こんにちは、ふじおです。
先日シネマ・クレールで映画を観てきました
その映画は、「ぼくたちの哲学教室」です。
この映画の舞台は、北アイルランド、ベルファストにあるホーリークロス男子小学校で、その様子を記録したドキュメンタリーです。
この学校のケヴィン校長は、エルビス・プレスリーをこよなく愛し、ユーモアと誠実さを併せ持った先生です。
そして自ら哲学の授業を教えています。
ホーリークロス男子小学校は、ベルファスト市北部、アードイン地区の中心地に位置するカトリック系の小学校で、4歳から11歳までの男子が通っています。
ベルファストは、イギリスの北アイルランドにある首府で、アカデミー賞脚本賞を受賞した映画「ベルファスト」の舞台にもなりました。
そこでも描かれていますが、1960年代末から始まったカトリックとプロテスタントの対立から勃発した「北アイルランド紛争」の中心地です。
1998年の和平合意に至るまでに3600人近い死者を出しました。
こうした時代背景の町であるベルファストは、いまだにその傷痕が内に潜んでいます。
それが若年層の自殺率の高さや薬物問題となって現れています。
ケヴィン校長は、かつて暴力で問題解決を図ってきた後悔と挫折から、新たな憎しみの連鎖を生み出さないために、導き出した1つの答えが哲学の授業なのです。
ケヴィン校長はインタビューの中で「若いうちから哲学を教えることは大切か?」という質問に対し、「適応できる年齢から始めなければなりません。…どんな問いでも、それらに対して一歩引いて、そして振り返ることができるようになり、…より良い理解で再評価できるようになることで、自信を持たなければならないのです」と答えます。
そして子どもたちに「4つのR」を教えているそうです。4つのRとは、
Reflect=考える、Reason=理解する、Respond=答える、Re-evaluate=再評価する
続けて「子どもたちには、人間の心の旅を理解することが重要です。反射的な行動がなぜ起こるのか。そして、その反射的な行動が、なぜ別の反射的な行動につながるのか。そこで4つのRの出番です。4つのRの授業を行うのです」と。
この映画にはケヴィン校長と、もう一人キーパーソンがいます。
特別支援コーディネーターのジャン先生です。
全ての児童に細やかな気配りをし、トラブルを見付けてはその子に真摯に向き合い、対話します。
「子どもと話すときに一番大切なことは?」という質問に、彼女は言います。
「子どもの話を聞くことが一番大切です」と。
そして「私が29年間で気づいた以前との最大の違いは、子どもたちのメンタルヘルスの変化です。現在の子どもたちが心の健康を保つのがいかに難しくなっているか、現在の子どもたちがいかに多くの問題に対処しなければならないか。」と言います。
彼女が子どもの頃は、外で遊びながら対処法を学びましたが、「今の子どもたちは、家の中でずっとプレイステーションやタブレットの中に居続けています。…だから、子どもたちは外で交流することがないのです。」
ケヴィン校長がストレスを緩和する方法として児童にレクチャーしていたのが、頭の中で一番好きな場所に行くことです。
辛いなと感じた時、大好きな(落ち着く)場所を思い浮かべて、そこに行く空想をするのです。
これならいつでもどこででもできます。
今年2/27付と4/27付のブログで池田晶子さんの14歳向け哲学書をご紹介しました。
しかし、もっと早い年齢で哲学を学んだ方が良い!
子どもにとって哲学(4つのR)はライフスキルとして不可欠です。
また教師も子どもたちに対し、より保つことが難しくなっているメンタルヘルスと、他者と交流する機会が減少したことによるコミュニケーション能力が低下していることに配慮しながら、真摯に向き合うことが求められています。
私も我が子に対し、目と目を合わせ、膝と膝を突き合わせて対話していこうと再認識しました。
そして、自分の疑問に思ったことに対して、常に問いかけ、考え、自分なりの答え(答えが出なくても、せめて方向性)を導き出す思索の仕方を教えていこうと思います