「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

拡大期の飲食店で、最初に静かに壊れ始めるのは売上でも人材でもなく「報告」です。店舗数が増え、現場が忙しくなるほど、悪い情報ほど上げにくくなり、社長のもとには都合の良い報告だけが集まるようになります。これは、組織が崩れ始める典型的な初期症状です。売上が伸びているうちは問題が表面化しにくく、社長も現場も「何となく回っている」感覚に包まれます。しかしこの状態こそが最も危険です。

本当に必要なのは、良い報告が増えることではなく、悪い報告が誰よりも早く社長に届く仕組みです。クレームの兆し、スタッフの疲労、数字の違和感、空気の変化。こうした小さな異変は、放置すれば必ず大きなトラブルへと膨らみます。拡大期ほど、現場は守りに入り、問題を隠そうとする心理が強く働きます。だからこそ、社長自身が「悪い報告ほど価値がある」という姿勢を明確に示し、上げやすい空気とルールを先につくっておく必要があります。

また、報告とは単なる数字の共有ではありません。売上や原価だけを見続けていると、現場の温度、疲労、違和感、人間関係といった質の情報は必ず消えていきます。本当に危険なのは、数字に異常が出るよりも前のこの段階です。感情や空気の変化は、数字よりも早く崩れの兆しを教えてくれます。

報告とは、経営と現場をつなぐ唯一の神経回路です。ここが詰まれば、どれだけ優れた戦略や数字管理をしていても、組織は必ず歪みます。報告が機能している会社だけが、拡大期の荒波を安全に越えていくことができます。拡大している今だからこそ、真っ先に点検すべきは「売上」ではなく「報告の質」なのです。