飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる
NEXT5コンサルティングの雑賀です。

東京では今後、新規の飲食店出店はますます限られた企業に集約していくと考えられます。その背景の一つが、近年急増している定期建物賃貸借契約、いわゆる定借物件の存在です。再開発の増加や土地価値の上昇により、オーナー側は将来の建替えや用途変更を見据え、契約期間をあらかじめ定めた定借契約を採用するケースが増えています。

これまでの飲食店物件は、更新を前提とした普通借家契約が主流でした。しかし最近では、定借期間が5年、短いところでは3年という契約も珍しくありません。これは不動産オーナーにとっては合理的な選択です。都市の価値が上昇する中で、将来の再開発や用途変更の自由度を確保しておきたいという意図があるからです。

一方で、この契約形態は飲食店経営に大きな影響を与えます。定借物件では契約満了時に確実に退去することが前提となるため、飲食店側はこれまで以上にシビアな投資回収計画を立てなければなりません。

例えば5年契約の物件であれば、実質的には2年から2年半程度で初期投資を回収する設計が求められます。なぜなら、回収期間を長く見積もってしまうと、契約満了が近づいた時点で投資回収が間に合わないリスクが高まるからです。

現在、私のクライアント先でも出店単価は年々上昇しています。平均すると坪あたりの出店単価は税込135万円程度になってきています。20坪の店舗であれば、単純計算でも2,700万円前後の投資になります。ここに保証金や運転資金が加われば、出店時の総投資はさらに大きくなります。

この投資を短期間で回収するためには、安定して売上を作れる業態設計が不可欠になります。商品力、ブランド力、そしてマーケティングによる集客力が揃っていなければ、定借物件での出店は非常に難しくなります。

特に重要になるのがマーケティングです。開業してからゆっくり常連を増やしていくという従来型の立ち上げでは、投資回収のスピードに間に合わない可能性があります。SNSやデジタルを活用した集客設計を行い、オープン直後から売上を立ち上げる戦略が必要になります。

さらに、定借時代の出店では「撤退設計」も重要な経営要素になります。契約満了時には必ず退去することが決まっているため、出口戦略を最初から想定した出店計画を立てておく必要があります。設備投資の回収計画、減価償却の設計、そして次の出店への資金循環まで含めて考えることが求められます。

都市部の出店は、長く借りて営業するという発想から、限られた期間の中で投資を回収し、状況によっては次の出店へ移るという、より戦略的な店舗投資の時代へと変化しています。

この環境の変化の中で、出店できる企業とそうでない企業の差は、これからさらに広がっていくでしょう。業態の強さ、マーケティング力、資金管理能力。この三つを備えた企業だけが、都市部で出店を続けられる時代になってきています。