「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。
お客様からクレームをいただいた時、現場でよく出てくる返答が「マニュアル通りにやっています」です。もちろん、スタッフに悪気があるわけではありません。一生懸命にやっているからこそ、自分たちの行動を否定されたように感じてしまい、防衛反応として「ルールは守っている」という言葉が先に出てしまうのです。
しかし、この瞬間に主語が「私たち」になった時点で、会話はズレ始めます。
クレームとは、ルールの正しさを争う場ではありません。お客様が体験した違和感や不快感を受け取る場です。こちらが正しかったかどうかは、本質ではないのです。たとえ100%マニュアル通りだったとしても、お客様が不快に感じたなら、その事実がすべてです。
「私たちは間違っていない」という姿勢は、無意識のうちに対立構造を生みます。お客様は「嫌だった」と言っているのに、店側は「正しい」と主張する。この構図になった瞬間、信頼は遠ざかります。
お客様を主語にして考えると、答えはとてもシンプルです。「マニュアル通りだったか」ではなく、「お客様が不快だったかどうか」。ここに焦点を戻すだけで、対応は変わります。
マニュアルは「正しさ」を守るためのものではありません。「お客様に安心してもらうための土台」です。その土台の上で、お客様が嫌な思いをしたなら、そこには必ず改善のヒントがあります。マニュアルを守ることが目的化すると、本来守るべきお客様の感情が置き去りになります。
だからクレーム対応で最初にやるべきことは、説明ではありません。共感です。正解を伝えることではなく、気持ちを受け止めることです。
「申し訳ございません。そう感じさせてしまったことが問題でした。」
この一言が言えるお店は強いです。自分たちの正しさよりも、お客様の感情を優先できるからです。
説明や背景の共有は、その後で構いません。まずは「その体験は残念でした」という立場に立てるかどうか。ここで差が出ます。
マニュアル通りかどうかよりも、お客様が気持ちよく帰れたかどうか。飲食店は、その一点で評価される仕事です。正しさよりも、体験。理屈よりも、感情。この順番を間違えないことが、クレームを信頼に変える唯一の方法です。
