★注意!!! 作品の内容に触れています★
刑事コロンボ/死者の身代金(1971)
敏腕女性弁護士レスリー(リー・グラント)は、法曹界の
実力者の夫ポール(ハーラン・ウォード)を殺害しアリバイ
工作と捜査を混乱させるために誘拐事件を偽装する。オフ
ィスのオートダイヤルを利用して犯人からの身代金要求の
電話をかける工作をするが、FBI捜査陣が逆探知の準備を
している自宅にロス市警の刑事コロンボ(ピーター・フォ
ーク)が現れる...という「刑事コロンボ」第2作であります
(注1)。前作の、コロンボの登場がかなり遅かったり犯人
側のミスが解りやす過ぎるという欠点を再検討し、犯人
やコロンボのキャラクターを明確に、舞台劇脚本をその
ままドラマ化したようなスタジオ撮影中心から、ロケや
スクリーン・プロセス等も多用し映像的な立体感を加え
て、バランスの悪かったストーリー構成も改善され、シ
リーズのフォーマットがほぼ完成した形の傑作になって
いる。今回は、犯人が敏腕女性弁護士という事で、なか
なかボロを出さないレスリーに手こずるだけでなく、飛
行機の操縦までさせられるピンチに陥るのが良い...コロ
ンボの捜査手法をすべて見抜かれてしまうというあたり
も楽しいですな(注2)。最初からレスリーを怪しいとにら
んでいるコロンボに対してFBIのカールソン(ハロルド・
グールド)にわざわざ否定させていたり、レスリーがコロ
ンボの"罠"になかなか引っかからなかったりして、どう解
決するかのかと視聴者に思わせサスペンスを盛り上げてい
るあたりや、何度も強調されるレスリーの性格や思考形態
が事件解決の伏線となっている脚本が素晴らしい。しかし、
解決のためのトリックに義理の娘マーガレット(パトリシア
・マティック)の力を借りるあたり、協力者の存在が前作と
ほぼ同じなのがちょっぴり残念。コロンボが好物の"チリ"を
食べるシーンも初登場、なんだか美味そうだったので料理
の本を買って来て作ってみたのは内緒。
●スタッフ
製作総指揮・監督：リチャード・アーヴィング
製作・脚本：ディーン・ハーグローヴ
原案：リチャード・レヴィンソン、ウィリアム・リンク
撮影：ライオネル・リンドン
音楽：ビリー・ゴールデンバーグ
●キャスト
ピーター・フォーク、リー・グラント、
パトリシア・マティック、ハロルド・グールド、
ジョン・フィンク、ハーラン・ウォード、ポール・カー、
ジーン・バイロン、ティモシー・ケリー
◎注1; 前作「殺人処方箋(1967)」の成功でシリーズ化が
検討されたが、クリエイター・コンビのリチャード・レ
ヴィンソンとウィリアム・リンクやピーター・フォーク
が難色を示したので流れてしまった。3年後にシリーズ化
が再検討され完成したのが本作で、多忙だったレヴィンソ
ン&リンクに変わって脚本を書き製作も担当した「0011/
ナポレオン・ソロ(1965～1967)」等の脚本家ディーン・
ハーグローヴは、最初に犯行を観せる基本的なストーリー
構成とコロンボのキャラクターの魅力を抽出し、シリーズ
化を目指して様々な改善を加えて再構築、シリーズ化の大
成功は彼の功績が大きいと言えるだろう...監督が同じでも
脚本次第でこんなに違うという良い見本であります。
◎注2; レスリーを演じたリー・グラントは、大ヒット舞台
劇のウィリアム・ワイラー監督による映画化「探偵物語(19
51)」で彼女が舞台でも演じていた女スリ役で映画デビュー、
カンヌ映画祭では女優賞を受賞する。しかし、アメリカ映画
史上最大の汚点であるハリウッドの赤狩りの影響で10年以上
も干され「夜の大捜査線(1967)」あたりから徐々に復帰して
「シャンプー(1975)」でアカデミー助演女優賞を受賞してい
る。本名はリョヴァ・ハスケル・ローゼンサルで、南北戦争
の南軍のロバート・エドワード・リー将軍と北軍の将軍で第
18代アメリカ合衆国大統領となったユリシーズ・S・グラン
トから拝借したという芸名が凄いですな...ケイリー・グラン
トとの恋愛も関係があるらしい。シリーズに登場した犯人の
中でもかなり上位に来る強敵で、さすがのコロンボも義理の
娘マーガレットの協力が無ければ解決できなかったのではな
いかと思われる。マーガレットを演じたパトリシア・マティ
ックも義理の母レスリーに負けず劣らず強気で怖い感じだが、
コロンボに見せる子供っぽく弱気な部分が可愛い。クリント
・イーストウッドの「白い肌の異常な夜(1971)」にも出てい
たが活躍の中心はTV界だったようだ。マーガレットが居間
で見ているTVに映っているのはビリー・ワイルダー監督の
「深夜の告白(1944)」...偽装殺人犯レスリーの目の前で保険
金殺人の映画を観ているというサスペンス...なのか?
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「ぐら・こん」ホームページ
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