時系列のヒント
ハムレット役に抜擢されたのはいつ?
ロックスタウンでの幻の再会はキャンディが16才の早春。ハムレットの初演は「秋の公演」です。
この「秋」が何年後なのかは書かれていませんが、春に劇団に戻りその半年後に主役ゲットではあまりに許されるのが早すぎます。
「ロミオとジュリエット」を打ち切りにさせるほどまずい演技をし、その後失踪してしまった身勝手な行動は、社会人としてあまりに無責任だからです。最短ミラクルで1年半後でしょう。
公演が始まる頃、エレノア・ベーカーから招待券が届きますが、キャンディは「観に行けない」と謝りの手紙を出します。
この部分、旧小説では次のように表記されていました。
「あのいなか町でお目にかかって、もうずいぶん時がたったような気がします」復刻版492
ファイナルではこのように変わりました。
「ロックスタウンの町で声をかけて頂いてから、もうずいぶん時が流れたのですね」下巻271
比較すると、テリィのハムレットの復帰時期が遅くなっていると分かります。
ロミオとジュリエットのテリィの失態&失踪という無責任さや「ずいぶん」という言葉から推測すると、テリィの復活までの『禊の期間』は2年半~3年半、キャンディが20才前後の頃が妥当だと考えます。半年での復帰は絶対無理ですし、最短ミラクルの1年半でも早すぎると個人的には思います。
アーチーの婚約式はいつ?
ファイナルのアーチーはマサチューセッツ州の大学院へ進学しています。入学時点ではまだアニーと婚約していないことが文脈から読み取れます。下巻256~264
スキップはないものとし、在学中に婚約することもあるでしょうから、アーチーの婚約式は本人が23歳以降と仮定できます。
キャンディとアーチーは2歳差です。
これは享年が15歳に変更されたアンソニーとキャンディが2歳差で、そのアンソニーとアーチーが同じ歳だと書かれている(下巻221)事から割り出せます。
それにより、アーチーが婚約した時のキャンディの年齢は、21歳以上だったと考えられます。
この婚約式の時にキャンディが放った言葉があります。
「あの頃はまだアンソニーには(手紙を)書けなかった」下巻268
つまり21才のキャンディは、まだアンソニーに手紙を書いていません。
スザナが亡くなったのはいつ?
ファイナルでは具体的に書かれていませんが、小説の中の言葉から試算できます。
回顧録に出てくるキャンディの年齢は33~39才です。
これはキャンディが13才の時に亡くなったアンソニーが、死後20年経っているという小説内の言葉と、下巻小説の帯「30代になったキャンディが―」という言葉から導けます。
その大人のキャンディが「スザナの死亡記事を目にしたのはもう何年も前」下巻281 だと言っているので、10年未満と考え、記事を目にしたのは24才以降(33才-9年)となります。
つまりその頃まではスザナは生きていた事になります。
テリィが手紙を書いたのはいつ?
「あれから1年たった・・」 という書き出しのテリィの手紙。
「あれから」っていつだよこれが真っ先に疑問として浮かびます。考えられるのは3パターン。
キャンディと別れてから
冬のニューヨーク キャンディは15歳
ロックスタウンで幻の再会をしてから
初春のロックスタウン キャンディは16歳
スザナが亡くなってから
亡くなったのはキャンディが24歳以降
テリィは「1年たったら君に連絡しようと心に決めていた」とも書いています。
仮に①②だとすれば、あまりに脈絡がありません。
キャンディと別れスザナと生きることを決めたテリィが、1年後に手紙を書こうと思う理由が全くありませんし、そんな伏線も小説の中にはありません。
間もなくスザナと婚約するテリィが、このタイミングでキャンディに手紙を出したのなら、不倫する気満々となってしまい、あまりにも節操がない。個人的にはガッカリです。
スザナの死亡記事の次にテリィの手紙が配置されている事から、「1年」はスザナの喪が明けたタイミングと考えるのが自然だと思います。
理由は他にもありますので、詳しくはこちらで扱っています「考察⑤テリィの手紙」
これら諸々をヒントにして、主要人物の手紙の時系列を推測してみました。(正しいとは限りません)
ぜひみなさんも考えてみてください。
手紙の推定時系列
スザナからの手紙
アルバートとの往復書簡・前半
エレノアへの手紙
テリィへの手紙
アルバートとの往復書簡・後半
アンソニーへの手紙
テリィからの手紙
しかし、ファイナルでは以下の順位で登場します。
![7](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/275.gif)
![5](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/273.gif)
![6](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/274.gif)
![下三角](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/529.png)
![キラキラ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/088.png)
本の順番通りに読むと、キャンディはテリィからの手紙に対してノーリアクションなので、テリィの手紙を既読スルーしたような印象を持ちます。
そして次に続くアルバートとのイイ雰囲気の往復書簡。
続くアンソニーの手紙の中の「生きていても、会うことがかなわない運命があることも知ったのです」下巻327 と言って現在のキャンディに場面が移りあのひとが帰宅すれば、あたかもアルバートと生きていくのね、 と感じるような構成になっています。
そこが初見の読者の引っ掛かりやすいポイントです
あの往復書簡の大部分はキャンディが10代の頃のやり取りですし、アンソニーへの手紙を書いた時点では、テリィからの手紙はまだ届いていません。(※テリィファンの意見です)
旧小説ではラストを飾ったアルバートとの往復書簡が終ったところから、ファイナルは始まります。
物語の流れを掴む上で、手紙の順番(=時系列の把握)はとても重要です。
時系列の根拠
スザナからの手紙
キャンディが15才の頃。
「無事にシカゴに戻られたでしょうか。」下巻279という文面から、テリィと別れた直ぐ後、シカゴのアパート(マグノリア荘)に届いたことは明確です。
(手紙を抜き取っていたスザナは、この住所を知っています)
17才になる頃、キャンディは故郷の村に引っ越してしまうので、仮にその後にスザナの手紙が届くとなると、スザナはキャンディを捜索する必要がでてきます。
アルバートとの往復書簡・前半下巻286~315又は316
キャンディが17~19才前後。
「丘の上の王子さまが・・・。まさか、アルバートさんだったなんて」
と最初の手紙に書かれています。
同じ手紙には「アードレー家の大総長としてあれほどお忙しいとは思ってもいませんでした」下巻286
という文章もあるので、キャンディが大総長の事情に詳しくない頃=キャンディが故郷に帰って間もなく文通が始まっていると読めます。
2,3年後と考える人もいるようですが、それでもエレノアの手紙の前であることは変わらないのでしょう。
エレノアへの手紙
ハムレット初演の頃。キャンディが20才前後。
この手紙は「ハムレットの招待券」がエレノアから送られてきた返事として出しているので、ハムレットの初演の頃だと分かります。
初演がキャンディ20才前後だと考える根拠は、このページの最初の方で検証しました。
それをやんわり裏づける流れが、下巻270~回顧録から感じられます。
アーチーの婚約式(キャンディが21才以降)、アンソニーに手紙を書けなかった頃(同じく21才以降)の次に、ハムレットの招待状がエレノアから送られてきたエピソードが登場しています。
ハムレットの初演はその前後の「秋」だと感じることができます。
テリィへの手紙
キャンディが21歳前後。
書いたのは、ハムレットがロングランに次ぐロングランの頃だと明記されているので『エレノアへの手紙』の次になります。
テリィの婚約報道が出た為、恋心を封印する為に手紙を書いた、と個人的には考えます。
状況的にもそのような報道が一番出そうな時期ですし。
ちなみにこの手紙を書いた時には、まだアルバートから日記を返されていないと感じます。
テリィへの手紙の中に以下のような言葉が含まれているからです↓
「アルバートさんたら、どんな顔をしてあの日記を読んだのかしら。今でもお互い話題にも出せないの」下巻275
アルバートとの往復書簡・後半下巻316又は317~322
キャンディが21才以降~
この手紙にはキャンディとアルバートがレイクウッドへドライブへ行ったと書かれています。
アンソニーへ手紙を書く前(アーチーの婚約式の後)だという事が文脈から読み取れます。
漫画で言うと、このシーンです。
漫画では『大おじさまのカムアウトの時』に、二人でレイクウッドを散策していますが、ファイナルでは地味に(派手に)変更されています※これについては「考察⑤男!アルバートさん」の方で詳しく扱っています。
このレイクウッドへの訪問の際、アルバートは日記をキャンディに返しています。
「日記の話題が出た」と判断できるので、④の次にこの往復書簡が来ます。
なぜアルバートは今になって日記を返したか?
日記はキャンディが14才の時に預かっているので、既に7年ほど経っています。
キャンディが大おじさまに預けた理由は『学院を去る理由を分かってもらう為』下巻144です。
それなら大おじさまのカムアウトの直後に返しても良さそうなのに、遅すぎませんか?
『テリィの事で一杯の日記帳を返すのは、辛い思い出をぶり返すことにもなりかねない。ここは一つ慎重に』とアルバートは考えていたと思われます いい人・・・
なのに、なぜこのタイミングで返す気になったのか?理由があるはずです。
テリィの婚約記事をアルバートも見たのでは?
日記を返すことで、キャンディの反応を見たかった?
(もう返しても大丈夫かい?それとも、まだテリィを想っているのかい?僕の気持ちに気付いてほしい)
という探りの意味と純粋にキャンディを案じて、のことかな、と思います。
そう思って次の部分を読むと、なぜこの部分だけこんなに哀愁を漂わせているアルバートだったのか、すとーんと落ちます。
「これは・・・、きみの大事なものだから」
アルバートさんは窓の外を見詰めたまま、つぶやくようにそう言いました。とても静かな声で―。
下巻321・・アルバートさん
アンソニーへの手紙
アーチーの婚約式の後 キャンディが22歳以降
⑤のレイクウッドの訪問の後に書いたことが文面から読み取れます。⤵
「私、レイクウッドに行ってきました。誰だと思う?(アルバートっさんよ)」下巻324
内容的にも往復書簡の文面(下巻317~)とがっつりマッチングしています。
「あの頃(アーチーの婚約式の時)はまだアンソニーには書けなかった」下巻268という文から、書いた時期はキャンディが22才以降が有力だと思います。
この手紙の中には「そしてーー今は・・・。生きていても会うことがかなわない運命があることも知ったのです」下巻327 という言葉が書かれています。
このことから、テリィとの再会の可能性を全く感じていないことが分かるので、テリィからの手紙はまだ届いていないと考えます。
テリィからの手紙
スザナが亡くなって1年半後に届いたと考えます。
スザナの死亡記事を見たのは少なくともキャンディが24才以降なので、手紙が届くのはその1年半後の25歳以降になるのではないでしょうか。
テリィとスザナとの生活がどんなものだったかは分かりませんが、「ぼくは何も変わっていない」下巻283 というテリィの愛の告白をもって、20代のキャンディの物語は終わっています。
※テリィ派の中には、⑥と⑦が逆だ、という考え方もあるようです。
こちらで検証しています。アメンバー限定記事です。
手紙の時系列は、ブログ主の中でも確定要素ではございません。
みなさまのご意見などを元に、今後変わる場合も大いにございます
テリィファンとして利己的&簡潔に考えるならこの順番もあるかな、と思っています。
次は二次小説・三章に入ります
次の考察はこちらです。