよな。重原くんや水野さんですら一言断ってからじゃないと触れないんだなぁ。距離は近いけどね。