刑事コロンボ/構想の死角(1971) | つぶやキネマ

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140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★


刑事コロンボ/構想の死角(1971)


 ジム・フェリス(マーティン・ミルナー)とケン・フラン
クリン(ジャック・キャシディ)はコンビでベストセラー小
説「ミセス・メルヴィル」シリーズを発表していたが、別
の作品を執筆するためコンビを解消したいとフェリスが提
案、執筆には一切タッチしていないフランクリンは作家を
続けられなくなってしまうため、巧みなアリバイ工作を準
備した上でフェリスを別荘に誘い出し殺害する。駆けつけ
た妻ジョアンナ(ローズマリー・フォーサイス)や捜査陣で
混乱するフェリスのオフィスにコロンボ警部(ピーター・フ
ォーク)が現れる...というお話。単発作品「殺人処方箋(19
68)」
パイロット版「死者の身代金(1971)」の好評を受けて
製作されたシリーズの第1弾で、撮影当時24歳のスティーヴ
ン・スピルバーグが演出を担当した傑作であります。タイ
プライターの音が流れる中、通りを走るフランクリンの車
の俯瞰映像からズームと移動撮影を組み合わせてオフィス
で執筆中のフェリスの姿までワン・カットで観せるカメラ
ーワークからは、とても「四次元への招待(1969)」と同じ
監督とは思えないほどのスピルバーグの成長が確認出来る。
その後もTV映画としては破格のロケ撮影の多さや凝りまく
った構図や照明の連続で、別荘に向かう車内のフランクリ
ンとフェリスを捉えた映像は車にカメラを固定して撮影し
ているあたり、予算も潤沢だった事がうかがえる(注1)。ス
トーリー展開も面白くコロンボの犯人追及のスタイルも完
成型でキャスティングも適材適所、特に車中でフェリスが
語った既視感が結末へ結びつくという伏線の見事さは、シ
リーズ第1作として文句のつけようがない完成度であります
...フランクリンの第2の殺人の描写に時間を使い過ぎてコロ
ンボの出番が少なめなのがピーター・フォークのファンに
は不評のようだけどね(注2)。


●スタッフ
製作・原案:リチャード・レヴィンソン、ウィリアム・リンク
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:スティーヴン・ボッコ
撮影:ラッセル・L・メティ
音楽:ビリー・ゴールデンバーグ


●キャスト
ピーター・フォーク、ジャック・キャシディ、
マーティン・ミルナー、ローズマリー・フォーサイス


◎注1; コンビのミステリー作家というと、まず浮かぶの
がエラリー・クイーンだけど、本作のモデルはシリーズ
のクリエイターであるリチャード・レヴィンソンとウィ
リアム・リンクのようだ。オジさん世代としては、執筆
はフェリスだけでフランクリンは外交担当というあたり
「藤子不二雄」を思い出してしまった。初期の頃はホン
トに共作していたが、作風が分かれて行くに従って別々
に執筆するようになり、藤本(F)さんはあまり社交的では
なかったのでスタジオにこもって漫画ばかり描いていたの
に対し、我孫子(A)さんは漫画も描きつつ編集者や文化人・
芸能人との交流を深めていたが、ヒットし安定して人気が
あったのは藤本さんの作品ばかり。本作のコンビ解消とい
うストーリーも結果的に「藤子不二雄」の未来像を予見し
ていたような感じになってしまった。本作は、前2作とは
まったく違った肌触りの作品になっていて、冒頭からスピ
ルバーグ演出炸裂であります。複雑な移動ショットやクレ
ーン・ショット、超ロー・アングルでの撮影、陰影に凝り
まくった室内の照明、オフィスやフランクリン邸にならぶ
奇妙な美術品や小道具の数々、別荘でコロンボとフランク
リンが会話している奥に観える湖を霧が渡って行くシーン
等、スピルバーグが「黒い罠(1958)」「スパルタカス(19
60)」「荒馬と女(1961)」等の名撮影監督ラッセル・L・
メティと一緒に生み出した映像は、とてもTV映画のレベ
ルではない...フランクリンが別荘を出て車のトランクを開
けに行くシーンで背後の道路にブーム・マイクの影らしき
モノが写っているのは残念なケアレス・ミスだけどね。ジ
ャック・キャシディの犯人ぶりも最高で、彼は本シリーズ
でトータル3回犯人を演じる事になる。1976年に自宅の火
災で亡くならなければ、さらに犯人役で出演していたかも
しれないだけに残念です。ちなみに「人気家族パートリッ
ジ(1970~1974)」で人気者になった歌手のデヴィッド・キ
ャシディ、俳優で歌手のショーン・キャシディ、俳優のパ
トリック・キャシディは彼の息子です。

◎注2; スピルバーグは、コロンボ・ファンがニコニコして
しまうシーンもしっかり入れてくれている。フェリス邸で
ジョアンナにコート着たままでオムレツを作るシーンはほ
のぼのしてしまうし、手際も良くてなんだか美味そうなん
だが完成品を観せてくれないのが残念。コロンボはいつも
犯人や近くにいる人から何か借りるのだが、今回借りるの
はコンビが執筆したベストセラー本...借りた時は10冊ぐら
いだったのに返しに来た時かなり増えているのが謎。コン
ビが執筆した本の一冊のタイトルが「殺人処方箋」という
のには笑った。コロンボの愛車プジョーも初登場で、まだ
ポンコツ状態ではないのだが、別荘近くの雑貨店に入って
くる時に花壇(?)に乗り上げているという迷運転ぶりを披露
してくれます。


 

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