「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

飲食店経営において「月商500万円は必要」と言われる理由は、目標論でも精神論でもありません。構造の問題です。月商500万円を下回ると経営が破綻するというより、正確には「打てる手が極端に減る」状態に陥ります。つまり、選択肢がなくなるのです。

まず固定費の重さがあります。家賃、水道光熱費、通信費、リース、消耗品など、規模が小さくても毎月必ず発生する固定費は80〜120万円程度になります。月商300万円の場合、固定費だけで売上の3割以上を占めます。この時点で、原価と人件費を差し引くと、利益を残す余地はほぼありません。売上が低いほど、固定費は致命的に重くのしかかります。

次に人件費です。飲食店には最低限必要な人手があります。売上が少ないからといって、仕込みや営業を省略することはできません。月商300万円で人件費率30%とすると人件費は90万円。この水準では、教育に時間を割く余裕も、休みを確保する余白もなく、現場は常に綱渡りになります。一方、月商500万円なら人件費は150万円確保できます。役割分担ができ、育成に時間を使い、無理のないシフトが組める。この差は現場の安定性に直結します。

原価改善の効果も売上規模で変わります。原価を1%改善した場合、月商300万円では3万円、500万円では5万円の改善です。小さな差に見えても、改善を積み重ねる経営では大きな違いになります。売上規模が小さいと、努力しても成果が見えにくく、改善活動そのものが続かなくなります。

さらに借入返済と投資の両立です。毎月10〜20万円の返済があるだけで、月商300万円の店舗は一気に身動きが取れなくなります。広告、設備、教育への投資は後回しになり、守りに入るしかありません。月商500万円を超えて初めて、返済をしながら次の一手を打つ余力が生まれます。

そして最大の違いは、社長が現場から抜けられるかどうかです。月商300万円規模の店は、社長が立たなければ回らない構造になりがちです。これは努力不足ではなく、売上規模の問題です。月商500万円を超えて初めて、店長育成や仕組み化、多店舗展開が現実の選択肢になります。

月商500万円は成功ラインではありません。生存ラインです。ここを下回ると、改善しても楽にならず、人が育たず、未来の選択肢が一つずつ消えていきます。飲食店経営は、500万円を超えてからがスタート。それまでは、耐久戦なのです。