アエラが鹿児島県警不祥事に関する後追い記事を出したが、なんだか嫌に掲載が早いと思える記事だけど内容は大丈夫か?と思いつつ読んだら、何のことは無い、対談相手が元警察学校校長だし、その回答内容は、もうまるっきり警察庁監修済みの今回の事件での想定される質問に対する模範解答そのものだったので、正直ズッコケました。
なるほど、「特別監察」後の様々な批判に対しては、基本このように回答しますと証明しているようなもので、たぶんこれ以上の回答は出てこないのでしょうね。
そもそも警察庁は、この監察に入る前に、県警本部長の不正疑惑については、「何も問題は無かった」と表明しています。
自ら具体的に調査したのではなく、犯人とされた県警本部長自らが捜査を指揮して証拠隠滅を図った後で、本部長の報告を基にそう言って6月24日から「特別監察」に入ったのですから、最初からこの監察で不正疑惑案件を調査するというスタンスは無かったのです。
そういう監察がどういう結論を出すかは、はじめからわかりすぎた話でしかないので、何も期待はしていませんでしたが、やはりなあという報告書でしたね。
不正疑惑が指摘された張本人が、捜査や調査をしても許されるような今の「公益通報制度」そのものの改正をしなければ、いつまでも通報者が「逮捕」・「処分」されてしまうということが兵庫県知事の事例でも明白になっています。
この記事では、最初に以下の文章がある。
「・・・鹿児島県警の問題は今年5月31日に発覚。退職したばかりの本田尚志・前生活安全部長を県警が国家公務員法違反(守秘義務違反)の容疑で逮捕した。警察官が起こした盗撮事件とストーカー事件の捜査資料を札幌市のジャーナリストに送り付けたとされる。本田前部長は容疑を認めつつ、野川明輝本部長が犯罪を隠ぺいしようとしたなどとし、送り付けは公益通報に該当すると主張している。この捜査に関連して、県警は福岡市内のウェブメディアを家宅捜索している。
・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・
前生安部長は隠ぺいの指示を説明する中で、「早急に事件に着手すべきと考え、本部長指揮事件指揮簿に迷いなく印鑑を押して、本部長に指揮伺いをした」としているが、報告書は、前生安部長が印鑑を押した事実は認められず、本部長に報告や指揮伺いした事実は認められなかったと否定している。・・・・・・」以上
「報告書は、前生安部長が印鑑を押した事実は認められず、本部長に報告や指揮伺いした事実は認められなかったと否定している。」
まあ、そりゃそうだろう。
特別監察で、本部長の不正事案については実際に調査などしていないはずだ。
6月24日に「特別監察」に入ったが、その時に、本部長の不正疑惑については、本部長の報告を聞いて「そういう事実は無かった」と認定していますからね。
鹿児島県警はそれまでの間で、5月に本田氏を「逮捕」してしまっているわけで、県警本部長の不正事案に対する「捜査」自体を警察庁が認めている以上、その間県警本部長が証拠隠滅を図ろうと自由であったわけで、「本部長指揮事件指揮簿」の1ページを改ざんしてしまうことぐらい朝飯前だろう。
その後の監察での「調査」で本田氏が指摘したような証拠物件が存在しているわけがないのは自明の話だ。
本部長指揮事件指揮簿に関する本田氏の証言などについては以下のブログでも書いてます。
そもそも、不正疑惑が指摘された張本人が、捜査や調査をしても許されるような今の「公益通報制度」そのものの不備を問題としない様なスタンスの人物にアエラは何を聞くのだろう?
実際これ以降の問答は、予想していた通り、警察庁が公式に発表する質問に対する回答そのものだろうとしか思えない内容で、笑ってしまった。
アエラが、元警察学校長なる人物を引っ張り出して、報告書発表直後にこの特別監察についての記者からの質問と警察庁の回答の模範解答を紹介しているだけの記事で、質問自体になんにも鋭い突込みなどは全くないわけで、今後この監察に関する報道は、この回答ベースで広報するようにという警察庁の意向を示す役割を果たしているということだ。
何しろ、この報道は早すぎる。事前に警察庁と調整して、早々と報道しましたということがバレバレだ。
例えば、以下の問答がある。
・・・■隠ぺい指示はリスクが高すぎる
――生安部長は警察署員による盗撮事件について「泳がせよう」などと不祥事の隠ぺいを本部長に指示されたという趣旨の訴えをしている
不祥事の隠ぺい指示はあまりにリスクが高い。バレたらクビ。本部長がこの種事案でクビをかけて犯罪を隠ぺいするものかどうか、私には到底、理解できない。もし仮に本部長がそう言ったとして、では指示された生安部長はそれに対して何と言ったのだろうか。捜査を尽くすべきだと主張したのだろうか、黙っていたのだろうか。彼がどのように部長としての責任を果たそうとしたのか、そこが見えない。・・・
元警察学校長は、バレたらクビとか言っているが、そんな警察本部長とか幹部とかいましたか?あまりそういう話を聞いたことないけどね。
それに、警察官の不祥事は鹿児島だけじゃなく全国的にいつも報道されている。
多発する不祥事をそれこそまともに摘発し、処分していたら、自分の指導力が疑われて出世に響くと考えて、なあなあで済まそうとする方がむしろ自然かも。
実際バレても、即摘発逮捕し、内部処分すればそれで事が済むということは、この鹿児島県警本部長が見事に証明しているではないか?
本田氏がどのように部長としての責任を果たそうとしたのか?とか言っているが、退職前に不正隠蔽案件の処理方針を伺うこと自体が、まっとうな責任者としての行為だろう。
それを本部長は会っていないと証言した。
本部長の「泳がせろ」とかの回答を受けて、告発しかもうどうしようもないと判断したのは責任の有り様の一つの行為だろう。
そこが見えないとか・・この元校長は本田氏にどうしたらよかったとでも言うのか??ちゃんと言ってみろよ?
本田氏の告発文も、その内容は兵庫県の場合と同様、不正事案の指摘など事実であったことは、その後県警がその事例の犯人を処分していることでもわかる話だ。
それだけでも「公益通報」に該当することは明白だ。
彼の告発文に刑事部長の名前があることを指摘して、告発文自体の信用を貶めようという趣旨の話は、この事件が明るみに出てからマスコミでもたびたび出されてきた話だ。
告発内容がほぼ事実だったということがハッキリしてしまった今でも、この元校長も全く同じことを蒸し返している。
しかもこのことについて、本田氏が裁判で弁明している内容などの紹介はなしで・・・
本田氏は、自分が告発者であることが分からないようにしたいという思いで、刑事部長の名前を出した。ただ、それは内部の事情を知っているものなら簡単に違うということに気付けることだったからだ。
結果的に名前を出して迷惑かけたのは申し訳なかった。という趣旨の証言をしている。
まあ、告発文をまとめる際に自分の正体がわかることの不安から、ちょっとした偽装を思いついたんだろうが、そのことと、告発内容の不正事案の内容の正確性とをごっちゃにしてしまおうという話は、違うだろうとか思えないけどね。
兵庫県の事例を見ているとよくわかる話だ。
知事らは、パソコン内のプライバシーにかかるものを持ち出して、告発者を恐喝していたのだからねえ・・
ちょっとしたミスも最大限に利用しようという話だ。
これ以上、この報告書の内容に関する元校長の回答なるものに触れるつもりはない。
今後この「特別監査」に関する報道では、間違いなくこの記事での回答が繰り返されるだろう。
それは、これから報道を見ていれば判る話だ。
むしろ、マスコミがこのように利用され、お釈迦様の掌の上の思い上がったサルのように動かされている様子を見るのは、正直情けなさすぎて、笑えないけどね。