柴田よしき著「別れの季節」時代小説文庫刊を読んだ。
本書は「お勝手のあん」のシリーズの第九刊目。
私は主人公の「あん」、「おやす」と呼ばれたりする女の子だけど第一巻で一発でファンになりずっと追うように今回の本書まで読んでしまった。
嗅覚が人並み以上に優れ、それを見抜いた品川の大きな宿の主人が危うく女郎屋へ売られる所だった「あん」を拾う。そして、始めはお勝手の手伝、やがては賄い料理人として道を歩み始める。
それには有能な板前の政さん、宿の番頭さんなどの温かい育みがあるのだけど、なんと言っても「おやす」本人の謙虚な人となりが読者の心を引く。
物語は特に大きな事件なんかは無いのだが全編ホームドラマみたいなアットホームな内容。ペリー来航とか安政の大獄、和宮のご婚礼、篤姫の輿入なと歴史的出来事を織り込みながら話は進む。
そういう物語、第一巻ではただ小さな女の子だったが第九巻ではもう二十歳、ここまで育つと色々人生の岐路にさしかかる。
つまり独立に伴ういろんな別れの話などが出てくるが、それをどう決めるか、おやすの苦しい判断が続く。
そして悩んだ末ある決断をする。
それはおやすの生き方を自分で決める大事な決断。
「おやす」ファンであれば結末を知りたい所だけどそれは読んでからのお楽しみ。
もし本当におやすさんがいてタイムカプセルなんかで逢うことができたら不肖当爺はぜひ逢いたいもんだ、なんて思ってしまうのでした。
おしまい