「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

客単価を30円上げたいと考えたとき、多くの店長は難しく感じてしまいます。しかし実は、300円の商品を10人に1人へ併売できれば、この目標は達成できます。併売率10%で十分ということは、10回おすすめして9回断られても問題ないという計算です。この許容される失敗数が明確になることで、スタッフの心理的ハードルは一気に下がり、提案行動が続けやすくなります。これこそが、クロスセルを現場に定着させる最大のポイントです。

クロスセルとは、購入商品に相性の良い別の商品を追加で提案し、会計の総額を高める販売手法のことです。ラーメンであれば餃子や唐揚げ、定食であればデザート、ビールであればおつまみ、さらに季節限定のトッピングなども代表的なクロスセル商品になります。重要なのは、何でも提案するのではなく、主力商品と相性が良く、迷わずおすすめできる商品に絞り込むことです。選択肢が多すぎると、スタッフの提案精度は下がり、結果も安定しません。

客単価アップを狙うときは、まず推奨商品を一つに絞り、併売率の目標を設定し、日々の販売個数を数値として見える化します。今日は何個売れたのか、誰が成功させたのかを共有することで、現場には自然とゲーム性が生まれます。売れたスタッフをその場で称賛し、小さな成功体験を積み重ねることで、提案は特別な行動ではなく、当たり前の動作へと変わっていきます。

また、クロスセルは単なる売上アップの手法ではありません。お客様にとっても、食事の満足度を高める提案でなければ意味がありません。相性の悪い商品を無理にすすめれば、押し売りになり、逆に満足度を下げてしまいます。だからこそ、料理の組み合わせやタイミング、声掛けの一言まで含めて設計する必要があります。

客単価30円の積み上げは、月間売上にすれば大きな差になります。10人に1人への併売、この小さな成功を毎日積み重ねることで、売上は確実に変わっていきます。クロスセルとは、根性論ではなく、数字と仕組みで実現する現場改善なのです。