刑事コロンボ/パイルD-3の壁(1971) | つぶやキネマ

つぶやキネマ

大好きな「映画」について「Twitter」風に
140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★

 

刑事コロンボ/パイルD-3の壁(1971)

 

 世界中を飛び回る実業家ボー・ウィリアムソン(フ
ォレスト・タッカー)は、若き妻ジェニファー(パメラ
・オースティン)が建築家エリオット・マーカム(パト
リック・オニール)にそそのかされて巨大な住宅都市
「ウィリアムソン・シティ」建設計画に出資する事を
知りマーカムの事務所を訪れる。マーカムは不在だっ
たが秘書のシャーマン(ベティ・アッカーマン)の制止
を振り切ってオフィスに入り、そこに展示してあった
「ウィリアムソン・シティ」の模型を破壊すると、マ
ーカムのいるビルの建設現場へと向かう。建設現場で
マーカムは、計画には反対で金は出さないし仮に自分
が死んでも遺言で財産は妻の自由にはならないとウィ
リアムソンから聞かされ、ウィリアムソンの牧場で彼
を待ち伏せすると銃を突きつけ厩舎の中へ連れ込む。
そしてウィリアムソンの自宅から彼が再び旅行へ出か
けたという偽装のため旅行鞄を持ち出す。建設現場で
新ビルの着工パーティを開いていたマーカムとジェニ
ファーの前にロサンゼルス市警のコロンボ警部(ピータ
ー・フォーク)が現われ、ウィリアムソン夫人から夫が
行方不明だという連絡を受けたと告げる。ジェニファ
ーは自分は電話していないし夫は急な出張する事がし
ょっちゅうで、連絡したのはおそらく前妻のゴールデ
ィ(ジャニス・ペイジ)だろうと答える。ゴールディは訪
れたコロンボに、数日間ウィリアムソンと連絡が取れ
ないことを心配して捜索願の電話した事を告白し、帰
国したのに連絡して来ないのは初めてで彼は殺された
のではと話す。そこへウィリアムソンの車が空港で発
見されたという連絡が入り、車を調べたコロンボは、
ウィリアムソンは熱烈なカントリー・ミュージックの
ファンで他の音楽は聴かないにもかかわらず、カー・
ラジオがクラシック専門局にセットされていた事を怪
しむ...というお話。本作は全シリーズ中でもかなり異
色な作品で、殺人があったのかどうかや死体が何処に
あるかも描かない事で、視聴者がコロンボと一緒に推
理に参加するような形になっているし、死体を探すた
めに深く埋め込まれたビルのパイルを掘り出し解体す
るという大掛かりな捜査シーンも登場する。そして何
よりも本作が異色なのは、ピーター・フォークの長い
俳優人生の中でも唯一の監督作である事だ。彼が自ら
監督したからなのか、今回のコロンボはマーカムに対
してかなりシャープに切り込み、いつものオトボケ捜
査は少なめであります。シリーズは回を重ねる度にコ
ロンボのオトボケ捜査に人気が集まりその面白さに注
目されるようになったが、演じるピーター・フォーク
自身は少し不満だったのかもしれないですな。寝室で
マッサージを受けるゴールディとのやり取りはナカナ
カ楽しいし、パイルを掘り出して何も出て来なかった
事に落胆するコロンボと慰めるゴールディの姿はシリ
ーズ屈指の名シーンなんだけどね。役所のシーンで順
番待ちの長い列にならばされるあたりも、役人とのや
り取りはあっさり目だし得意の"ボヤキ"もなく、今回
は全体的にニコニコ場面が少ない本格的な刑事物の雰
囲気であります。マーカムはコロンボの挑発にも乗ら
ないかなり手強い相手として描かれているのに、ウィ
リアムソンの死体を積んだ車がパンクして白バイ警官
に止められる場面はかなり焦った感じ演出されている
のはオカシイし、死体が見つかってしまうかもしれな
いというサスペンスになっているのは視聴者にとって
は本末転倒、そもそもこのシーンは不要なのだよ。ラ
ストで、マーカムにパイルの掘り出しや落胆する姿も
罠だった事を告げるコロンボの姿は、あっさりとして
はいるものの"名探偵"の謎解きシーンのようで格好良
過ぎです。ウィリアムソンの主治医を演じるジョン・
フィードラーは「十二人の怒れる男(1957)」のお人好
しの陪審員2番の人。ビリー・ワイルダーの「ねえ!
キスしてよ(1964)」や「ニュ ーヨーク泥棒結社(1967)」
「おかしな二人(1968)」等でも良い味出しています。
ついでに診察されたコロンボが葉巻を止めるように言
われて困惑する姿はかなり可笑しい(注1)。

 

●スタッフ
監督:ピーター・フォーク
製作総指揮:リチャード・レヴィンソン、
ウィリアム・リンク
ストーリー原案:ウィリアム・ケリー
脚本:スティーヴン・ボッコ
撮影:ロイド・エイハーン
音楽:ギル・メレ

 

●キャスト
ピーター・フォーク、パトリック・オニール、
ジャニス・ペイジ、パメラ・オースティン、
ベティ・アッカーマン、フォレスト・タッカー、
ジョン・フィードラー

 

◎注1; アメリカのTVシリーズは、撮影時には新シー
ズンが製作されるかどうか解らない状態な事が多く、
製作者が来年も続けたいと考える場合は曖昧なラスト
にしておくのが定番なのだが、本作は1971年に製作さ
れた第1シーズンの最終作で、禁煙の話を思い出したコ
ロンボが葉巻に火をつけるのを止めて捨てるラスト・
シーンが最終回の雰囲気として上手く使われている...
結局長寿シリーズになったんだけどね。マーカムを演
じたパトリック・オニールはクールな建築家の雰囲気
タップリで、犯人像としては第1シーズンのラストを飾
る最強の敵として申し分のないキャラクターになって
いる。ピーター・フォークとは「大反撃(1969)」やシ
リーズ2作目の出演となる「刑事コロンボ/秒読みの殺
人(1977)」で共演していて、「恐怖の蝋人形(1966)」
「マッチレス殺人戦列(1967)」「クレムリンレター/

密書(1969)」等で活躍しています。ウィリアムソンを
演じたフォレスト・タッカーは、「西部の男 (1940)」
「西部を駆ける勇者 (1949)」「三人のあらくれ者(19
56)」「チザム(1970)」等の西部劇を中心に活躍して
来た俳優さんで、本作でも巨大なカウボーイ・ハット
にブーツという姿で雰囲気満点、馬のエンブレムを付
けた大型高級車を乗り回し傍若無人な振る舞いでマー
カムを罵倒しまくります...成金丸出しの嫌な親爺なん
で、これまで殺されなかったのが不思議なぐらい。ゴ
ールディを演じたジャニス・ペイジは、MGMのミュ
ージカル映画「世紀の女王(1944)」「絹の靴下(1957)」
等で活躍、彼女とコロンボとのやり取りは本作の見せ
場になっていて、寝室でコロンボに対して「着替える
からあっちを向いていて」「私を名前で呼んで」「寝
室に通したんだからもうお友達」等と言って困らせる
あたりは最高...いい大人なのに恥ずかしがるコロンボ
が可愛い。ジェニファーを演じたパメラ・オースティ
ンは、可愛い女優さんなのにエルヴィス・プレスリー
の「ブルー・ハワイ(1961)」「キッスン・カズン(19
64)」や「恋愛専科(1962)」では脇で華を添えるみた
いな役で残念だったが、パット・ブーンの「ポーリン
の大冒険(1967)」ではヒロインを演じています。本作
でも世間知らずな実業家夫人の感じが素敵だし、前妻
ゴールディとはお互いに非難し合いながらも仲良しな
雰囲気なのが素晴らしかったです。本作の死体をビル
の基礎に埋めるというアイデアはフランク・シナトラ
の「七人の愚連隊(1964)」からいただいたと言われて
いる...何故ならそっちで埋められるのはギャングのボ
スのギスボーンを演じたピーター・フォークなんです。

 

★Amazon.co.jp★

 

 

刑事コロンボ コンプリート ブルーレイBOX[Blu-ray]

 

PS: 以下のサイトも運営しています、よろしかったらどうぞ。

 

★ 漫画を中心とした同人サイト

「日刊...かもしれないかわら版」

http://www.geocities.jp/saitohteruhiko/index.html

 

★伝説の漫画誌「COM」についてのサイト

「ぐら・こん」ホームページ

http://www.geocities.jp/saitohteruhiko/home/gracom/g_home.html

★「ぐら・こん」掲示板

http://gracom.bbs.fc2.com/

 

★Facebook「Teruhiko Saitoh」

https://www.facebook.com/#!/teruhiko.saitoh.3