「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。
離職率は、単に「何人辞めたか」を示す数字ではありません。企業の人材がどれだけ安定して働けているか、また採用・育成の仕組みが健全に機能しているかを測る、重要な経営指標の一つです。特に人材不足が深刻な飲食業界では、この離職率を正しく捉えなければ、採用に追われ続け、組織が不安定になる悪循環に陥ります。
ある飲食企業では、2024年4月1日時点の正社員数が80名、1年後の2025年3月31日には90名と増加していました。この1年間で12名が退職しています。離職率を算出するには、まず「平均在籍社員数」を求めます。これは期首と期末の在籍人数を足し、2で割るだけです。
(80人+90人)÷2=85人。これが平均在籍社員数です。
次に離職率は「離職者数 ÷ 平均在籍者数 ×100」で計算します。
(12人 ÷ 85人)×100 = 約14.1%。この企業の年間離職率は約14.1%という結果になります。
飲食業界では正社員の年間離職率10〜20%が一般的(アルバイトを含めると26〜30%)と言われており、今回の数値も平均的な範囲と言えます。ただし、成長フェーズの企業は採用・育成体制が追いつかず、離職率が20%を超えるケースも珍しくありません。
ここで重要なのは、離職率を「辞めた数」だけで議論しないことです。
例えば同じ12人が辞めても、在籍が30名の会社と300名の会社では意味が大きく異なります。平均在籍人数で割ることで、初めて企業の人材流動性を正しく判断できます。
さらに離職率には複数の算出方法が存在します。
・平均在籍者数を基準にする方法
・期首在籍基準
・採用者を母数にした早期離職率
・部門別・年代別の離職率
など、目的に応じて使い分けが必要です。
また、離職率を見る際は「採用充足率」とセットで管理することも重要です。採用が追いついていなければ、現場の負荷が増し、離職が連鎖的に発生します。つまり離職率は「採用と育成の整備度合い」を映し出す鏡でもあります。
そして何より大切なのは、自社で「離職率」という言葉を統一して扱うことです。計算式や母数が現場や部署ごとに異なれば、議論が噛み合わず、正しい対策にたどり着けません。人材の課題を正しく捉えるためには、共通の定義と基準を整えることが経営の第一歩となります。
離職率は、企業がどれだけ人を大切にできているかを映し出す重要指標です。数字の裏にある「理由」と「改善策」を見極め、人が育ち続ける組織づくりにつなげていくことが求められます。
