邦義の昔のことは邦義の頭の中のみで口には出してない。当たり障りの無い会話を醍ちゃんとしてるだけです。こんな気持ちを貴ちゃんに知られた日には大変なことになってしまう(=^・ェ・^=)(貴ちゃんの情緒がやばそう)
気がつけば、貴ちゃんと一緒にいるのが当たり前になってきた気がする。『邦義が人前で寝るとは思わなかったよ』そう重原に笑われたとき、初めて自分がおかしいことに気がついた。貴ちゃんが手を出してこないだろう安心感からつい油断をしてしまったし、それに不思議なもので『手を出されてもいい』そう思った自分もいた。
「…ちょっと貴ちゃんから離れようかなぁ。」
「は?なんで?」
「自分の心がわからないから。」
「またよくわからないことを言う…邦義お前は…」
「?」
「…いーや、自覚するまで付き合うよ…」
「よくわからんけど、ありがとう。」
「でも、貴ちゃんが離れる可能性もあるんだからな?」
「それはないでしょ。」
「はい?」
「貴ちゃんは俺のこと大好きだもん。」
「…えっと?」
「…自分で落としておいて、俺がわかってないのやばいよね。」
「そこまでわかっていてなんでそうなる?」
「…なんでだろうね?」
俺の顔が『真面目』だったからか、重原はそれ以上は突っ込んでこなかった。正直貴ちゃんへのこの気持ちが、『やっと手に入れたおもちゃ』への感情と何が違うのかがわからなかったんだ。ただ、それを、言ったら重原は本気で呆れるだろうなってことだけはわかるから口には出せなかった。だから自分で考えようと思ったんだ。
「邦義いまどこ?」
「f502」
「えっ、邦義なのに返信早」
「そう?」
「もしかして携帯に張り付いてる?」
「そんなことないよ、偶然だよ。」
重原に指摘されて気がついた。いつからだろうか、俺が携帯を見るようになったのは。前は連絡が取れないとよく重原に怒られていた。俺は何を待っているのか。
「あー、もう。なんだよ。俺って本当にバカ。」
一人の教室でそう呟けば、虚しさだけが残ってしまう。自分で蒔いた種なのだから自分でどうにかしなければならない。それでも、この自覚してしまったこの気持ちに名前をつけるのはなんだか気恥ずかしいのも事実なんだ。それでも…
「きっとこれが『好き』ってことなんだなぁ。」
気がつけば君のことで頭はいっぱいで、君からの熱い視線がないと俺は不安でたまらなくなってしまっているんだ。これが『恋』でなければ一体何だと言うのか。
「うわ、邦義何その状態?」
「…重原、ごめん、荷物見てて。」
「え?なに突然…」
「ちょっと外の空気吸ってくるわ。」
「あっまっ…まじ速えな…中距離走選手半端ない…」
君の授業はだいたい把握してる。それをわかった上で今回取ったんだ。探せば君のことは本当にすぐに見つけられるんだ。
「どうせ会えなくてもあっちは元気だろうしなぁ。」
「誰が元気だって?」
「うわっ邦義、いつ来たの。」
「今。歩いてる貴ちゃん見えて走ってきた。いきなり走ったからみんな置いてきちゃったっぽいな。まぁ、教室で会えるでしょ、いつものことだし。」
「本当、ネコみたいなやつだよな、お前。」
今話すべきはそういう話ではない。なんで走ったのか。今キミに会えて嬉しい。それを伝えなきゃいけないのにうまく言葉にできない。
「俺はね〜少し元気ないよ。」
「え、そうなの?」
「うん。授業ないと貴ちゃん連絡くれないし、そうすると週一回しか会えないから。」
「いや…連絡していいのかわからなくて…」
「普通に友達でも連絡するもんでしょ。特に俺みたいなのはくどいくらい連絡しないと捕まえられないよ?」
もっと言い方があっただろう、自分。そうじゃなくて…俺は君からの連絡がほしいんだ。くどいくらい。俺を愛してると、俺しか見えないと、そうわかるように接してほしい。そんなことは絶対言えないから、だからこうなってるわけで。
「…でも…俺重たいタイプだから、既読ついたらすぐ連絡ないと凹んじゃうし、そんなこと言われるとうざいほど連絡するよ?」
「うん。いいよ。」
「良くないだろ…だから連絡できなくてこっちは悩んでるのに。」
「それはどうして?」
「邦義に嫌われたら俺死ぬ自信がある。」
「あはは。貴ちゃん面白い。」
そうだろう。君はそうなんだよ。その言葉が欲しくてここまで来ているんだ、そう言ったらすべてが崩れる気がして思わず真顔になってしまう。『キミが好き』それが言えないから、『君は俺が好き』それを待ってしまうんだ。でもきっと君は…
「俺、邦義に恋してるんだから。」
あぁ、こんなにもあっさりと手に入れていいのだろうか。そんなにあっさりと言っていいものなのか。なんだか俺にはできないことをあっさりする君が、羨ましくて愛おしい。
だから俺は君が思うよりも君のことが…
「でもさ、やっぱり兄さんにとって立石さんは特別だよね。」
「どうしてそう思うの?」
「兄さんがあんなに『触られること』を許容する相手ってそうそういないもん。」
「…醍ちゃんにはバレてたか。」
「それってつまり心から愛してるんでしょう?」
「…醍ちゃん。」
「な、なに?」
「携帯出して。」
「へっ!?」
「貴ちゃんに電話繋いでるでしょ。そもそも部屋に入ってきたあたりでおかしいと思ったんだよね。」
「うっ…」
「今なら怒らないから出してごらん?」
「怒るときのトーンだ…立石さんごめんなさい…」
『あっえっ?俺は何も聞いてない!』
「だいたい想像はつくよ。良かった、昔のこと、回想はしたけど口に出さなくて。」
『まって、いや、だってちょっとくにの話聞いてみたいな〜って思って…』
「俺も聞きたいからのっちゃいました…すみません。」
「…醍ちゃんはまぁいいにしても…貴志は本当、いい加減俺のモノになった自覚を持てっつーの。」
『…今のもう一度お願いしていい?くに?』
「…あーもういい、そっち行く。やってらんねー。」
「今の照れたんですかね?」
『照れた。すごい照れた。』
「それ以上言ったら本当、覚悟しとけよ。」
ドアのそばで楽しそうに笑う水野に八つ当たりをしながらジャケットを羽織ると水野がバイクのキーを渡してくる。なんだよ、お前も共犯かよ。あーもう本当にやってられない。だからこの顔は呆れているのであって決して笑っているわけではないことをここに主張しておく。
これを踏まえて今までの邦義と貴志シリーズをみると『えっ…邦義…めっちゃ貴ちゃん好きじゃん…』ってなる。一般的なベタベタしないだけで邦義的には十分に甘えている。
前、賭けで触らない〜のときに反射で避けてしまった邦義がいるんですけど、本当にあれ以外は貴ちゃんに手を出されても受け入れています。(戯れるように逃げることはあるけど)邦義に触れようとしたら反射的に避けられるのは重原くんや水野さんにとっては日常茶飯事。高野くんは多分そういう場面すらないと思います。だから、重原くんや水野さんはすぐに『立石貴志』が『特別』だと思っていたし、『堕ちてる』ってわかったと思います( ◜‿◝ )♡