「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

これから人事評価制度を導入しようとしている飲食店企業にとって、まず理解すべきことは「人事評価は人の心を扱う制度である」という前提です。評価制度の目的は、社員の成長を支援し、能力を引き出すことにあります。一方で給与制度の目的は、役割や貢献度に応じて処遇を適正に決定すること。すなわち、この二つは本来まったく異なる役割を持っています。

しかし現実には、多くの企業で評価と給与が一体化されたまま運用されています。「評価が上がれば給与も上がる」「達成度が低ければ給与が下がる」という構造です。一見すると合理的に思えますが、この仕組みが現場にもたらす影響は決して小さくありません。

実際、大手飲食チェーンでは過去にMBO(目標管理制度)や成果主義を採用したものの、次々と撤退に追い込まれました。背景には、「数字の達成=人の価値」という短絡的な評価軸が、人の心を疲弊させ、組織の士気低下や離職を招いたという事実があります。数字で評価されること自体は悪くありませんが、数字だけが評価の中心になった瞬間、人材が育たず、組織文化が破綻していきます。

にもかかわらず、皮肉なことに中小の飲食企業ではいま、こうした成果連動型の評価制度の導入がむしろ増えているように見えます。限られた人員で売上をつくらなければならない現実があり、数値と処遇を連動させる仕組みは、ある意味で“わかりやすい管理”として重宝されます。しかし、そのわかりやすさが、気づかぬうちに人を追い込むリスクを孕んでいるのです。

「人を育てること」と「人の処遇を決めること」。
この二つを混同した瞬間、どちらも中途半端になります。育成は形骸化し、処遇は不満の温床となり、組織の健全性が損なわれていきます。

だからこそ、これから評価制度を整える企業に強く伝えたいのは、次の一点です。

評価は社員の成長を支援するためのもの。
給与は処遇を決めるためのもの。

この本質を踏まえたうえで制度を分離し、評価は「行動」「能力」「姿勢」を中心に、給与は「役割」「責任」「成果」を軸に決定する。それぞれの目的を明確化して初めて、人事制度は社員の心を動かし、組織を成長させる力を持ちます。

今こそ、人事評価制度を「社員の未来をつくる仕組み」として再定義することが、飲食企業の成長を支える土台となるのです。