第三の男(1949) | つぶやキネマ

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大好きな「映画」について「Twitter」風に
140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★


第三の男(1949)


 第二次世界大戦後、オーストリアの首都ウィーンは米英
ソ仏の4ヶ国による分割統治下にあった。旧友ハリー・ライ
ム(オーソン・ウェルズ)から仕事の依頼を受けウィーンに
やって来たアメリカの西部劇小説家ホリー・マーティンス
(ジョゼフ・コットン)は、ハリーのアパートの管理人カール
(パウル・ヘルビガー)からハリーは自動車事故で死亡し墓地
に埋葬される所だと聞かされる。墓地での葬儀の後、マーテ
ィンスはイギリスのMPキャロウェイ少佐(トレヴァー・ハワ
ード)に呼び止められ車に同乗するが、少佐はハリーが闇屋
で大勢被害者が出ていると告げる。ハリーの友人と名乗るク
ルツ男爵(エルンスト・ドイッチュ)に呼び出され事故当時の
様子を説明されたマーティンスは、疑問点の多い事故の真相
を探るためハリーの恋人で女優のアンナ・シュミット(アリダ
・ヴァリ)に会い、ふたりで事故の目撃者である管理人のカー
ルに話を聞きに行くが、カールは現場にはハリーの友人クル
ツ男爵とポペスコ(ジークフリート・ブロイアー)以外に"第三
の男"がいたと語る...というお話。"映画"というのは作品の芸
術性だけでなく娯楽的要素も要求される特殊な"芸術"で、両
者を兼ね備えた作品はホントにまれにしか登場しないのだが、
本作は脚本・演出・撮影・編集・美術・音楽・俳優の演技等
が絶妙のバランスで融合して"映画"としての芸術性も高く娯
楽映画としても傑作という奇跡の1本だと信じている(注1)。
本作はホントに大好きで、ビデオが無かった時代にアメリカ
で発売されていたノーカット版の8mmフィルムを個人輸入し
て、ほぼ毎日観ていたので英語の台詞をほとんど暗記してし
まうぐらいだった。現在までトータルすると300回くらいは
観ているのだが、何度観ても飽きないし新しい発見もあって
楽しい。特にキャロル・リード監督の繊細な演出には毎回驚
かされるが、ハリーのアパートでアンナが無言電話に出なが
ら箱の中からダイスを出して遊ぶ場面にはホントに感心して
しまう...このワン・カットだけでアンナがこの部屋に何度も
来ているのが解るという仕掛けなんだよね。「邪魔者は殺せ
(1947)」
でも参加していた名撮影監督ロバート・クラスカー
の照明やカメラワークは今回も素晴らしく、斜めの構図を多
用したり壁に映る影を強調したりしてサスペンスを盛り上げ
ている。クライマックスでハリーが逃げ込む下水道の中はセ
ット撮影も併用されているのに、それを感じさせない照明の
効果がホントに素晴らしい。今回観直してみて、評価の高い
オーソン・ウェルズの演技はもちろん素晴らしいのだが、ジ
ョゼフ・コットンの雰囲気や存在感が作品を支えている事を
再確認...招かれて立ったスピーチで質問の意味が分からずド
ギマギする三流作家ぶりが最高です。


●スタッフ
製作・監督:キャロル・リード
製作:デヴィッド・O・セルズニック、
アレクサンダー・コルダ
原作・脚本:グレアム・グリーン
撮影:ロバート・クラスカー
音楽:アントン・カラス


●キャスト
ジョセフ・コットン、オーソン・ウェルズ、
アリダ・ヴァリ、トレヴァー・ハワード、
バーナード・リー、ウィルフリッド・ハイド=ホワイト、
エルンスト・ドイッチュ、ジークフリート・ブロイアー、
エリッヒ・ポント、パウル・ヘルビガー、
ジェフリー・キーン


◎注1; 本作はカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した
以外にも、イギリスのアカデミー賞では作品賞、アメリ
カのアカデミー賞では監督・撮影・編集の3部門で候補
になり、ロバート・クラスカーが撮影賞を受賞している。
本作で圧倒的なのはアントン・カラスの音楽で、全編彼
の演奏するオーストリアの民俗楽器ツィターだけで構成
されていて、シーンに合わせて変化する繊細な表現には
吃驚であります。撮影前からオーケストラの楽曲が準備
されていたらしいが、ウィーン・ロケでアントン・カラ
スに会ったキャロル・リード監督の強い要望で変更にな
ったそうだ。プラーター公園の大観覧車を仰角で捉えた
構図が素晴らしいのだが、観覧車を降りたハリーの名台
詞「30年戦争をしていたイタリアのボルジア家はルネサ
ンスを開花させたが、500年間平和をつらぬいたスイス
が生んだのは鳩時計だけだ」は、脚本には無く撮影現場
でオーソン・ウェルズ自ら書いたそうである。前作「落
ちた偶像(1948)」
に引き続き007シリーズでMを演じて
いたバーナード・リーが出演、キャロウェイ少佐の部下
ペイン軍曹を演じていて台詞も多く、ホリーの書いた西
部劇小説のファンという役柄で、ハリーが逃げ込んだ下
水道でホリーを守ろうとして死んでしまうのが哀しい...
ちなみにホリーの代表作は「XX牧場の殺人」「オクラホ
マ・キッド」「サンタフェ一匹狼」。同じく前作に引き
続き007シリーズの常連だったジェフリー・キーンがイギ
リスのMPの役で出演しているし、007シリーズを4作監督
したガイ・ハミルトンが今回も助監督で参加してます。
大観覧車の場面は「007/リビング・デイライツ(1987)」
にパロディとして登場、監督のジョン・グレンは「第三
の男」に音声スタッフのひとりとして参加していて、ボ
ンドと待ち合わせた諜報員のソーンダースが"風船売り"
の姿の敵のスパイに殺されるという場面があります。本
作の大ヒットを受けて、マイケル・レニーがハリー・ラ
イムを演じたTVシリーズ「第三の男(1957~1962)」も
製作され、日本でも一部が放映されたようだが当時は小
学生だからねぇ。


 

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