■ウォー・ウィズイン(原題) The War Within | ツボヤキ日記★TSUBOYAKI DIARY

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■The War Within ウォー・ウィズイン

●これは問題を残す作品ではないか、と思う。実は7日の夜にアップするつもりでアタフタしていたら8日。パキスタンは地震だった。しばし、アップするのは控えておこうと思った。まだ復興の兆しも困難な、かの地をバックボーンにした男の物語。

物語の主人公はパキスタン人ハッサン。彼は、パリでエンジニアの教育を受けていた学生だった。しかし、ある時、誤って逮捕されてしまう。容疑はテロリスト、だった。逮捕後、ハッサンは、アメリカの情報部によって質問を浴びせかけられる。この誤った逮捕によって、彼のそれまでの生活は一変してしまう。耐え難い体験の下に、ハッサンはもう後戻りが出来ない状態に陥った。疑われた末に、失ったモノの大きさ。修復の責務を負うものなど皆無だった。
彼は、結果的に自分を陥れたアメリカに復讐を誓い、実際に彼はアメリカに行って、NYに拠点を置くテロリストのグループに加わり、アメリカにおける地上戦を開始する計画に加わるのだ。



しかし、そこで事件が起きる。攻撃を起こす事になっていた矢先、ハッサンと一人を除く、グループの全員がいきなり逮捕されてしまうのだという。頼る術を無くしたハッサンは、ニュージャージー州で成功した友人の元を訪れる。彼はアメリカン・ドリームを掴んだかつての同朋だった。
ハッサンは計画実行のために爆薬を製造する資金を調達しなければならなかった。日々の生活のためにと、彼等に嘘をついてタクシーの運転手の職を得る。

これは、見る側がハッサンを通しながらも、終始どちら側に立つ人間かを問われるのかもしれない。彼の行動に不審を抱く事があるかもしれない。しかし、遡った時の彼の憔悴しきった人生、周囲からの断絶の苦悩はどうだったか。ハッサンの動機を見る側が調査しながら、行方を辿るドラマになっている、という。



どちらが先か。卵が先か、鶏が先か…テロリストの問題を語る時に用いられる。
右派はそれがイスラムの誤りであると言い、左派はそれがアメリカの誤りと言う。
アラブは、架空の世界のユダヤ人の陰謀…と言い放ち咎めるか。
そのどれが正しいかが選択できるのか、と問われた時、どう答えるか。
私達は知らない。911以降にパリにいたパキスタン人のエンジニア、ハッサンの誘拐。しかし、イギリスで先月、テロリスト容疑で殺された事件は知っている。
拷問室で警部は、彼に暴行を加える前に、ある写真を見せる。その写真は…。しかし、これは映画。この映画では、見る人によっては、彼は無実だという気になるという。そこで辻褄の合わない異議申し立ても出てくる、と。例えば、なぜ、証拠がないのにパキスタンのISI(Inter Service Intelligence)は彼を誘拐するためにフランスに全面的に同意するのか?…




ハッサンは、ニュージャージー州のハドソン川沿いのベイヨンから、どこに向かうか。金を稼ぎ爆弾を作る。彼の目的は、グランドセントラル駅。ティファニー・クロック…、ニューヨークの伝統的な建物、彼は爆破するために立つ。

西洋の教育で育ったパキスタン生まれのエンジニア、ハッサンが訪れたアメリカの地で暮らす友人は、久し振りに会う彼の急激な変化について怪訝な様子を見せる、という。
「デュランデュランが好きだった少年に何が起こったのか?」

ハッサンは、結果的に、彼を大らかに迎えてくれた友人をも滅ぼすのだろうか。これは透明な光の中に曝された、悪だと評された。





監督ヨゼフ・カステロは、2001年に彼のアイドルだったというジャック・ケルアックに思いを馳せた「American Saint」(ケヴィン・コーリガン主演)に続く2作目の脚本・監督作品。オフィシャルサイトに興味深いインタビューがある。この映画製作に関して2年を費やした彼等。映画が完成した時が、ロンドンで自爆テロの日だった、という。自爆テロ、聖戦、爆弾ベスト、西洋育ちのパキスタン人、アイデンティティ…。 キャストは、主人公ハッサンを演じ、本作の脚本も手掛けたアヤド・アフタルは、これが映画デビューという。「ミシシッピー・マサラ」「カーマ・スートラ/愛の教科書」「ダイヤルM」のサリタ・チョウドリー。「バッドサンタ」等のアジェイ・ナイデュ。「ディナーラッシュ」のマイク・マッグローン等が名を連ねた。
これは、賛否両論…見られなければならない一作。政治ドラマの革新的な様子というよりも、一人の男の人生がどう転がされていくか。主人公がパキスタン人である、という点でハリウッド映画とは、大きく色合いが変わるサスペンス、としても見る価値のあるドラマかもしれない。
クリンスト・イーストウッドが、硫黄島での激戦を描くのは、既に数ヶ月前からニュース等で配信されていたが、アメリカ側から描いた1本、日本側から描く1本、計2本の映画を製作するという。日本側から見た戦争、硫黄島激戦の脚本はアイリス・ヤマシタだと。彼女は、ハリウッド映画の脚本は初であったと思うが、ポール・ハギスが、サポートにつくのだろうか。両方の視点から描くのであれば、硫黄島の激戦は見る価値が大いにあると、思う。
自爆テロに関する作品は、カンヌ映画祭にも登場したが、本作品もアメリカ外の視線を意図したものとして、あって然るべき一作ではないか。無論、アチラとコチラのみならず、生まれた土地と育った土地の狭間でどういうアイデンティティを持ち得るか、という事には何処の国にいても同じ。なんとなく日本人、している私には、問われる映画という気がしてならない。
ちなみに、主人公に加えて、サリタ・チョウドリーのリアルで情熱的、そして微妙な表情を見せる演技と、子役の存在からは目が離せない、という感想もあった。(2005年/製作国アメリカ/アメリカ公開2005年9月30日・NY; LA 10月7日/日本公開未定)



▲Trailer


▲Extended Clip - 8'23"


▲Official site
オフィシャルでもTRAILERはご覧になれます。


●Directer:Joseph Castelo ヨゼフ・カステロ
●Screenwriter:Ayad Akhtar アヤド・アフタル
  Joseph Castelo ヨゼフ・カステロ Tom Glynn トム・グリン
●Cast:Ayad Akhtar アヤド・アフタル Nandana Sen Firdous Bamji Sarita Choudhury サリタ・チョウドリー Charles David Sandoval チャーリーズ・デイヴィッド・サンドハル John Ventimiglia  ジョン・ベンティミグリア Samrat Chakrabarti Aasif Mandvi アーシフ・マンドヴィ Ajay Naidu アジェイ・ナイデュ Kamal Marayati Mike McGlone マイク・マッグローン