★★★4-19

 

 

 


割れんばかりの大歓声で幕は閉じ、劇場全体が揺れているようにさえ感じた。
シェークスピア四大悲劇の中で最も長編のこの戯曲は、デンマーク王国の若き王子ハムレットの復讐劇。
国王である実父の突然の死、義父になった叔父への憎悪、実母への不信感、友人の裏切り、恋人との別れと不慮の事故死。怒涛の絶望の中で狂人を装いながら生き方を模索する王子ハムレット。
複雑で繊細な心を持ちながら、時に大胆で国民からの人望も厚い孤高の存在。
そんなテリュース・グレアム演じるハムレットの圧倒的な存在感に誰もが目を奪われ、迫真の演技にぐいぐい引き込まれた。

 

ハムレットの運命に没入した観客は高揚し、主演俳優に惜しみない拍手を送った。
キャンディには、そのままテリィが経験した苦悩のようにも感じられた。
ハムレットの持つ背景や性格がテリィに似ていたのか、テリィが演じたからそう感じただけなのか。
キャンディは感動とはまた違った緊張感から、全身の震えがとまらなかった。
「・・・ママ・・・」
やっと一言だけ発したものの、舞台の余韻に浸っているエレノアの耳には届かない。
「・・さすがRSCだわ。今日は代役が二人いたらしいけど、それを全く感じさせない。・・なんて層が厚いのかしら。あの子も心のどこかで演じたかったのね、このハムレットを。あ~、私もガートルード
をやりたくなってきたわ。あ、ほらキャンディ、カーテンコールよ。テリュースが出てきたわ、中央よ」
エレノアに促され舞台を見ると、テリィが額に汗をキラキラと光らせ、深々とお辞儀をしていた。
「・・・すごい汗。あんなに息が上がって」
「芝居は常に全身を使うのよ。口先だけなんて思わないでね。私でも開演の前と後では体重が二キロ減るわ。ましてこの演目は四時間。あの舞台衣装は十㎏あるらしいから、きっと今、精神力だけで立っている感じね」
「・・知らなかった、、毎日何でもないような素振りで帰ってくるのに」
表情が綻んだテリィを見た時、キャンディの緩んだ涙腺から次々に涙がこぼれてきた。
腰が抜けたように力が入らず、周りの観客のように立ち上がって拍手を贈ることもできない。
(素敵だった。誰よりも輝いて、堂々として・・。この劇場一杯にテリィの声が響いて)
妻に戻ったキャンディは、テリィに向けられた称賛の嵐を、劇場の全員に感謝したい気持ちになった。
主役の役者に花束を渡そうと、観客たちが次々と舞台の方に下りていく。
その時だった。テリィがこのボックスシートの方向に小さく手を上げた。
エレノアとアルバートは手を振り返したが、キャンディは震えのあまり、組んだ指を解くことが出来ない。
するとテリィはさりげなく、しかし大胆にキャンディに投げキッスをした。
(・・!!テリィ―!)
「まぁ、あの子ったら。フフっ、よほど嬉しいみたいね。あんな姿初めて見たわ」
テリィは一人一人に声を掛けるように花束を受け取り、抱えきれなくなった花束を待機していた研修生に渡すと、全方向の客席に向けて大きく手を振り、再び観客から花束を受け取っている。
そんな様子を眺めながらアルバートは言った。
「テリィの所へ行っておいで。我々は後から行くよ」
「カーテンコールが終わるとロビーに人が溢れだすから、今移動した方がいいわ」
キャンディは用意していたばらの花束を抱えて立ち上がると
「ありがとう。先に楽屋に行ってきます」とはにかみながらバルコニー席を後にした。


舞台裏はたくさんの関係者でごった返していた。
「テリィの楽屋はどこかしら・・」
目線をあちこちに移動させて歩を進める。
「そこのレディ、ここは関係者以外立ち入り禁止ですが」
関係者らしき人に声を掛けられたが、こんな時の為にテリィが渡してくれた通行証があることを思い出し、クラッチバッグから取り出そうとした時、
「あれ?キャンディじゃないか、こんなところに居ちゃだめだよ」
ジャスティンがおぼつかない足取りで近寄ってきた。
「あら、あなたこそどうしてここに?」
「この劇団に所属しているんだ。何だ、知らなかったのかい?巷では結構有名なんだけどな」
病院中の人が自分を知っているつもりになっていたが、アメリカから来たばかりのキャンディなら有り得るかと、「迷っちゃったんだね。案内するよ」ジャスティンはキャンディの手をとった。
「いえ、そうじゃなくて、、テリィ、いえ、テリュースに」
「テリュース?・・ああ、花束を渡したいの?」
ジャスティンは内心面白くなかった。
(主役が俺のままだったら、この花束の行先は俺だったんじゃないのか?)
しかし今更そんなことを言っても始まらない。
「彼、カーテンコール以外の場所では受け取らないらしいから・・―、タイミングが悪いな。ちょうど幕がおりるところだ。渡しておいてあげようか?」
ジャスティンが花束に手を伸ばした時、その様子を目撃したナイルが思わず声を上げた。
「こんなところで女を口説くなよ!舞台が終わったばかりで早速女を連れ込むとは不謹慎だぜ」 
ジャスティンが花束を受け取っているように見えたナイルは、先刻八つ当たりされたことを根に持ち、言いがかりをつけ始めた。
「ナイル、お前何でこんな所にいるんだ!?カーテンコールはどうした」
「トイレに行っている間に幕が上がっちまったんだよ、俺なんぞいなくても、誰も気付かないってことだろ。ふんっ」
腐ったような物言いに、ジャスティンは無性に腹が立った。
「チョイ役だって芝居には必要な要素だっ!いい加減その―」
ナイルに歩み寄った時ジャスティンは気が付いた。
「酒臭いぞ、こんな所で飲んだのか!?」
「後半に出番なんて無いんだ、先に千秋楽の祝杯を上げていただけさ。一口ぐらいいいだろ」
「ふざけるな!」
ジャスティンはナイルに一発入れようとしたが、病み上がりの足が思うように動かず、足がもつれ、勢いよく前のめりに転倒してしまった。
そのはずみで丁度そこに設置されていた張りぼての大道具がぐらぐらと不気味に揺れ始めた。
「危ない!上、ジャスティンよけて!!」
キャンディの声に気付いて、体勢を起こそうとするも足に力が入らず、立ち上がることが出来ない。
(――だめだ、よけきれないっ――!)
倒れてくるセットをスローモーションのように感じながら、ジャスティンは咄嗟に目を閉じた。
「ジャスティン―!!」


「テリュース、こっちよ!楽屋に戻る時間はないわ」
最後のアンコールの幕が床を擦った時、オフィーリア役のカレンはテリィの手を取った。
「主要キャストは全員賓客用の車寄せに移動してくれ。直ぐだ!」
監督の激が飛んでいる。
「何だ?もしかして、陛下のお見送りか?」
初めての事に戸惑いつつも、テリィは舞台を下り、カレン達と足早に移動を始めた。
「ねぇ、この後の打ち上げパーティ、参加するでしょ?ダンスのお相手してくれない?」
ようやく解禁とばかりに、カレンは早速テリィを誘ったみたが
「悪いけど先約があるから。家族が来ていてね」
テリィは丁重にお断りした。
「ご家族!そうだ、いらしていたわね。紹介して下さらないの?」
「紹介するよ。会場でね」
テリィが舞台裏を通り抜けようとした時
「・・・!・・・て!!・・ティン!」
何処からか悲鳴のような声が聞こえた。
「あら?今、女性の叫び声が―」
「キャンディ―!?」
テリィにはそれがキャンディの声だと直ぐに分かった。
一瞬にして血の気が引き、声のした方にすぐさま走り出す。
「ちょ、ちょっとテリュース!どこへ行くの!?車寄せはそっちじゃないわよ!?」
カレンも慌てて後を追った。
テリィの目に跳びこんできたのは、不気味な音を立て、大きな舞台セットが倒れていく瞬間―
同時に、そこ目掛けキャンディらしき人物が飛び込んでいく姿。
「駄目だっ・・!キャンディ―!!」
バターン!!バリバリバリっ ガリガリガリッ
周りにいた大勢の人たちは一斉に逃げ惑う。
爆風のような音と共に、セットの破片と埃が一気に飛んで舞い上がり、瞬く間に視界が遮られた。
さまざまな道具や木材が一瞬で散乱し、足の踏み場がない。
「・・・・キャンディ・・、――キャンディ!!」
(今の人影は確かにキャンディだった・・!)
テリィは少しでも現場に近づこうと、腕で顔をガードしながら無我夢中で歩を進めた。
スザナの事故の光景がフラッシュバッグし、背筋が凍るような感覚になりながら必死に声を上げた。

 


 ©水木杏子・いがらしゆみこ ※画像お借りしました

「キャンディ!いるんだろ!?キャンディ・・!!」
惨状を目撃した人たち、騒ぎに気付いた大勢の関係者が次第に集まり始めた。
「なんだ!舞台セットが倒れたのか!?」

「怪我人は!?」

「おい、だれか、巻き込まれたか!?」
さまざまな声が入り混じる中で、テリィだけがひときわ切迫した声をあげている。
床にはシルバーのキラキラしたハイヒールが転がり、赤い切り花がまるで血痕のよう散らばっている。
すぐ側にいたカレンは、一心不乱のテリィの様子に驚いていた。
「・・テリュース、誰か知っている人が巻き込まれたの?・・・キャンディって?」
カレンがテリィの腕に手を掛けようとしたその時だった。
「・・大丈夫よ、テリィ・・・・私を誰だと思っているの?」 
ケホケホと咳払いをするキャンディの声が聞こえ、霧が晴れる様に徐々に視界が開け始めた。
背中が見えた。引き締まった白い背中―
片手をつき、崩れた体勢で足を延ばして咳込んでいる。
テリィは、目じりが湿るほどの安堵感を覚えながら、キャンディの元へ駆け寄った。
「・・無茶しやがってっ!寿命が百年縮まった・・」
咎めながらやっと声を出し、キャンディをギュッと抱きしめる。
「・・・あなた何歳まで生きるつもりよ・・。大げさね、これぐらいで・・」
キャンディがおどけたように言うと、「このおてんば・・!」テリィは更にきつく抱きしめた。
カレンと周りにいたスタッフはその光景をみて茫然と立ち尽くしていた。
テリュース・グレアムが金髪の女性を抱きすくめ、うずくまったまま動かない。
こんなシーンは前にも一度駐車場で見たことがあった。
あの時と同じ女性かどうかは分からなかったが、「恋人・・?」カレンの声に、誰もが納得したように相槌をうった。
キャンディはジャスティンを殆ど体当たりに近い体勢で力一杯押し出し、間一髪救出していた。
はじき出されたジャスティンはしりもちをつきながら呆然としていた。
何が起こったのか分からない。
自分がキャンディに助けられたことは理解できたが、なぜあの新参ハムレットが―・・・目の前で・・キャンディを抱きしめているのか・・・
(・・・友人、いや妹か・・?)
隣で自分を案じているナイルの声を遠くに感じながら、ジャスティンは眉間にしわを寄せた。

「・・テリィ、放して・・」
抱き合う二人から、小さな声が上がった。
しかし新参ハムレットは微動だにしない。無視しているようにジャスティンには見えた。
「・・震えてるの?・・テリィ―」
逆にキャンディが男を案じているような声。
「・・思い出させちゃったのなら・・ごめんね、私ならピンピンしているから」
わずかな体勢の変化だったが、キャンディの方が男を抱きしめているようにも見える。
それでも新参ハムレットは依然として腕を解かない。
「・・大丈夫だから・・、テリュース・・放して・・―ね?」
なだめるようなキャンディの声が、再びジャスティンの耳に届く。
その直後キャンディがした行為で、ようやく放す気になったのか、ハムレットはゆっくりその手を解いた。


「―・・なっ、、、」
ジャスティンは頭の中が真っ白になった。
キャンディが新参ハムレットに口づけをしたのだ。
間違いない、どさくさに紛れて確かにした。
他の奴らからは見えなかったかもしれないが、今、たしかにこの目で見た。
しかも求めるようなキスではない。・・与えるような―
・・・聖母マリアが幼いイエスを慰めるような、とても優しいキス。
それを顔色一つ変えず、当然のように受け取った新参ハムレット―!
(まるで恋人じゃないかっ!キャンディの恋人は、さっきの長身の男じゃないのか!?)

「あっ・・」
直ぐ近くで、キャンディの短い声が漏れた。
その声にジャスティンはハッとし、現実のキャンディに目が移る。
ハムレットの身体から解放された瞬間から、キャンディは体を起こし何かを探していた。

キョロキョロしていたその視線がピタリと止まり、なんとも悲しげな顔でぼう然としている。
理由は直ぐに分かった。
キャンディが持っていた花束が無残にも大道具の下敷きになり、グシャリと潰れていたからだ。
ジャスティンは罪の意識から、思わず口走った。
「・・ご、ごめんキャンディ、弁償するっ、同じ物を返すよ!・・明日になっちゃうけど」
その言葉が起爆剤になったのか、瞬く間に頭に血がのぼったキャンディは、喧嘩をしていた二人を睨み付けた。
「そこの二人!こんな狭い場所で喧嘩なんて、ふざけるにもほどがあるわ!一つ間違えば大怪我だったのよ!?病院はお遊びでした怪我につきあうほど暇じゃないわ!!」
キャンディには花より人の方が尊い事は分かっている。分かっていても怒りが収まらない。
「花は結構よ!明日あなたから受け取ることに、何の意味があるって言うのっ!」
近くにいた人々はその女性の凄い剣幕に圧倒され、どこからかパラパラと小さい拍手さえ聞こえてくる。
取り乱すキャンディをみて、テリィはキャンディの腕を掴んだ。
「・・そのへんにしておけ。気持ちは受け取ったよ」
テリィにそう言われると、キャンディはもう何も言えなくなる。

感情を押し殺すように「・・足をみせてちょうだい」と言って、ジャスティンの脚の具合を確認し始めた。
「本当にごめん、キャンディ。こんなことになるとは思わなくて・・。それより君の足の方こそ―」
キャンディは両足裸足だった。
突進した際にハイヒールが脱げたのだろうが、散乱した物に阻まれ見当たらない。
ジャスティンは心底詫びる様に両手を合わせたが、目にも耳にも届いていないのか、キャンディはジャスティンの足を延ばしたり曲げたりしながら黙々と診察を続けている。
「・・擦り傷と打撲はあるけど、骨は無事みたいね。・・よかった―」
キャンディは不意に顔を上げると
「テリィ、悪いんだけど、これ使っていい?最終日だから大丈夫でしょ?」
言い終わる前にテリィのサッシュベルトに手を掛け、既に外している。
そんなキャンディのしぐさに可笑しさがこみ上げてきたテリィは茶化すように言った。
「こういう事は二回目だな、いっそ次から包帯を腰に結んでおこうか?」
「もう、ふざけないでよ」
キャンディの口元は一瞬緩んだが、今度はナイルの方に鷹の目を向けた。
「そこのあなた!お酒を持っているんでしょ!?消毒に使うから出して!」
没収は当然でしょ、と言わんばかりにナイルの前に手を突き出すと、ナイルはギクっとしながらもお酒の小ボトルをしぶしぶ差し出した。
奪い取るように受け取ったキャンディは、手際よくジャスティンの傷口にアルコール消毒し、布を巻き終えた。
「念のため明日病院へ来て。私はいないけど婦長に話しておくわ」
「・・恩に切るよ、キャンディ・・」
ジャスティンがお礼を言った時、待っていたかのように周囲から一斉に拍手がわき起こった。
「ブラボー!レディ」

「そこのふたり、彼女に謝れ!」

「お前ら恥を知れ!」
「――テリュース、君のオフィーリアを私に紹介してくれないか?」  
取り囲むスタッフの中から、監督が一歩前にでてテリィに話しかけた。
「・・え?あ、彼女ですか?・・彼女はオフィーリアではありませんよ。ご覧の様に不死身ですから」
テリィが監督の方を向いた時、丁度その後方からエレノアとアルバートがやって来るのが見えた。
エレノアとアルバートは直ぐに異様な雰囲気を察知した。
大地震でもあったかのように物が散乱している上に、スタッフ総出でテリィとキャンディを取り囲んでいる。
「――何があったんだ?」
「いえ、大丈夫ですアルバートさん。それより監督に紹介したいので、今いいですか?」
「え・・?ああ、構わないよ」
アルバートの返事を確認したテリィは、膝をついていたキャンディに手を差し伸べた。
「・・キャンディ、挨拶を。立てるか?」
コクンと頷いたキャンディは、引き上げられるように素足のまま立ち上がり、ドレスを軽くはたくと、何事もなかったように会釈した。
「先ほどは・・お見苦しいところをお見せしてしまい、大変失礼いたしました。妻のキャンディスです。皆様にはテリュースが日頃お世話になり、深く感謝申し上げます」
ドレスの端をつまみ軽く膝を曲げ、淑やかに優雅にお辞儀をする。
かの財閥令嬢の肩書は伊達ではない。カーテシー
だけは場数を踏んでいる。

・・・・先ほどまで啖呵を切っていた勇ましい女性はどこに行ったのか。
その豹変ぶりに皆唖然とし、発言内容が直ぐには入ってこなかった。
「・・・ん?今、何て言った?」

「え?妻って言ったか?」
カレンは両手を頭に置き、「・・どういう事!?」頭が回らない。
その場がざわつき始めたが、テリィはそれを全く無視するように、今度はアルバートに手の平を向けた。
「こちらは僕の『義父』のウイリアム・アードレー氏。アメリカのシカゴから遠路はるばる」
テリィは(間違っていませんよね?)といたずらっぽくアイコンタクトをすると
(間違いないよ)、とばかりにアルバートはウインクを返す。
「ウイリアム・A・アードレーです。皆さんの舞台は本当に素晴らしかった!僕は帰国後すぐにブロードウェーとハリウッドの俳優全員にRSCの舞台を観るべきだと伝えなければならなくなりました。厄介な仕事が一つ増えてしまい、参りますね」
実業家らしいアルバートのコメントに目を細めながら、次にテリィはエレノアの方に視線を移した。
「・・こちらの女性は―」
”母”という言葉を使うのに、抵抗がないはずはない。後は本人に任せようと敢えて枕詞をつけずに手だけを差し向けた。するとエレノアは直ぐにその趣旨を読み取り
「これからも息子のことを、どうぞよろしくお願い致します」
短めに挨拶をすると、深々とお辞儀をした。
隠す必要などないわ。・・あなたは私の誇りよ―
そんなメッセージをエレノアの視線から読み取ったテリィは思わず微笑する。
紹介など無くても、テリュース・グレアムにそっくりなその女性が誰であるかなど、一目瞭然だった。
その女性から放たれる華やかなオーラに、一同が圧倒されていると
「・・エレノア・ベーカー・・?」
どこからか蚊の鳴くような声が聞えた。
すると間髪入れずにテリィは妻を抱き上げ、幕引きの一声を上げた。
「一旦失礼します」

引き際もあざやかなその一団を、団員たちは呆然と見送った。
今、自分達は何を聞いて、何を見たのか。お互い顔を見合わせ、告げられた内容を確認する。
まもなく舞台裏は蜂の巣を突ついたような騒ぎに包まれた。



4-19 舞台裏

 


©水木杏子・いがらしゆみこ

 

。。。。。。。。。。。。。。

ワンポイントアドバイス

 

※カーテシーとは?

 ヨーロッパ・アメリカのお辞儀の一種。

片足を斜め後ろの内側に引き、スカートをチョン。

漫画のキャンディもやっていましたねハート

 

※ガートルード

ハムレットの母親

 

 

次へ左矢印左矢印

 

 

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