「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。
物流倉庫に掲げられる「直角運動」というポップは、一見すると単なる整理整頓の合言葉に思えるかもしれません。しかし、その意味するところは非常に深く、飲食店の現場にこそ応用できる考え方です。
倉庫業務では数千から万単位の細かな商品を扱います。商品が乱雑に積み上げられていれば、探すのに時間がかかり、破損やミスも増えてしまいます。だからこそ、棚やパレットを直角に整理し、整然と並べることが最重要とされています。視覚的にも整った状態は効率性を高め、事故防止や品質保持にもつながるのです。
この発想は飲食店の現場でも大いに活かせます。例えば、瓶ビールを冷蔵庫に収納する際、ラベルを同じ向きに揃えるだけで見た目が美しくなり、在庫管理もしやすくなります。客席で使うダスターを無造作に置くのではなく整列させる、空席の椅子を一直線に並べる、壁のポスターを斜めではなく真っ直ぐ貼る──こうした一つひとつの小さな工夫が、店舗全体の印象を大きく変えるのです。
直角に整った状態は、お客様に清潔感や秩序を感じさせます。無意識のうちに「このお店はきちんと管理されている」と安心感を抱き、信頼感へとつながります。逆に、椅子が曲がり、ポスターが歪んでいるだけで、料理やサービスにまでマイナスの印象を与えてしまいます。人は食事を「五感」で楽しみます。味覚だけでなく、視覚から受ける印象が体験全体を大きく左右するのです。
飲食店においてQSC(品質・サービス・清潔)の徹底は繁盛店づくりの基本です。品質やサービスを支えるのは、こうした細部へのこだわりにほかなりません。直角運動の発想を取り入れて店内を整えることは、お客様に快適さと信頼を届ける最も簡単で効果的な方法といえます。そしてそれを日々の習慣としてスタッフに浸透させることで、店舗文化となり、強い競争力を生み出していくのです。
