「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

店舗の悩みは、新規集客ができれば9割解決する。これは、多くの現場で実感されている事実です。来店数が増えれば売上は上がり、空気も前向きになります。ただし、その「新規集客」だけを唯一の課題として捉え、広告費をかけ続ける経営は、想像以上に消耗します。実は、もっと楽で、再現性の高い改善ポイントが存在します。

その一つが「2X思考法」、いわゆるダブルアップ思考です。特定の数値を2倍にするとしたら、どこを伸ばすのが最も現実的かを考える方法です。売上は、客数×客単価で成り立っています。さらに分解すれば、新規客数、リピート率、皿単価平均、お買い上げ点数という四つの要素に分かれます。重要なのは、どこを動かすと最も効率よく成果が出るかを見極めることです。

例えば、新規の顧客単価が5,000円、リピート率が20%の店舗があるとします。ここで二つの選択肢を考えてみます。ひとつは、客単価を半分の2,500円に下げ、その代わり新規客数を3倍にする方法。もうひとつは、リピート率20%を40%に引き上げる方法です。数字だけを見れば、どちらも売上インパクトは大きそうに見えますが、現実的なのは後者です。

客単価を半分にするということは、価格設定、商品構成、オペレーション、ターゲット客層まで変える必要があります。ほぼ業態転換です。一方で、リピート率を倍にするために必要なのは、目の前のお客様への価値提供を高めること。料理、サービス、清潔感、導線、声掛け、再来店のきっかけづくり。今ある資源の延長線で取り組める改善がほとんどです。

新規集客は、広告費をかければかけるほど集客単価が上がる構造を持っています。競合が増え、媒体が成熟するほど、費用対効果は悪化します。しかも、広告を止めた瞬間に数字は落ちます。これに対して、リピート率の改善は積み上げ型です。続けるほど現場のセールス力は上がり、オペレーションも洗練され、同じ努力でも成果が出やすくなります。いわゆるLTVを上げる経営です。

だからこそ、QSCにこだわる意味があります。だからこそ、リピート率を毎日、毎週計測する価値があります。感覚ではなく数字で追うことで、改善は再現性を持ち始めます。アメリカの大学にあるホテル・レストラン学部では、数多くの繁盛店データが研究されていますが、新規とリピートの理想比率は6対4とされています。この数字は、短期集客と長期安定のバランスを示す一つの基準です。

新規を集める努力をやめる必要はありません。ただし、新規だけを追い続けるのは、最も疲れる戦い方です。集客後の数値、つまりリピート率や客単価、お買い上げ点数に目を向けることで、同じ売上でも難易度は一気に下がります。

売上を点で見るのではなく、構造として面で捉える。どの数字を2倍にすれば、最も楽に成果が出るのかを考える。この視点を持ち、集客とQSCを同時に設計していくセールスイネーブルメントが現場に根付いたとき、店舗は一段階上のスケールに入っていきます。