「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。
棚卸しというと、当日の数え方や集計作業ばかりに意識が向きがちですが、本当に重要なのはそこではありません。棚卸しの精度は、実施当日ではなく、その前段階の準備でほぼ決まります。準備が整っていれば当日の作業は淡々と進み、準備が甘ければ必ず数字は狂います。
まず見直すべきは、今月の仕入れ単価です。原材料価格は月ごと、時には週単位で変動します。単価が更新されていない棚卸し表を使えば、どれだけ正確に数量を数えても、算出される金額は正しくなりません。棚卸し前には必ず最新の仕入れ単価を反映させておく必要があります。
次に、新メニュー導入やメニュー改定によって使われなくなった食材、いわゆるデッドストックの整理です。棚卸し当日に初めて見つかる在庫ほど厄介なものはありません。これは本当に使うのか、廃棄なのか、別メニューで消化するのか。事前に判断しておかなければ、現場は迷い、数え漏れや二重計上の原因になります。
棚卸し表の準備も軽視されがちですが、極めて重要です。必要な品目が漏れていないか、単位は統一されているか、記入欄は十分か。表が使いにくいだけで、現場の集中力は一気に落ち、ミスが連鎖的に発生します。印刷漏れや最新版でない帳票を使うことも、よくある失敗の一つです。
在庫棚の並び替えも、事前準備の代表例です。同じ食材が複数箇所に分散していないか、古いものと新しいものが混在していないか。整理されていない棚は、数え間違いを誘発します。棚卸しは在庫管理の点検でもあるため、棚そのものを整えることが前提条件です。
棚卸しは単なる作業ではありません。実際原価を確定させ、原価管理の正否を判断するための経営行為です。ここで数字が狂えば、原価率も、人件費とのバランスも、すべての判断がズレていきます。準備不足の棚卸しは、正確な経営判断を放棄しているのと同じです。
だからこそ、棚卸しを作業として扱わず、工程として設計する必要があります。誰がいつ何を準備し、どこまで整えてから当日を迎えるのか。ここを明確にすることで、棚卸しは一気に安定します。正しい数字は、正しい準備からしか生まれません。棚卸し前の一手間こそが、原価を守り、経営を安定させる最大のポイントです。
