刑事コロンボ/殺人処方箋(1967) | つぶやキネマ

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140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★


刑事コロンボ/殺人処方箋(1967)


 精神科医レイ・フレミング(ジーン・バリー)は患者で愛人
の映画女優ジョーン・ハドソン(キャサリン・ジャスティス)
と共謀して不仲になった妻キャロル(ニナ・フォック)の殺害
を計画、アカプルコ旅行へ出発する直前にキャロルを絞殺し、
アリバイ工作のためにジョーンにキャロルの変装をさせ離陸
直前の機内で口論する芝居をして、フレミングは単身でアカ
プルコ旅行へ飛び立った。旅行から帰り部屋に戻ったフレミ
ングを待っていたのはロス市警の刑事コロンボ(ピーター・
フォーク)だった...という「刑事コロンボ」第1作であります
(注1)。初めて観たのは1972年のNHKのUHFチャンネルで、
こんなに面白い作品をUHFのテスト放送で流すセンスを疑
ったもんです。前半はかなり時間をかけて犯行とアリバイ
工作が描かれ、コロンボが登場して犯人を追いつめて行く
過程はシリーズ化されてからの作品よりもかなりアッサリ
しているし、犯人や共犯者を罠にかける手法もかなり強引。
何よりコロンボのキャラクターがまだ定まっていない感じ
で、初登場の場面ではキッチリしたスーツ姿でコートは手
に持っていて、整ったヘアー・スタイルで鋭い目つきと葉
巻をくわえた表情はかなりなキレ者に観える。後半になる
に従って得意の話術やよれよれのコート姿も登場するが、
犯人や共犯者を追いつめる姿はかなりシャープで冷酷な感
じ。シリーズ化されて人気のポイントとなった"オトボケ"
ぶりがほとんど観られないあたりが第1作って感じです(注2)。
共犯者のジョーンが売れない映画女優という設定なので、
後半に撮影所やスタジオ内での場面が登場したのが楽しか
った...映画のメイキング映像とかがほとんど無くて舞台裏
が観られる映像が珍しい時代だったんだよね。


●スタッフ
製作・監督:リチャード・アーヴィング
脚本:リチャード・レヴィンソン、ウィリアム・リンク
撮影:レイ・レナハン
音楽:デイヴ・グルーシン


●キャスト
ピーター・フォーク、ジーン・バリー、
キャサリン・ジャスティス、ニナ・フォック、
ウィリアム・ウィンダム、アンソニー・ジェームズ


◎注1; 最初に観た時にヒッチコックの「ダイヤルMを
廻せ!(1954)」みたいだと思ったのだが、脚本を書いた
リチャード・レヴィンソンとウィリアム・リンクはコ
ンビでTVシリーズ「ヒッチコック劇場(1955~1965)」
でも脚本を書いていた事を後で知って「やっぱりネ」と
納得したのであります。脚本家のふたりは中学生の頃か
らの親友で、大学時代にミステリー作家としてデビュー、
その後はTV界で脚本家として「ドクター・キルデア(19
62~1964)」「逃亡者(1963~1967)」「ハニーにおまか
せ(1965~1966)」
等で活躍している。本作の元となった
ストーリーは最初別のTVドラマとして放映され、その後
に書き換えられて舞台化、その舞台用の脚本をほぼその
まま映像化したのが本作で、セット撮影が中心で屋外の
シーンがほとんど無いのは舞台用の脚本を元にしたのが
原因なんだろう。製作・監督のリチャード・アーヴィン
グはTVドラマの演出家として活躍していたベテランで、
TVシリーズのパイロット版をまかされる事も多かったよ
うで「刑事コロンボ」のシリーズ化を目指して製作され
「刑事コロンボ/死者の身代金(1971)」や、「600万ド
ルの男(1974~1978)」のパイロット版「サイボーグ大作
戦(1972)」等の監督もしている。本作の演出は、やや視
聴者サービスのやり過ぎで説明的な描写が目立ち、コロ
ンボから妻キャロルの生存を告げられたフレミングが動
揺する表情や、コロンボに共犯を追求されたジョーンが
解りやすくうろたえるあたりは、「それじゃあ自白して
いるようなものじゃん」とツッ込みたくなる。高視聴率
作品を沢山製作したからなのか、後年ユニバーサル映画
の重役になったそうである。

◎注2;「ポケット一杯の幸福(1961)」「七人の愚連隊(19
63)」「グレートレース(1965)」等の演技が印象的で大好
きだったピーター・フォークの名前を、偶然に新聞のテ
レビ欄で発見して放映最初からシリーズにのめり込んだ
のだが、50年近くも繰り返し観て楽しませてもらうとは
思いもよらなかった。本作は、犯人側の凡ミス(演出の責
任だけど)が重なっているせいでイマイチ精彩に欠けて冷
酷非情な刑事という印象が強いのが残念...そういう役も
上手いんだけどね。ジーン・バリーは、「宇宙戦争(19
53)」の科学者役やTVシリーズ「バークにまかせろ!(19
63~1966)」の印象が強く、本作の演技もセルフ・パロデ
ィな感じで億万長者で独身貴族のエイモス・バーク警部が
時々顔を出すので笑ってしまった。赤い髪が眩しいキャサ
リン・ジャスティスは「大西部への道(1967)」「5枚のカ
ード(1968)」やTVシリーズ「インベーダー(1967~1968)」
「ガンスモーク(1969~1972)」等で活躍、本作ではハリ
ウッド女優らしく大胆で気が強そうな顔なのに実は繊細で
臆病という感じが良く出ていてナカナカ素敵です。フレミ
ングの友人のゴードン検事を演じたウィリアム・ウィンダ
ムは「アラバマ物語(1962)」「墓石と決闘(1967)」「新・
猿の惑星(1971)」「そら見えたぞ、見えないぞ!(1972)」
等の、映画とTVをあわせると出演作がとんでもなく多い名
傍役で、本作では手慣れた感じの演技で特に見所無しです。
個人的には、ユーモア作家ジェイムズ・サーバー原作で実
写とアニメーションを合成して描いたコメディ「パパはメ

ロメロ(1969~1970)」漫画家で夢想家のパパ役が印象に残
っています...DVD化されないかなぁ。妻キャロルを演じた
ニナ・フォックは「巴里のアメリカ人(1951)」「十戒(1956)」
「スパルタカス(1960)」等の名女優ですが、本作は夫にコロ
ッと騙される妻の役なんだけどそういう感じには観えないの
が残念...どちらかと言うと絶対騙されないタイプ。「夜の大
捜査線(1967)」でカフェの店員を演じていたアンソニー・ジ
ェームズが、似たような"アブナイ奴"の役で出演してます。


 

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