「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。
仕入れ率が今月の予算内に収まったからといって、決して安心はできません。数値の背景を正しく読み解かなければ、思わぬ落とし穴に陥る可能性があります。重要なのは、仕入れ率だけでなく、関連する数値や前後の状況を多角的に確認することです。
まず注視すべきは基礎在庫です。基礎在庫が減っていないにもかかわらず仕入れ率が低い場合、それは一見良い状態に見えますが、単に在庫を取り崩しているだけかもしれません。その場合、翌月には仕入れ額が跳ね上がり、結果的に実際原価が上昇するリスクが高まります。
次に確認すべきは、棚卸額との関係です。たとえば、先月末の棚卸額が多ければ、その在庫を今月に持ち越していることになります。すると今月の仕入れ額は当然その分減るべきですが、減少が見られない場合は、仕入れや在庫の管理が適切に行われていない可能性があります。
さらに、実際原価が上昇しているケースも見逃せません。実際原価が高くなっている場合には、食材のロスや調理工程での歩留まり低下が起きていることが考えられます。仕入れ率が良くても、ロスが積み重なれば最終的な利益を圧迫してしまいます。
このように、仕入れ率という一つの数値にとどまらず、在庫の動きや実際原価、ロス率など複数の観点を組み合わせて判断することが求められます。経営数値は常に連動しており、単体では真の状況を映し出しません。だからこそ、前後の数字を正しく読み取り、全体像を把握する力が必要なのです。
こうした数値をもとに状況を的確に判断できる力は、マネジメント層にとって欠かせない重要な能力です。単に数値を報告するだけでなく、背景を読み解き、改善の打ち手に結びつけることで、初めて数値管理は経営成果へとつながっていきます。
