ジェリーが第1話のキャステイングに疾走している頃、製作第2話「宇宙人捕虜第2号」にトニー・バーウィック、第3話「UFO月面破壊作戦」にはイアン・スコット・スチュワードに脚本の依頼を要請した。
こうしてようやく製作にとりかかれると思われたがまたここで新たなる問題が発生した。スーパーマリオネ-ション時代にはなかった俳優のスケジュールの問題である。
先にフランコ・デロッサが演技に今一つのために降板させられたと書いたがこれは実際の話ではセットの小道具を彼は気に入らずに自分の所持品でやったとか平然と遅刻をしたりと自分勝手な行動が目立ってしまいジェリーに解雇されたのだ。また、スカイダイバー艦長のカーリン大佐役のジョン・ケリーもまた技師役に変更させられキャステイングには苦労させられた。
さてキャステイングの苦労といえばデロッサの解雇の後、昇格させられることとなったエリス中尉役のガプリエル・ドレイクはジェリーの推薦だったがこれがシルヴィアの逆鱗に触れることになってしまった。
何故かといえばデロッサを出すことにしたのはシルヴィアの推薦だったためだからだ。キャステイングの点でいうと特筆すべきはムーンベースの隊員である二ナ・バリー少尉に黒人女優のドロレス・マンテスを選んだことだった。この理由はユダヤ人であるジェリーは昔人種差別に苦しめられた歴史もあることから同じ差別の対象としての黒人俳優、女優に感情移入出来るという理由からである。
だが、キャステイングだけの問題だけではなかった。
スタッフの中で映画監督の経験のある人間はジェリーだけだったのだ。デヴィッド・レーンやアラン・ペリーは「サンダーバード」や「キャプテン・スカーレット」などの人形映画シリーズでは監督の経験こそあるが今度のような人間の俳優相手の監督経験など皆無だったのだ。
現にデヴィッド・レーン監督は撮影の間、俳優相手の演出に戸惑い、何度も吐いたのである。しかし、こうして生身の俳優に苦しめられたのは彼だけではなかった。アラン・ペリーもケン・ターナーも胃の持病があり彼らは内心撮影が中断されればいいとすら思っていたほどだった。しかし、そういった問題ばかりでもなく「サンダーバード」以来センチュリー21作品から遠ざかっていた脚本家のアラン・フェネルも復帰しエド・ビショップが閉所恐怖症であることを面白がって「スカイダイバー危機一髪」のシナリオを執筆した。