四次元への招待(1969) | つぶやキネマ

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大好きな「映画」について「Twitter」風に
140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★


四次元への招待(1969)


 「第1話/復讐の絵画」。画家であった叔父ヘンドリック
ス(ジョージ・マクレディ)を病死に見せかけ殺害し遺産を手
に入れた強欲な甥ジェレミー(ロディ・マクドウォール)は、
屋敷の前の一族の墓地を描いた一枚の絵が変化している事に
気がつく。やがて、その絵の中では叔父が墓場からよみがえ
り一歩一歩屋敷に近づいて来る...というお話。

「第2話/アイズ」。盲目の大富豪クラウディア・マンロー
(ジョーン・クロフォード)は12時間だけ視力が回復する治療
法を開発したヘザートン医師(バリー・サリヴァン)を脅迫し、
ドナーに巨額の支払いをして移植手術を受ける。手術は成功
し、包帯をとった一瞬だけ自宅のシャンデリアを目にするが
直後に再び暗黒の世界に連れ戻されてしまう...というお話。

「第3話/絵になった男」。南米で逃亡を続けるナチス戦犯の
ジョセフ・ストローブ(リチャード・カイリー)は、美術館で
十字架に張り付けにされ恐怖に顔が歪む男の絵の前でホロコ
ーストの生存者ブルーム(サム・ジャッフェ)に出会うが、そ
ばに展示されていた湖で釣りをする男の絵に何故か心を奪わ
れる。やがて、逃亡に疲れた彼に追跡者の手が迫り、再びそ
の美術館に逃げ込んだが...というお話。

 TVシリーズ「ミステリー・ゾーン(1959~1964)」の脚本
家・ホストだったロッド・サーリングが、同様に脚本とホス
トを務めた怪奇TVシリーズのパイロット版で、「第2話/アイ
ズ」を演出したスティーヴン・スピルバーグの監督デビュー
作であります。本作の後シリーズ化され全46話が製作された
のだが、各話がヒネリの効いた物語で面白さが凝縮されてい
た「ミステリー・ゾーン」シリーズとは違って、怪奇小咄の
ようなストーリーばかりであまり成果は残せなかった。本作
の全3話も、ストーリー自体があまり面白くない上に脚本や
演出も平凡で、低予算だけが目に付く作りになっていて残念
であります(注1)。スピルバーグの演出はレンズの使い方やカ
メラワークに彼らしい部分が散見出来るものの、名優たちの
演技や存在感に助けられた感じの作品になっている。当時21
歳の新人監督だった彼の指示にベテラン・スタッフたちが従
わなかった事も多かったようで、TV界に嫌気がさしてユニ
ヴァーサルに退社願いまで出す始末...数ヶ月休職の後数本の
TVドラマを演出、「刑事コロンボ/構想の死角(1971)」「激
突!(1971)」では格段に違う演出力を発揮しているので、本
作の時はいろんな意味でホントに未熟だったのだろう。


●スタッフ
監督:ボリス・セイガル、スティーヴン・スピルバーグ、
バリー・シアー
製作:ウィリアム・サックハイム
脚本:ロッド・サーリング
撮影:リチャード・バチェラー、ウィリアム・マーガリーズ
音楽:ビリー・ゴールデンバーグ


●キャスト
ロッド・サーリング(ホスト)、ロディ・マクドウォール、
オシー・デイヴィス、ジョージ・マクレディ、
ジョーン・クロフォード、バリー・サリヴァン、
トム・ボスレー、バイロン・モロー、
リチャード・カイリー、サム・ジャッフェ、
ノーマ・クレーン


◎注1; 「第1話/復讐の絵画」は、TVシリーズ「コンバッ
ト(1962~1967)」「フロリダ万才(1964)」「モスキート爆
撃隊(1969)」等のボリス・セイガルが演出しているが、恐
怖映画のセオリーをことごとくハズしていて全然盛り上が
らない。画家の幽霊は執事のポートフォイ(オシー・デイヴ
ィス)が仕組んだみたいな展開にしておいて、実はホントに
幽霊がというオチには苦笑するしかない。「第2話/アイズ」
は、大女優ジョーン・クロフォードやバリー・サリヴァン、
トム・ボスレー、バイロン・モローといった名優たちの演技
や存在感ばかり目立っているが、俳優の仕草や細かいカット
割りはスピルバーグの演出のようである。クラウディアが包
帯をとった直後にニューヨーク大停電に遭遇するというコン
トのようなストーリーなのだが、高層マンションの最上階と
はいえ巨大な窓ガラスからは通りを走る自動車のライトは見
えるはずなので、その辺りを一切無視したのは問題でありま
す...翌朝陽が昇った時、彼女がガラスに衝突したひび割れが
あるしカーテンも開いているんだから。そんな脚本の描写不
足を補えるほどの権限や演出力はまだなかったんだろう。ラ
ストの窓ガラスが割れてクラウディアがビルから落下するシ
ーンは砕け散るガラスのモンタージュで表現されているあた
りは映画を良く勉強しているなという感じだけどね。「第3
話/絵になった男」は、後年「110番街交差点(1972)」「死
の追跡(1973)」という力作を発表する監督のバリー・シアー
が演出しているが、追跡シーンのサスペンス演出あたりは良
かったものの思いつきだけで書いたようなストーリーではど
うにもならなかったのだろう。ナチス戦犯が逃亡の果てにホ
ロコーストの犠牲者の絵に収まるというあたりは、人種偏見
の強い男が絶滅収容所へ送られるという「トワイライトゾー
ン/超次元の体験(1983)」の第1話「偏見の恐怖」に良く似て
いる...オリジナル脚本を書いたジョン・ランディス監督は本
作を参考にして両シリーズのクリエイターのロッド・サーリ
ングに敬意を表したのかもしれないですね。本作は、「怪奇
!真夏の夜の夢」のタイトルで1972年にTV放映されたが、ス
ピルバーグ演出の「第2話/アイズ」は放映時間の関係でカッ
トされてしまった...「激突!」の日本公開前だったしなぁ。
巨匠の映画監督としての船出は、日本でもかなり悲惨な状態
だったのであります。


 

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