十二人の怒れる男(1957) | つぶやキネマ

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140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★

 

十二人の怒れる男(1957)

 

 父親殺しの罪に関する12人の陪審員の討論が始まった。
陪審員の大半は17歳の息子の有罪を確信していたので最初
に評決をとる事になるが、その結果11人の陪審員は有罪を
表明したが陪審員8番(ヘンリー・フォンダ)が無罪を主張し
少年のために議論をしようと提案する...というお話。アメ
リカの陪審制度の問題点についての映画として有名だが、
民主主義と人間のエゴについての映画でもある点には、
あまり触れられないのが残念(注1)。1954年製作のアメ
リカの同名のTVドラマの映画化(注2)なのだが、物語が
進行するにつれて12人のキャラクターが浮き上がってくる
レジナルド・ローズの脚本がとにかく素晴らしいし、的確
にキャスティングされた俳優陣も充実していて文句のつけ
ようが無い(注3)。アカデミー賞の作品・監督・脚色の3部門
で候補になったが、「戦場にかける橋(1957)」が7部門で受賞
したため残念ながら受賞は逃している。本作が映画監督デビ
ューとなったシドニー・ルメットは、子役としてラジオや
舞台、映画で活躍した後CBSでドラマの演出家になったと
いう、業界の申し子のような存在。本作の後「質屋(1964)」
「未知への飛行(1964)」「セルピコ(1973)」「オリエント

急行殺人事件(1974)」「ネットワーク(1976)」等の傑作・
問題作を監督、オジさん世代には特に思い入れの強い監督
さんです。狭い部屋のセットでの撮影にも関わらず、構図
やカメラワークが絶妙で俳優さんのアップの撮り方も色々
工夫していて上手さにうなってしまう...TVドラマみたいな
音楽の入れ方はご愛嬌。

 

●スタッフ
監督:シドニー・ルメット
製作・脚本:レジナルド・ローズ
製作:ヘンリー・フォンダ
撮影:ボリス・カウフマン
音楽:ケニヨン・ホプキンス

 

●キャスト
ヘンリー・フォンダ、リー・J・コッブ、エド・ベグリー、
マーティン・バルサム、E・G・マーシャル、
ジャック・クラグマン、ジョン・フィードラー、
エドワード・ビンズ、ジャック・ウォーデン、
ジョセフ・スィーニー、ジョージ・ヴォスコヴェック、
ロバート・ウェッバー

 

◎注1; 陪審制度の問題点を描く事で浮き彫りになるのが
民主主義の矛盾と人間のエゴ。犯罪容疑者を裁くために
選ばれ集められた12人に客観的な判断が求められるあたり
は議会制民主主義そのまま。しかし議会制民主主義の実態は、
選ばれ集まった議員たちは特定地域や企業・団体等の利益
代表な訳で、あきらかに"客観的"とは言えない議論が交わ
される事になる...そのあたりは「国家って何?」という
問題でもあるが。面識も無く人種や職業等も違い利害関係
が無いハズの12人の陪審員だが、その判断には個人の性格
や生き方、思想や偏見等が大きく影響する。本作で描かれ
ているように、人命がかかった選択に自分の都合や偏見から
結論を下し、本来なら争う必要なんか無いのにもかかわらず、
エゴ剥き出しでののしり合い、殴り合い寸前までエスカレート
してしまうあたりはホントに哀しいし、人が本当に"客観的"に
人を裁けるのかという大きな問題も生まれてくる。本作が
めちゃめちゃ面白く何年経っても古くならないのは、その
あたりをきちんと描いているからだろう。

◎注2; 1954年のTVドラマは、レジナルド・ローズのオリ
ジナル脚本を、後に映画監督になり「猿の惑星(1968)」
「パットン大戦車軍団(1970)」「パピヨン(1973)」「ブラジル

から来た少年(1978)」等の傑作を発表するフランクリン
・J・シャフナーが演出し、フランチョット・トーンやロバ
ート・カミングス等のスターが出演していた。当時は生放送
だったためビデオ録画はされず長い間観る事が出来なかった
のだが、放送画面をフィルム撮影(キネコ)した素材が発見され、
アメリカではDVDが発売されています...日本盤もお願いしたい、
無理ならBS・CS放送でも。1997年にはTVムービーとして
リメイクされ「12人の怒れる男 評決の行方」のタイトルで
DVDも出ています...ちなみに監督はウィリアム・フリード
キンで陪審員8番はジャック・レモン。2007年には監督ニキ
ータ・ミハルコフのロシア映画「12人の怒れる男」として
現代のロシアに置き換えて映画化されています。日本では
何度も舞台化され、筒井康隆「十二人の浮かれる男」、三谷
幸喜「12人の優しい日本人」(映画化も)等のパロディ作品も
あります。

◎注3; 簡単に12人の陪審員について...
陪審員1番を演じたマーティン・バルサムは「サイコ
(1960)」「トラ・トラ・トラ!(1970)」「サブウェイ・パニッ

ク(1974)」等の名優。
陪審員2番のジョン・フィードラーは「女優志願(1958)」
「おかしな二人(1968)」等の名傍役。
陪審員3番のリー・J・コッブは「波止場(1954)」「電撃
フリントGO!GO作戦(1966)」「マンハッタン無宿(1968)」
等の名優。
陪審員4番のE・G・マーシャルは「大海賊(1958)」「逃亡
地帯(1966)」「レマゲン鉄橋(1968)」等の名優。
陪審員5番のジャック・クラグマンはTVシリーズ「おかしな
カップル(1970~1975)」「Dr.刑事クインシー(1976~1983)」
等で大活躍。
陪審員6番のエドワード・ビンズは「北北西に進路を取れ
(1959)」「ニュールンベルグ裁判(1961)」「未知への飛行
(1964)」等の名傍役。
陪審員7番のジャック・ウォーデンは「ブライアンズ・ソング
(1970)」「シャンプー(1975)」「天国から来たチャンピオン
(1978)」等の名傍役。
陪審員8番のヘンリー・フォンダは「荒野の決闘(1946)」
「ミスタア・ロバーツ(1955)」「バルジ大作戦(1965)」
「テキサスの五人の仲間(1965)」「ウエスタン(1968)」等、
とても書ききれない大スター。
陪審員9番のジョセフ・スィーニーは「灰色の服を着た男
(1956)」TVシリーズ「プレイハウス90(1954~1959)」等で
活躍した名傍役。
陪審員10番のエド・ベグリーは「拳銃の報酬(1959)」「不沈
のモリー・ブラウン(1963)」「奴らを高く吊るせ!(1968)」
等の名傍役。
陪審員11番のジョージ・ヴォスコヴェック「バタフィールド8
(1960)」「寒い国から帰ったスパイ(1965)」「ある日どこかで
(1980)」等の名傍役、本作に先立つTV版でも同じ役を演じて
います。
陪審員12番のロバート・ウェッバーは「殺しのテクニック
(1966)」「バンクジャック(1971)」「ガルシアの首(1974)」等
の名優。
各人の役柄についても書きたい所だが...キリが無いですなぁ。

 

 

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