「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

予算人件費率の根拠となるのは、店舗運営における最適な人員配置を示した「モデルワークスケジュール」です。これは、原価管理に理論原価が必要であるのと同じ考え方で、人件費管理にも明確な根拠がなければなりません。多くの店舗で実際の人件費率と予算人件費率に乖離が生じるのは、この“根拠となるモデル”が設計されていないことが大きな原因です。

例えば、月商800万円の店舗と700万円の店舗では、必要な人員数やシフト構成がまったく異なります。ピーク時間帯のスタッフ配置、仕込みや閉店作業の稼働時間など、売上規模に応じて最適な運営形態が変わるため、人件費率も当然変動します。にもかかわらず、高売上時の基準をそのまま低売上月にも適用してしまうと、現場の負荷が増大してQSC(品質・サービス・清潔)の乱れを招くか、逆に人件費が大幅にオーバーしてしまう結果になります。

正しい人件費管理を行うためには、まず日別・時間帯別の売上規模に応じたモデルスケジュールを設計することが重要です。たとえば「日商25万円時の人員構成」「日商30万円時の配置」「日商35万円時のピーク体制」といった複数のモデルを設定し、それを基に必要人員数と人時数を算出します。これにより、売上変動に合わせた柔軟なシフト調整が可能になり、無理のない人件費予算を組むことができます。

また、このモデルスケジュールを毎月の実績と照らし合わせて検証することで、現場の生産性や稼働効率の改善点も見えてきます。つまり、モデルを持たない管理は“感覚の人件費”にとどまり、精度の高い経営判断ができなくなるのです。

人件費率を安定させるためには、「売上規模に応じたモデルワークスケジュール」を明確に設計し、そのデータに基づいて予算を組むこと。これこそが、数字で現場を動かすための人件費マネジメントの基本であり、安定した店舗運営の土台となるのです。