「ドッペルゲンガ-」で使われた未来的な車輌はこの「UFO」でも再び使用された。(ちなみにデザインはデレク・メデイングスである)
とりわけそのうちの3台は材質はアルミニウムで出来ており、改造したゼファー・ゾデイアックの車台にフォードエスコートのエンジンとギアケースを取り付けたものである。この車で特徴的なのはドアが上に跳ね上がるガルウィングドア方式であるが実は自動式に上がる性能はなくカメラが回っていないときに手動で上げなければならなかったという。
またこの車には自動車電話が内蔵されており現在では必需品となったアイテムがテレビに最初に登場した瞬間であった。
本作品のオープンセットはスターリングロードスタジオ(特撮シーン専用)とMGMイギリススタジオの両方に作られたがこのような(ミニチュアでなく本物の)車輌の撮影ではその方が適してることが判明したからだった。だが、それは新たな問題をも引き起こした
というのもライテイングカメラマンのバテイ-・シールがそれらの車輌が公道を走るのには不向きなことが判ったからだった。
殊にデコボコ道をこの車が走ろうならアルミニウムのボデイーが真っ二つに裂けてしまうのだ。それに加えて「UFO」の時代設定は1980年代の近未来でありハンドルはすべて右ハンドルで作られていたために公道を走るときは全ての車線を閉鎖しなければならずドライブウェイを走っていた車がフェンスに衝突し照明機材を壊された事故も発生したのだった。
また「ドッペルゲンガ-」に登場したジープもまたこの作品でリサイクルされることになった。
これらの車輌はスペースモデル社のファルサム工場でミニ・モークを改造して作られたものである。これらのデザインは秀逸で現在においても充分に通用する完成度の高いデザインであった。


こうして幾多の苦境に悩まされたりもしたが製作は順調にMGMスタジオで撮影された。
前作で声優を務めたキース・アレクサンダー、デヴィッド・ヒーリー、シェ-ン・リマ-、ジェレミー・ウィルキン等もレギュラー出演するに至ったのである。
だが、デロッサの役が無くなったのでどうしてもここで第3の男を出す必然が生まれた。ここで生み出されたのが後にレギュラーになるポール・フォスターである。
キャステイングには当時ITC作品「プリズナーNO,6」にゲスト出演していたマイケル・ビリントンが選ばれた。
マイケルはさほど売れてない若手の俳優だったものの先ほどのゲスト出演(チンピラの役で)していたのをキャステイングデイレクターのローズ・トビアス・ショーの目に止まり、今回の起用につながった。だが、面接の際、マイケルは緊張のあまりドアに頭をぶつけたりしてへまをするトラブルがあったがルックスがいいとシルヴィアの印象で決定したのだった。
また、このフォスターが初登場する「シャドー秘密指令」にはもう一人後のレギュラーとなるダグ・ジャクソン博士も登場するが彼には「007私を愛したスパイ」で強烈な印象を持つウラデク・シェイバルが当ることになる。
当初一回きりの予定だったというがこれにはウラデクは心臓病を患っておりジェリーも心配していたという。しかし手術も無事克服しほっとしたという。
さて本作品には特撮シーンが必需となるのはいうまでもないが、極力アメリカのドラマ「インベーダー」を超えることを(ドラマも含めて)目標としておりこれにはセンチュリー21の特撮スタッフがそれまでの実績を遺憾なく発揮した。
特撮監修にはデレク・メデイングス、特撮監督にはシャウン・ホイタッカ-・クック、ビル・キャンプらが担当しそれまでの人形映画の時代の特撮を超えるべく努力した。
というのもこの当時、アポロ計画も大詰めでそれまでは想像の域であった宇宙空間も既に視聴者には知られていてなまじの特撮ではもう通用しなくなったのでよりリアルさが追求されたのである。
メカのデザインもこれまでの作品のような未来世界でなくあくまで製作当時(1970年)より10年あとの世界であるために「サンダーバード」以上にリアルな感覚が求められた。
そこで「サンダーバード」のポッドメカや「スカーレット」で斬新なメカをデザインしたマイク・トリムが多くのメカデザインを担当することになる。勿論、メデイングスもスカイダイバーとルナ宇宙船のデザインを担当した。ちなみにマイクが担当したのはシド、シャドーモービル、ムーンモービル、インターセプター(の第1デザイン。これは内部メカが剥き出しというリアルさだったものの格好悪かったのでメデイングスが丸みを帯びたデザインにアレンジした)、ムーンベースである。
勿論これらは意識的にアポロ計画を意識したデザインである。(「サンダーバード」ではどちらかといえばリアルさはある程度度外視されイメージ先行でデザインされていたが今回の「UFO」はリアル志向でデザインされている。)



ジェリーが第1話のキャステイングに疾走している頃、製作第2話「宇宙人捕虜第2号」にトニー・バーウィック、第3話「UFO月面破壊作戦」にはイアン・スコット・スチュワードに脚本の依頼を要請した。
こうしてようやく製作にとりかかれると思われたがまたここで新たなる問題が発生した。スーパーマリオネ-ション時代にはなかった俳優のスケジュールの問題である。
先にフランコ・デロッサが演技に今一つのために降板させられたと書いたがこれは実際の話ではセットの小道具を彼は気に入らずに自分の所持品でやったとか平然と遅刻をしたりと自分勝手な行動が目立ってしまいジェリーに解雇されたのだ。また、スカイダイバー艦長のカーリン大佐役のジョン・ケリーもまた技師役に変更させられキャステイングには苦労させられた。
さてキャステイングの苦労といえばデロッサの解雇の後、昇格させられることとなったエリス中尉役のガプリエル・ドレイクはジェリーの推薦だったがこれがシルヴィアの逆鱗に触れることになってしまった。
何故かといえばデロッサを出すことにしたのはシルヴィアの推薦だったためだからだ。キャステイングの点でいうと特筆すべきはムーンベースの隊員である二ナ・バリー少尉に黒人女優のドロレス・マンテスを選んだことだった。この理由はユダヤ人であるジェリーは昔人種差別に苦しめられた歴史もあることから同じ差別の対象としての黒人俳優、女優に感情移入出来るという理由からである。
だが、キャステイングだけの問題だけではなかった。
スタッフの中で映画監督の経験のある人間はジェリーだけだったのだ。デヴィッド・レーンやアラン・ペリーは「サンダーバード」や「キャプテン・スカーレット」などの人形映画シリーズでは監督の経験こそあるが今度のような人間の俳優相手の監督経験など皆無だったのだ。
現にデヴィッド・レーン監督は撮影の間、俳優相手の演出に戸惑い、何度も吐いたのである。しかし、こうして生身の俳優に苦しめられたのは彼だけではなかった。アラン・ペリーもケン・ターナーも胃の持病があり彼らは内心撮影が中断されればいいとすら思っていたほどだった。しかし、そういった問題ばかりでもなく「サンダーバード」以来センチュリー21作品から遠ざかっていた脚本家のアラン・フェネルも復帰しエド・ビショップが閉所恐怖症であることを面白がって「スカイダイバー危機一髪」のシナリオを執筆した。