「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。
飲食店経営において、期首在庫と期末在庫をできるだけ安定させることは、正確な原価管理の基本です。在庫が月ごとに大きく変動すると、原価率が乱れ、利益の実態が見えづらくなります。なぜなら、実際原価は「期首在庫+仕入れ−期末在庫」で算出されるため、在庫が増えると原価率は一時的に下がり、逆に減ると上がるという仕組みになっているからです。
例えば、前月より在庫が10万円増えた場合、原価率は下がって見えますが、実際は食材が売上に転換していないだけです。逆に在庫が10万円減ると、実際には使い切った結果であっても原価率が高く見えてしまいます。このように、在庫変動が大きいほど数字が実態から乖離し、経営判断を誤るリスクが高まります。
また、在庫は利益だけでなくキャッシュフローにも直結します。期末在庫が過剰であれば、現金が在庫に変わり資金繰りを圧迫します。反対に在庫が少なすぎれば、欠品によって販売機会を逃し、売上ロスを生み出します。どちらも経営にとってマイナスです。
理想的なのは、必要最小限の定数在庫=基礎在庫5%前後を維持すること。基礎在庫とは、営業を止めずに回すための最低限の在庫量であり、これを基準に発注と仕入れのサイクルを一定化することが重要です。特に、発注頻度が週1回から2回の店舗では、1週間の販売予測に基づく「定数管理」が原価安定の鍵になります。
期首と期末の在庫がブレない店舗ほど、原価・利益・キャッシュの3要素が安定します。数字が読みやすくなり、改善スピードも上がる。在庫の安定=経営の安定という意識を全スタッフで共有し、棚卸し・発注・仕入れの精度を高めていくことが、健全な店舗運営の第一歩です。
