昨日まで,大学入試の問題を素材にしていましたので,
今日は趣向を変えて小学生にも役に立つ話題を.
問題はお茶の水女子大付属の問題です.
問題 2つの整数1271と1517の最大公約数を求めなさい.
単なる計算問題と思うなかれ.ためしに計算してみると,
えらく手間のかかる作業になってしまいます.
そこで登場するのが,「ユークリッドの互助法」ですが,
その前に,この問題は1(2)ですので,(1)を紹介します.
(1) 2つの異なる自然数A,Bがある.A,Bが3の倍数であるとき,
A-Bも3の倍数になることを証明しなさい.
合同式の洗礼?を受けた皆さんなら,これは当たり前ですね.
この(1)は文字式でも簡単に証明できます.
つまり,
A=3a , B=3b とすると,
A-B=3a-3b=3(a-b) より, A-Bも3の倍数.
こんな手順です.
さて,この(1)をどうやって(2)に活かすか,と言いますと,
1517-1271=246 となりますが,このことは,
「1517の公約数と1271の公約数は,1271と246の公約数に等しい」
と言うことを利用します.
つまり,1517≡1271 [mod n ] …①
ならば,1517-1271≡1271-1271≡0 となりますので,
①のnを1517と1271の公約数とすれば,
1517-1271=246も,nで割り切れる数である,と言うことが分かります.
よって,1517と1271の間の関係を考えるのではなく,
1271と246の関係を考えた方が楽だ,というのが基本的な発想です.
では,1271と246の関係を考えるときには,どうすればよいでしょうか.
…同じ作業をすればよいですね.
1271-246=1025 となりますので, 次は1025と246
1025-246=779 ですので, 次は779と246 …,と続けます.
ただ,延々と同じ引き算をするのは面倒なので,
1271÷246=5余り41を利用します.つまり,この式からは
1271-5×246=41 と言う関係式が導かれますので,
「1271から246を5回引けば,41になる」と言うことが分かります.
これで,何度も同じ数を引く手間が省けました.
同じように,246と41の関係を考えればよいのですが,
246÷41=6 と246は41で割り切れてしまいます.
と言うことは,246は41(この数は素数です)の倍数となります.
さらに,1271-246×5=41が成り立つことから,
1271も41の倍数であり,1517=1271+246より,
1517も41の倍数です.
よって,1517と1271の最大公約数は41であることが分かります.
(なぜ,「最大」かというと,
それ以前に公約数が出てこなかったからです).
ちなみに1517=41×37
1271=41×31
となり,どちらも比較的大きな素数同士の積となっています.
ここまでに実行した作業が「ユークリッドの互助法」です.
具体的な作業としては,公約数を考えるときは,お互いを
割り算しあって,その余りについて考えていけばよい,
というものでした.
ためしに別の数でもやって見ましょう.
1591と731の公約数を考えます.
1591÷731=2余り129 ①
731÷129=5余り86 ②
129÷86=1余り43 ③
86÷43=2 で割り切れるので, ④
1591と731の最大公約数は43です.
作業の意味を確認しましょう.
①は 1591-731×2=129ですので,
1591と731と129は同じ数で割り切れる,と言うことが分かります.
同様に②は 731-129×5=86より,
731と129の公約数は,129と86の公約数でもある,と分かります.
以下,③,④と同じ作業ですが,
④で, 86=43×2 で余りがなくなります.
ということは,86は43の倍数であることが一目で分かりますので,
③より,86と129も43の倍数,②より731も43の倍数,と分かります.
(②の式は731-43×3×5=43×2ですので,731=43×(15+2)となります)
最後に①に遡れば,1591も43の倍数ですので,
めでたく,1591と731の最大公約数は43であることが分かりました.
さて,このようなケースはどうなりますでしょうか.
問題 1591と1457の最大公約数を求めよ.
作業をしましょう.
1591÷1457=1余り134
1457÷134 =10余り117
134÷117 =1余り17
117÷17 =6余り15
17÷15 =1余り2
15÷2 =7余り1
2÷1 =2 で割り切れました.
つまり,1で割って割り切れたので,最大公約数は1となります.
実は1591=43×37
1457=47×31 ですので,
この二つの数は「互いに素」となります.
このような場合にも,最後に最大公約数1を答えてくれるわけですから,
互助法の威力の程が伺えます.
ユークリッドはヘレニズム時代の偉大な数学者(らしい)で,
『(幾何学)原論』の著者として知られています.
「ユークリッド幾何学」とか「ユークリッド平面」に名前が残っていますね.
有名なエピソードはいくつもあるのですが,
「学問に王道なし」との発言とも結び付けられています.
(王様が「幾何学は有益だが,手間がかかりすぎる.
もっと楽にこれを身につける方法はないのか」と質問してきたときの
答えである,とものの本には載っています).
「学問に王道なし」とは至言ですね.
自分があれこれ学べば学ぶほど,この言葉の重みを実感する毎日です.