バター不足と岩盤規制 | 本を読んでも賢くなりません。

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ごく普通の読書ブログのつもりではじめたら、ごった煮のようになってしまいました。

下の画像は約1週間前、近所のスーパーで撮ったものです。

 

 

「バターご購入のお客様へ」

バターは原料不足のため、入荷が不安定となっております。

品切れの際はご了承ください。

 

 

とあります。

バターの原料といえば牛乳です。

 

 

バター不足はたびたび起こり、時期によって棚が空になっていたり、購入に1人1つの個数制限がかかることもしばしばです。

しかし、同じ乳製品売り場の牛乳やヨーグルトやチーズ、生クリームなどが品薄になることはありません。

(昨年9月に起きた北海道の大停電のときは別として)

 

 

それって、おかしいよね、と常々思っていました。

 

 

 

 

 

 

11月の記事 ( 最近読んでいる本 )で少しだけご紹介した、上念司さんの「日本を亡ぼす岩盤規制」で、そのカラクリが明らかにされています。

 

 

 

 

 

 

上念さんの本で引用されているのが、農業ジャーナリスト浅川芳裕氏の見解です。
 

 

「一言で言えば、バター生産の“北海道一極集中化”という“生産統制”の弊害です。そして、一極集中化を支えているのが “加工乳補助金”という仕組みなのです」(浅川氏)

 

 


加工乳補助金とは、加工用に生乳生産量の半分以上を出荷している都道府県の酪農家に支給される補助金のことで、酪農家が現在10ある指定団体に生乳を売った場合にのみ補助金を受け取れるシステムがあり、その条件に当て嵌まる北海道が、飲料用(牛乳)では全国シェアの2割ほどなのに対し加工用生乳は8割を占める結果になっています。

 

 

 


「この仕組みの名目は、生産性の高い北海道から都府県に流れる牛乳の量を規制することで都府県の酪農家を保護することになっていますが、実際には、北海道に加工工場がある乳業メーカーに便宜を図って優遇することで、バター生産を北海道に寡占化させる結果となっている。今回のようなケースで、消費・実需サイドが多様な調達源を失うリスクを高めているのです」(浅川氏)
 

ハーバービジネスオンラインより   https://hbol.jp/15641

 

 

上記のような事情で、北海道の生乳が不足する→バターが不足する になるわけですが、国産バターが不足しても外国産を自由に輸入できない岩盤規制がここに働いているそうなのです。



浅川氏によると、仕入れルート・商品ラインナップの多様化と消費者ニーズに応えることを阻害しているのが農水省の天下り団体「農畜産業振興機構」による、バター輸入業務の独占だといいます。
 

 

>「輸入バターには特殊な関税割当制度が適用されていて、一定の輸入量までは一次税率(関税35%)が課せられ、その枠を超えると二次税率(関税29.8%+1kgあたり179円)が課せられる。

(ただし一次税率の対象は限られた数量で、機構による割り当てが既にあり、普通に輸入するとなれば、より高率な二次税率を払わなければならない)



>さらに、輸入業者はわざわざ機構にバターを買い入れてもらい、農水大臣が定めた1kgあたり最大806円の輸入差益(マークアップ)なるものを上乗せされた価格で買い戻さないといけないという、不可思議な制度になっているのだ。


(元記事で計算されていますが、こうして外国産バターを輸入すると約4倍の価格になります)

 


>その上、機構は「輸入するバターの数量、時期について、国内の需給・価格動向などを勘案して決定」できる権限を握っているので、仮に民間業者が多少高くてもいいから輸入しようとしても、自由に輸入できないのだ。輸入できるのは機構が実施する入札時だけで、しかも一定の条件をクリアした指定輸入業者しか入札に参加できないことになっている。


目的としては、国内酪農家の保護のためである、これらの措置が生み出す弊害は・・・


 

「例えば、多様なバターが自由に生産・調達できないため、諸外国と比較して日本ではマーガリンのシェアが異常に高くなっている。つまり、その原料となる米国トウモロコシ農家を安定して潤わせる政策であり、国内の酪農保護とはむしろ正反対の結果を生んでいるという側面があるのです」(浅川氏)

(  ハーバービジネスオンライン https://hbol.jp/22222 より )



>また、実のところ「農畜産業振興機構」の仕事といえば、書類を右から左に流すだけ。それだけで巨額の収益を得ていることになる。農水省によれば24年度のバター輸入量は4千トンで、農畜産業振興機構に入った輸入差益は約23億円あったといい、緊急輸入が行われた昨年(注:記事は2015年に書かれたものです)は1万3000トンだから、その約3倍の“儲け” があったと考えられる。


>輸入差益は酪農家への助成に使われるとされるものの、農畜産業振興機構の15人の役員の大半は農水省OB及び出向者で、理事長の報酬は1672万3千円、一般職員の平均年収も665万円と、国家公務員平均を上回る高給を得ている(平成25年度)。農水省にとっては、実においしい利権となっているわけだ。

 

 

「この団体設立の大義名分は酪農家保護ですが、実際には消費者、バター関連業者、さらには酪農家にも厄災をもたらす厄介者です。百歩譲って本当に農水省がバターの国家貿易が必要だと信じているなら、農水省本体がやればいいこと。なぜ民間開放の流れにかこつけて独立行政法人に仕事を回すのか。いずれその天下り団体で自分たちが高給を得るためなのです」(浅川氏)

 


 

私は知りませんでしたが、テレビ東京「ガイアの夜明け」でバター不足を取り扱った回があったんですね。
そこではバター不足の原因を、ホクレンと農協としていたようでしたが、現役の酪農家さんで、それを否定するツイートをされていた方がいました。(一応貼っておきます ↓ )

 

https://togetter.com/li/1256979


 

狭い国土で、海外並みの値段で乳製品を国内自給させるための現場での努力は、相当なものがあるようです。

自給率にこだわり、酪農家を保護するなら、いまの補助金制度でも充分とはいえないようで

消費者がバターの価格の安さにこだわるなら、関税を取っ払って自由に輸入してしまうのが一番ですが、さて・・・

 

 

いずれにしても農水省の天下り団体「農畜産業振興機構」のお仕事(金の流れ)は、酪農家のためにも消費者のためにもなっていない気がするのです。

 

 

 

食の話は、

どうも歯切れが悪くなります


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