名前をなくした女神[最終回 5人の女、最後の答え]|雑な終わり方だったが、良いドラマだったと思う | テレビドラマに夢中!

名前をなくした女神[最終回 5人の女、最後の答え]|雑な終わり方だったが、良いドラマだったと思う


2011年4月12日 -
火曜日21:00 - 21:54(54分)
制作局 フジテレビ
脚本:渡辺千穂
音楽:井筒昭雄
主題歌:アンジェラ・アキ『始まりのバラード』(EPIC RECORDS)
オープニングテーマ:Alice 『moving on』(SMEレコーズ)
プロデュース:浅野澄美
演出:水田成英、西浦正記
原案協力:高橋ナツコ
幼児教育監修:こぐま会
制作:フジテレビ
オフィシャルサイト:www.fujitv.co.jp/megami/

* cast
秋山 侑子 - 杏
安野 ちひろ - 尾野真千子
進藤 真央 - 倉科カナ
沢田 利華子 - りょう
本宮 レイナ - 木村佳乃

秋山家
 秋山 拓水 - つるの剛士
 秋山 健太 - 藤本哉汰
安野家
 安野 英孝 - 高橋一生
 安野 爽 - 長島暉実
進藤家
 進藤 陸 - 五十嵐隼士
 進藤 羅羅 - 谷花音
沢田家
 沢田 圭 - KEIJI(EXILE)
 沢田 海斗 - 内田淳貴
 沢田 空斗 - 今井悠貴
本宮家
 本宮 功治 - 平山浩行
 本宮 彩香 - 小林星蘭

結城 広己 - 萩原聖人
東郷 百合子 - 夏木マリ


テレビドラマに夢中!-名前をなくした女神

海斗は兄・空斗に連れだされて明峰学園幼稚舎受験を欠席。問い詰める利華子に空斗は「ママが健太君の願書を破いたりするからだ」。爽と健太は合格。彩香は不合格だったが、レイナは抱きしめて優しく接する。アルバイトのミスのため利華子は信用を取り戻そうと必死。侑子は健太の受験番号を知る利華子が勝手に明峰学園の入学辞退を依頼したことを知ってショックを受ける。空斗は「大好きなママで居てくれよ」と号泣。真央の留守中に名古屋支店に転勤が決まった英孝はちひろに痴漢の理由を話し、離婚届を渡すが、ちひろは翌朝、ここで爽と待っていると伝える。バイト中に羅羅が火傷を負い、真央は夫に怒られて目を覚ます。引越しの日、ママ友たちは集まり、別れを惜しむ。利華子は侑子に嫉妬から事件を起こしたと謝った。彩香は山吹女学園へ入学。侑子とちひろは明峰の保護者会を迎えようとしていた…


最終回はひどく雑なものであり、残念だった。
釣った魚にエサはやらないというか、
もう翌週に期待をつなぐ必要ないもんねという感じがしてしまうのである。
前にも書いたが、これは結局、視聴率命のテレビドラマの宿命ならん。

残念だったのは、テレビドラマに夢中!-名前のない女神(杏)に対するりょうテレビドラマに夢中!-名前のない女神(りょう)の攻撃が、
ほとんど練りの足らないものだったからである。
衝動的な行動なのだから練られていないのは当たり前なのだが、
かといって、それではドラマにならない。
杏に「私が何かした? 怒らせるようなこと…」と詰めよられたりょうは、
「してないんじゃない?」ととぼけてみせていたが、
ああいう表情をできるのなら、
もっともっと、杏をどん底に突き落とすような悪いことを周到に計画できたはずである。

予想通り、連れ子である海斗君が、暗黒面に傾斜するりょうを留める役割になった。
海斗君が号泣し、りょうが涙ぐむ場面は2度繰り返されたが、
子供にすでにバレてるのに再度嫌がらせを実行したりょうには戦略がなさすぎる。

自分の子供が受験を放棄したというのに、KEIJIテレビドラマに夢中!-名前をなくした女神(KEIJI)のフォローは、相変わらず情けなかった。
りょうは「もういいから! もう離婚するんだし!」とキレ、
「私が解決するから!!!!」と押しきってしまったが、
KEIJIはあくまでも頼りない年下夫の立場を守りつづけ、
「結局、利華子が何を考えているのか、何を思っているのか、全然わからなかった…
 俺はずーっと情けないまんまで、いつの間にか現実逃避して自分自身が重荷なんだ」
などと言いながら、深夜のダイニングテーブルでイジイジとアルバムをめくっていた。
この夫が本気で離婚しようと思っていなかったことは明らかなのだが、
りょうはそれに気づかないふりをしてとうとう離婚してしまう(明示はされていないが)。
もう年下はたくさん、ということかもしれないが、
あの性格では、よほどの人物が現れないと三度目の結婚はできないだろう。
そう、りょうは不幸にも×2になってしまったのである。
KEIJIとの離婚に際しては海斗君も阻止の活躍をしたと思われるが、
そういった描写が一切省略されてしまったのは残念である。

りょうのネットショップがどうなったのかも、よくわからなかった。
アルバイトの東野るみの発注ミスのためにデパートに納品できなかったことにより、
どのようなダメージをこうむったのか、
(この「合わす顔もないので、辞めます」という東野るみのメールの文面は、
 倉科カナの空とぼけ演技なみに破壊力があった)
今でもショップを続けていられるのかは不明である。
夫はいなくなったとはいえ、ネットショップの収入だけで、
親子三人、世田谷暮らしを続けていけるのだろうか。
この点からも、KEIJIと離婚して本当によかったのかという評価が、
最終回には欠けていると感じられた。
なにしろ、4家族の中で最も失ったものが大きいのはこの家族なので、
それなりに納得感が必要だと思う。

さて、木村佳乃の予言通り、りょうの犯行には受験番号が使われたのだが、
受験番号は、願書紛失事件の後に届いた受験票に記載されていたはずだから、
すでにそのとき、杏はりょうの悪意に気づいていたはずである。
海斗君が健太君の受験番号をりょうに教えた回想シーンがご都合的に挿入されていたが、
こうした流れも、ずいぶん雑で都合のいい組み立て方だと思った。
さらに、電話で受験番号を伝えるだけで入学を辞退できるというのも妙である。
確認の電話がかかってはきていたようだが、
現に尾野真千子のところには届いていた入学手続書類が
杏のところには来なかったのだから、
基本的には辞退は受理の方向へ向かっていたのだ。

さて、各家族の去就もまた足早に語られたが、いずれも納得感の薄いものだった。

まず、尾野真千子テレビドラマに夢中!-名前のない女神(尾野真千子)の麿顔の夫・高橋一生テレビドラマに夢中!-名前のない女神(高橋一生)だが、
バスの中で女子高生に痴漢をはたらいた理由がようやく語られた。
供述を簡単に要約すると、
セクハラ疑獄のショック状態にあるときに、
教師をセクハラではめようと画策している女子高生に、
自分を陥れた部下の姿を重ねあわせてやってしまった、ということなのだが、
そんな理由で痴漢をする男はいないと断言できる。
これは相当に不自然な供述で、裁判で情状酌量は勝ち取れないだろう。
言葉通りにとれば、「憎しみが歪むことで発露された性欲」とでもいうものになってしまう。
夫婦であれば、そういうものも許されるのかもしれないが…
尾野真千子が離婚を選ばなかった理由がわからない。
妻に一日730円しか与えなかったDVが、
セクハラ疑獄のストレスで片づけられていいものではないだろうと思うし、
今は優しい夫に変わったといっても、
DV夫とは、DV以外の場面ではつねに優しいものなのだ。

次に、倉科カナテレビドラマに夢中!-名前のない女神(倉科カナ)だが、キャバクラでバイトしていることが夫にバレ、
平手打ちされたら、簡単に反省してしまった。
あれだけの騒ぎを起こしたにもかかわらず、
夫に怒られただけで目を覚ましてしまうとは、なんとも浅はかで可愛い奥さんである。
栃木弁丸出しで畑仕事に励む姿はあまりにもデキすぎで、
ほとんど、杏の想像の中だけでなされている描写のようでもあるが、
あのマンションに住みつつ、
ともすれば栃木弁が出そうになるのをガマンしていたと想像すると、
最も好感度を上げたのは倉科かもしれないと思うのである。

木村佳乃テレビドラマに夢中!-名前のない女神(木村佳乃)は教育ママゴン(こんな死語があるのだ)の汚名を返上し、
平山広行テレビドラマに夢中!-名前をなくした女神(平山広行)とのセックスレスを解消しつつあった。
ハギーとのロマンスに罪悪感を感じ続けていた木村は、
「お前がそんなことできるわけないだろう、
 クソ真面目でまっすぐすぎるくらいまっすぐで、
 からまわりするぐらい一生懸命な女房を疑うも何も…」
と平山にベタ褒めされ、思わずよろめいたことを告白しそうになるが、
平山広行は木村の言葉におっかぶせて、
「仮にほんのちょっと心が動いたことがあったとしたら、それは俺のせいだ」
と、経営者らしく人あしらいのうまいところを見せていた。
「きっとお互いいつの間にかなくしてしまったものを家の外に求めてたんだろうな」
という言葉は、
演出次第では、逆に平山にも隠しごとがあるのではないかと思わせるものだ。
視聴者は中島ひろ子テレビドラマに夢中!-名前をなくした女神(中島ひろ子)が愛人ではないことをすでに知っているが、
木村佳乃はもう少しそれを疑ってもいいところである。

最後に、最終回に用意されたふたつのサゲにふれながら、
このドラマを総括してレビューを終えることにしよう。

サゲのひとつは、夏木マリによる、次年度のママ友たちへの訓示である。
代替わりしたママ友たちのルックスが大幅にグレードダウンしていて笑えた。
何度も書いた通り、杏たちは明らかにフツーのママ友とは一線を画すオーラを発していた。
このドラマの魅力は、まずもって、このゴージャス感にあったと思う。

ひまわりの子幼稚園での事件をすべて見ていたかのような夏木マリの訓示は、
さらにエキセントリックな事例も含んでいたりもしたのだが、
最終的に、お受験という要素はこのドラマに必要なかったのではないかと思う。
倉科カナの引越しに集まった主要人物の表情は、
子育てを介してしか知り合うこともなかった関係を懐かしむものであり、
言うところの“戦友”ということだろう。
だとすれば、それは何との戦いだというのか。
よその子たちとの、よそのママ友たちとの、夫との、姑との、自分との戦い。
夏木マリも大意そのようなことを説いていた。
非日常的な状況下にあって、ママ友たちの目の色が変わる、というお受験は、
“戦い”に最も近いようでいながら、
あまりそのメタファーの役割をはたしていなかったように思う。
しかしまあ、自分との戦いと言うと聞こえはいいが、
要は、すべての発火点は「妬み」である。
女はメンドクサイね。

全体を通じて、忘れがたい名場面は、
尾野真千子が爽君と自宅の庭にレジャーシートを広げているシーンであった。
とにかく尾野真千子の存在感が忘がたいドラマである。
倉科カナが木村佳乃に追いつめられるシーンもよかったな。
もうひとつのサゲは、お受験での勝ち組である杏と尾野真千子が、
明峰学園幼稚舎での最初の保護者会を間近にして、
じわりと緊張するというものだったが、
小学校編なんて変な続編は作らないでいいから、と思う。

他の回の「名前をなくした女神」
第10回 嘘と裏切りの微笑|尾野真千子の再生に涙ぐむ
第9回 本当の敵が今、隣に|模擬面接は夫の査問会
第8回|幼稚園最大のスキャンダル]|木村佳乃のフェロモン
第7回|どん底からの脱出始まる]|キキとララの哀しさ
第6回 ついに来た!最大の危機]|ヒロインは尾野真千子
第5回 お受験ママたちの赤い涙|杏はヒロインではなく登場人物の一人に過ぎない
第4回 泥棒猫に天罰を|事件が起こらないサスペンス
第3回 今、試される親子の絆|試されたのは子役の演技力
第2回 身も凍る再会|不幸属性の尾野真千子
第1回 ようこそ、ママ友地獄へ|純粋なサスペンスとして期待

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