「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

かつて「飲食店は立地が全て」と言われていた時代がありました。今から30年前、通りからの視認性やファサード(外観)の作り込みが売上を大きく左右し、いかに流動客を取り込むかが成功のカギでした。駅前・商店街・繁華街といった立地条件こそが最も重要な競争要因であり、多くの経営者が“場所選び”に命を懸けていた時代です。

しかし、現代はまったく異なる環境にあります。SNSの発展により、情報の流通経路そのものが変わりました。InstagramやTikTok、YouTubeなどの媒体を活用し、意図的に「行きたい」「食べたい」という興味関心を生み出せれば、立地が不利な場所であってもお客様はわざわざ足を運んでくれます。つまり、飲食店の成功条件は“見つけられる場所”から“見せたくなる店”へと変化したのです。これは飲食業界における大きなパラダイムシフトといえます。

一方で、今もっとも深刻なのは「人材の問題」です。かつては教育訓練に時間とコストを惜しまず、人を育てて店舗を成長させるのが当たり前でした。しかし、近年では人手不足や採用難、教育コスト削減の影響で、現場における育成の機会が減少し、即戦力依存の傾向が強まっています。その結果、オペレーションの質が不安定になり、離職率の上昇やサービス品質の低下を招いているのが実情です。

だからこそ、今の時代に改めて思い出すべきなのは「飲食店は人が全て」という原点です。どんなにSNSを活用して集客を成功させても、現場の“人”が育っていなければ、繁盛は一時的なものに終わります。人が育ち、仕組みが機能し、チームとして成長することで初めて繁盛は続いていきます。時代が変わっても、変わらない真理──それは「人の成長なくして、店の成長なし」。この原点に立ち返ることが、これからの飲食店経営の最重要テーマなのです。