「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

飲食店では、たとえお客様が来なくても、オープンから閉店まで一定の人員を配置しなければなりません。なぜなら、仕込み、清掃、接客、調理、締め作業といった業務は、売上の大小に関わらず必ず発生するからです。この「売上に左右されない最低限の労働時間」を指して、ミニマムスタンダード(最低必要労働時間)と呼びます。

ミニマムスタンダードは、店舗運営の“安全ライン”であり、これを下回ると必ず歪みが生じます。例えば、清掃が十分に行き届かなくなれば衛生レベルが低下し、接客に余裕がなくなればサービス品質が落ち、調理工程を省けば商品の品質や安全性に影響が出ます。その結果、QSC(品質・サービス・清潔)の低下や、事故・クレームの発生といった重大なリスクを招くことになります。

一方で、過剰な人員配置は人件費率を押し上げ、利益を圧迫します。重要なのは、「削るか・増やすか」ではなく、「守るべき基準を見極めること」です。ミニマムスタンダードを設定し、その上で売上の波に応じて人員を柔軟に増減させる。このバランスこそが、安定した経営と現場品質を両立させるカギになります。

たとえば、平日ランチの人時売上や週末ディナーの売上構造をもとに、必要最低限の配置人数を可視化しておけば、シフト作成時に感覚で判断するリスクを減らせます。さらに、店舗ごとの基準を全店で共有することで、「どの店舗でも最低限の品質を守る仕組み」が確立されます。

つまり、ミニマムスタンダードとは単なる人員の下限設定ではなく、「店舗の安全・品質・生産性を守るための経営基準」です。売上が変動しても、守るべき基盤を維持することこそが、飲食店経営の安定を支える最も重要な考え方なのです。