ワタシは、子どもの頃から、知識をひけらかす鼻持ちならない性格であった。今でもその傾向はある。Safuroの遺伝かな。
滲み出る教養は、奥ゆかしい。
溢れ出る教養は、尊敬される。
奔り出る教養は、下品である。
ワタシは、下品であった。
小学校6年生の時、授業中に「それ知っちょる、知っちょる」と喋りまくるので、先生から一喝されたことがある。
「黙れ、ナカオの破れスピーカー!」
中学校は私立の男子1クラスの進学校で、ここで、シコタマ知識を詰め込まれた。創立2年目で、若い先生たちは気合十分、今にして思えば、随分背伸びした授業だった。
高校1年の英語の授業で、先生が第5文型について説明していた時のことであった。
「第5文型は、S+V+O+Cで、OとCは、SとVの関係にあって・・・」
そこで、我慢出来なくなったワタシは、声を上げた。
「それ、nexusですね」
「よう知っとるなあ」
先生は感嘆した。
nexus云々は、中学校の英語の授業で、ミヤモト先生に教わった。ポカンとした級友を尻目に、ワタシは、鼻高々であった。
漢文の授業で、先生が詩経の一節について解説していた。
関関雎鳩
在河之洲
窈窕淑女
君子好逑
「この窈窕というのは、しとやかな女性を形容する言葉ですね。箱根の山の歌の中に、ヨウチョウの小径という・・・」
そこで、我慢できなくなった。
「それは羊の腸です」
「そうですか。羊の腸ですか」
先生は、狼狽えた。
後で気がついたのだけど。
先生は、同音異義語の窈窕と羊腸を解説するつもりだったのではないか。それを生意気な生徒に先回りされたので、狼狽えたのではないかと。
あれから幾星霜。
今や読書三昧の毎日である。
横丁のご隠居への途は遠くない。