「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

現場で何気なく交わされる会話の中に、組織の状態を見抜くヒントがあります。その代表例が、「うちの店」「うちの会社」という言い方と、「この店」「この会社」という言い方の違いです。ほんの一言の差ですが、そこには働く人のスタンスが驚くほどはっきり表れます。

「うちの店」と言う人は、自分をその店の一部として捉えています。売上が良ければ自分事として喜び、トラブルが起きれば自分の責任として向き合う。完璧ではなくても、店や会社を内側から見ている感覚を持っています。一方で、「この店」「この会社」と言う人は、どこか距離を置いて外側から眺めています。起きている問題も成果も、自分とは切り離された出来事として捉えがちです。

もちろん、言葉遣いだけで人を評価することはできません。ただ、無意識に出る言葉ほど、本音や立ち位置を正直に映します。責任感や当事者意識は、研修やスローガンで身につくものではなく、日常の積み重ねの中で育つものです。そして、その積み重ねが最も分かりやすく表れるのが、普段の会話です。

制度や仕組みを整えることは、経営として欠かせません。評価制度、役割分担、ルールの明文化。これらは組織を安定させるための土台です。しかし、制度だけでは人の心までは動きません。どれだけ整った制度があっても、現場の会話が他人事であふれていれば、組織はどこか冷えたままです。

逆に、スタッフが自然に「うちの会社さ」「うちの店ではさ」と口にする職場は、空気が違います。自分の意見を言い、改善提案が出てきて、問題が起きたときも逃げずに向き合う。強制されているわけではなく、気づけばそうなっている状態です。これはマニュアルでは作れません。

この空気をつくる上で重要なのは、トップや管理職の言葉です。社長や店長が「この店はさ」「この会社ではさ」と距離のある言い方をしていないか。判断の場面で、誰かのせいにする言葉が出ていないか。日々の言動が、そのまま現場にコピーされます。理念よりも、評価制度よりも、まずはここです。

人は、所属していると感じた場所で力を出します。居場所だと思える場所に責任を持ちます。「うちの店」という言葉が増えてきたとき、組織は静かに、しかし確実に強くなっています。その一言を大切にできているかどうか。そこに、組織づくりの本質が詰まっています。