筆者:目黒冬弥
出版社:フォレスト出版
令和4年10月1日初版発行
この本は、銀行員の実態が分かりそうだと思い購入しました。
令和3年2月28日(日曜日)、家族と食事を取るべく横浜にいたところ、システム障害が起こり、職場である銀行から呼び出しを受けました。無事に対応したのですが、筆者は約20年前の平成14年4月1日に3つの銀行が統合し、みずほ銀行が誕生したシーンを思い出していました。統合の日にシステム障害により、銀行全体のATMが動かなくなり、お客様には1ヶ月近くも詫び続けたとあります(24P)その際、マスコミからの取材には絶対に応じるなと上司から言われています。(23P)
その後、宮崎中央支店に転勤したものの奥さんは身重のため、単身赴任しました。赴任して4日目に本部人事部職員からの面接が支店職員に対してあり、筆者は上司が休んだことで急遽、面接をさせられ曖昧な答えをしたところ、支店長から「ずいぶんなことをしてくれたみたいだね。俺の顔に泥を塗ってくれたね。キミにはこのさき、冷や飯を食べてもらうわ。わかるかな?十字架だよ。まあ、簡単には外れないからな。それぐらいのことをしてくれたんだよ。ナメるな!」そう怒鳴って、飲んでいた缶コーヒーを投げつけてきた。缶コーヒーは私の太ももにあたり、床に転がった。スーツに染みができ、床にコーヒーが流れ出た。頭を下げても、私のネクタイを掴み、そのままねじりあげた。そして「これからずっと苦しむがいい!そして自分の運命を恨め!」と言われた。その後、支店の女性職員が床を拭いてくれながら「気にせんでいっちゃが」「いっつもあんげやから」と方言で慰めてくれたことで少しだけ気持ちが落ち着いたようです。(76P)私は怒りたくなったとしても缶コーヒーを職員にぶつけるという行為は、現在のパワハラに繋がる行為で社会人としてあるまじき行為だと思いました。
その後、転勤で埼玉のさいたま新都心支店に異動となったが、仕事は過酷で報告書の作成などで時間を取られ、労使協定で9:30以降は残業できないため、テナントビルのロッカー室で残業した。徹夜の日は冬であってもコンビニでシャンプーや下着を買い、給湯室で散髪して体を拭いていたという。(108P)本当に頭が下がると思いました。
下小岩支店で試練が発生しました。(142P)預金担当課長をしていて、取引先課職員とひと悶着ありました。引継ぎする項目を記載されていなかったため、お客様への定期預金の金利優遇が出来ていませんでした。関係者が集まった席で「どうしてミスを人のせいにするんだ」と罵られました。そこまでは、力関係もあることなので仕方ないにしても、銀行員にとって大切な印鑑が無くなり、その取引先課の職員が自分の印鑑を盗んでいるところを防犯カメラで見てしまいました。そのことをその職員に伝えたところ、先を越され、支店長室に呼ばれ、印鑑が落ちていて持ってきてくれたと支店長に言われ、逆に防犯カメラを見たことを咎められ、罵られ翌日、出勤してみると自分の席には他の課長が座っていたという嫌がらせもされました。私ならどうしたでしょうか。徹底的に戦うか、それとも長いものに巻かれてやり過ごすか、喉元に匕首を突き付けられたような気持ちになりました。(153P)翌月にはその取引先課の職員が出世したと淡々と書いていますが、筆者は、懐の深い方だと思いました。(155P)
173Pの欄外にキャッシュカードをなくしたので手続きしたいと言って窓口に来られた80代と思われる高齢女性のことが書かれています。その方に「今朝もいらっしゃいましたよね」と言ったところ、みるみる悲しげな表情になり「最近、私も自分が何をやってるのかわからないのよ」と泣きながらつぶやくおばあさんを見て切なくなったというシーンには、不憫で私も泣きました。
詐欺集団が受取口座を筆者の銀行にしており、その被害に遭った方から相談を受けて、筆者は、口座を凍結することを本部に提案したところ、被害者の申出のみで動いてリスクを負いたくなく、突き放されたため、筆者は犯罪収益口座ということで口座停止を指示しました。(178P)そうしたところ、30代の男がやって来て、キャッシュカードが使えないと言う。そして、法人の履歴事項全部証明書及び会社の印鑑証明書を持ってくるよう伝えたところ、出直して来ました。振込のお金をビットコインに変えていたため、問い詰めたところ「知らない」というため「そうであれば犯罪組織に送っていると思われても仕方ないのでは」と強く言ったところ、先方が出ていき、被害に遭った方は他に信用金庫の口座にも振り込んでいたため連絡したところ、警察の捜査などがなければ難しいということでした。警察に連絡しても動くことは難しいと言われ断られました(182P)被害に遭った方からは、他にも被害者がいると言われたため、筆者は弁護士事務所に連絡して交渉して受けてくれる弁護士を見つけました。筆者は、その後、信用金庫の口座を持っている者に連絡しお金を返すなどの行為をしないなら「(仲間も含めて)みなさんの人生が終わるかもしれないとお伝えください」と胸のすくような発言をしました。その発言には私も痺れました。サラリーマンでありながら被害にあった方のために社会正義感を発揮して活躍した筆者を尊敬します。また、203Pの欄外に書かれた「M銀行で働いた日々は、私にとってかけがえのない財産である」という言葉は私も所属する職場に対して同じ気持ちを持っています。
本当に素晴らしい本でした。金融機関の職務に携わる方又は金融機関に興味を持っている方には特にお薦めしたい本です。この本を書いた筆者と出版社に感謝申し上げるとともに筆者の今後の人生に幸あれと願わずにはいられませんでした。
ありがとうございました。