「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

焼肉店でセントラルキッチン(CK)を作ることは、拡大期の経営課題をまとめて解決できる、強力な仕組み化投資です。焼肉という業態は、肉のカット、厚み、グラム、味付け(タレ漬け・揉み込み)が価値の中心であり、ここがブレた瞬間にブランドの再現性が落ちます。店舗ごとに仕込みを任せている限り、店長や職人の腕によって味が変わり、仕込みの基準が崩れ、売上が伸びるほど品質が不安定になっていきます。

CKで肉の加工・味付け・ポーション化・真空・ラベル・配送準備までを集約できれば、店舗側は焼く・提供・接客に集中できます。つまり、現場の仕事を「調理」から「提供」に寄せられる。これが焼肉店のCK導入が強い理由です。さらに採用面でも、肉職人依存が減るため人材確保が楽になります。焼肉店の出店が止まる最大の理由は、物件ではなく「人がいないから出せない」です。CKはその壁を外し、多店舗展開を加速させます。

一方で、CKは売上を作らないため固定費が重いことが最大のデメリットです。家賃、CK人件費、冷蔵冷凍設備の電気代、機械リース、消耗品、車両費、衛生管理費などが毎月固定で発生します。店舗数が少ない段階で先に作ると、固定費負けし、利益を食い潰す投資になりかねません。だから導入判断は感覚ではなく、損益分岐点を計算して行うべきです。

基本式はシンプルです。
CK固定費 ÷ 1店舗あたりの利益改善額 = 必要店舗数
この「1店舗あたりの利益改善額」を曖昧にせず、数字で組み立てます。

算出の内訳は3つです。
1つ目は原価改善です。売上×原価改善率で計算します。焼肉はポーションブレや廃棄が出やすく、CKで規格統一できれば1%改善は十分現実的です。
2つ目は人件費改善です。削減できる仕込み時間×時給で算出します。店舗側の仕込みが減れば、ピークに人を寄せやすくなり、人時売上も上がります。
3つ目は売上改善です。売上×売上改善率×粗利率。品質の安定と提供スピードが整うことで、客単価や回転率が上がるケースは少なくありません。

例えば、原価率が1%改善し、人件費が月5万円下がるだけでも、店舗利益は確実に増えます。店舗が増えるほど、その改善は積み上がり、CK固定費を吸収できるようになります。つまりCKは、店舗数が増えるほど強くなる仕組みです。逆に言えば、少ない店舗数で導入すると固定費だけが先に立ち、経営を圧迫します。

ただしCK導入には、数字以外の落とし穴もあります。物流の難しさです。焼肉の肉は冷蔵中心で温度帯管理がシビアになり、配送遅延や温度逸脱は即クレームに繋がります。また稼働率不足も危険です。週2日稼働では赤字化しやすく、CKスタッフの固定人件費が重くのしかかります。さらに、店舗が「結局現場で再加工」してしまえば、CKの意味は消えます。仕込みが戻り、ブレも戻り、固定費だけが残ります。

もう一つのリスクは、CKが強くなりすぎて店舗の現場力が落ちることです。焼肉は最終的に「焼き」と「接客」で差が出ます。CK化が進むほど、現場が作業に慣れ、価値提供の意識が下がると、売上は伸びません。CKは現場を弱くする仕組みではなく、現場を「接客と販売」に集中させるための仕組みであるべきです。

成功させる前提条件は明確です。レシピと規格の統一、店舗発注精度の向上、温度管理文化の徹底、CK運用への完全移行。これらが揃って初めて、CKは利益を生む武器になります。目安としては3店舗で検討、5店舗で導入が現実的、10店舗で必須級。CKは「作れば勝てる設備」ではありません。固定費を利益改善で吸収できる設計と運用があって初めて、拡大期の焼肉店を一段上のステージへ引き上げる仕組みになります。