冬の夢 | 恣意的なblog.

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僕は歩く。

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晴れた冬の日。

道路の濡れたアスファルトの部分に太陽の光が反射して、キラキラと
眩しかった。屋根にのったこんもりとした新雪が暖かさを蓄え、緩やかに
溶け出した雫が氷柱を伝って点々と地表に落ちている。それは一定の
リズムを保ち、時には期待を裏切りながら。

煤汚れたカフスボタンがのったテーブルに向き合い、読書で疲れた目を
擦りながら、台所の薬缶から湯気が立ち上がっている様を興味深く観察して
いると、遠くから橇すべりに興じている子供達の笑い声が聞こえてきた。

それは刷り込まれた遠い記憶。

気がつくと日は陰り、カーテンの隙間から湿り気を帯びた冷たい空気が
流れ込み始め、天を覆う星の光輝に戸惑いを覚えたところで一日が終る。

辺りは深々とし、とても静かだ。

「また雪がふりだすかもね」
「こんなに月の明かりがきれいなのに?」

華奢な体つき、色づき始めたイチゴ色の頬。
口角が上がるとその頬はさらに鮮やかさを増す。


冬の夢とはこんなもの。
今年も精神の静穏を久しぶり楽しむつもりだよ。

不徳の陰を利用して近寄り、気が付かれない内にそっと心を包み込む。
それは湿気でも熱気でもなんでもいい、方法は厭わない。
巧緻な駆け引きなど必要なかった。

「キミの後ろに精霊が見えるよ」
「精霊ってなに?」

「聖者が街にやってくるってことさ」

黒の装束を纏い、寒さを忘れ、嘯きながらその目を見つめる。
そこには灯る恍惚が余す事無くあった。