飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる
NEXT5コンサルティングの雑賀です。

人材教育を考えるとき、見落とされがちな視点があります。それは「世代ごとに育ってきた教育環境が大きく違う」という事実です。人は自分が受けてきた教育を基準にしてしまいがちですが、その前提が違えば、教育の方法も当然変わってきます。

現在35歳前後の世代は、2008年前後から本格化したパワハラ対策やコンプライアンス強化の流れの中で社会に出ています。企業の指導方法はそれ以前と大きく変わり、飲食業界においても「怒って伸ばす」という考え方から、「承認して育てる」という考え方へと教育の軸が移っていきました。

つまりこの世代は、強く叱責される環境よりも、認められながら成長していく環境で力を発揮しやすい世代です。努力を否定されると萎縮し、評価されることで次の挑戦に向かう傾向があります。

一方で、教える側の世代がかつての飲食店特有の厳しい指導環境で育ってきた場合、ここに無意識のズレが生まれます。自分が受けてきた教育が「正しい教育」だと思ってしまうからです。しかし教育の世界では、よく教えられた人はよく教えます。逆に言えば、時代に合った教育を受けていなければ、時代に合った教育はできません。

このズレは採用にも影響します。採用ページや求人広告で「根性が必要」「覚悟が必要」「厳しい世界です」といった言葉が並んでいる企業を見かけることがあります。もちろん嘘ではありません。しかし承認や成長機会を求める世代にとっては、その言葉は魅力ではなく警戒材料になります。

努力を評価してくれるのか。挑戦する機会があるのか。成長した実感を得られるのか。こうした要素を感じられなければ、応募そのものが起きません。

採用におけるアクイジション(獲得)と、入社後のリテンション(定着)は、新規集客とリピートの関係によく似ています。どれだけ多くの人を採用しても、入社後の育成設計がなければ人は定着しません。採用は入口に過ぎず、本当の勝負は入社後に始まります。

重要なのは、入社後にどう育成するか、どう承認するか、どう成長実感を設計するかです。できたことを言葉で認める。挑戦の機会を与える。できることが増えれば役割と評価が上がる。この流れを仕組みとして設計していくことが必要です。

教育も採用も、感覚で行う時代ではありません。世代背景を理解し、承認・対話・成長機会を組み込んだ仕組みをつくることが、これからの飲食企業の競争力になります。人材不足と言われる時代だからこそ、教育の設計力が会社の未来を大きく左右するのです。