「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

どんな飲食店に入っても、最初に耳にするのはスタッフの「いらっしゃいませ」という一声です。この声色やトーンは、料理を口にする前に感じる“先味”であり、サービスの入口そのものです。温かさや活気が伝わる一言はお客様の期待値を高め、その後の食事体験を左右するほど大きな影響を持ちます。

声が与える「第一印象」の力

人は五感を通じてお店を評価しますが、その中でも聴覚から得られる印象は無意識に作用します。扉を開けた瞬間に「いらっしゃいませ」と元気に迎えられると、お客様は安心し、歓迎されていると感じます。反対に、無愛想で小さな声だったり、バラバラに不揃いな声が返ってきたりすると、その瞬間に「活気がない店だな」「教育が行き届いていないな」という印象を持ってしまうのです。これは料理を口にする前に形成される評価であり、第一印象がプラスかマイナスかで、その後の体験全体が変わってきます。

「先味」としてのサービス

料理の世界では、口に入る前の香りや見た目を「先味」と呼びます。同じように、サービスにも先味があります。それが「いらっしゃいませ」という声です。どんなに美味しい料理を出しても、最初の声で冷たさを感じさせてしまえば、お客様の心は閉じてしまいます。逆に、心を込めた明るい声で迎えれば、その瞬間から料理の味わいさえもより良く感じさせる効果があるのです。

教育ではなく「文化」として根付かせる

この声の大切さを理解しながらも、現場では形だけのマニュアルになってしまうことがあります。「声を出せ」と指示するだけでは本質的な改善にはなりません。重要なのは、スタッフ一人ひとりが「お客様に気持ちよく過ごしてほしい」という思いを持ち、その気持ちが自然に声に乗るようにすることです。これは単なる教育ではなく、組織の文化として根付かせるべきものです。

例えば、朝礼で「今日はどういう声を届けたいか」を確認する、ロールプレイで声の印象を体感する、といった小さな習慣を積み重ねることで、声の文化は自然と育っていきます。

まとめ

「いらっしゃいませ」という一声は、単なる挨拶ではありません。それはお客様にとって料理を味わう前の“サービスの先味”であり、第一印象を決定づける大切な要素です。温かく力強い声は、お客様に安心感と期待感を与え、食事体験全体を豊かなものにします。

飲食店が繁盛するかどうかは料理だけでなく、こうした小さな要素の積み重ねによって決まります。今日から「声」の力を見直し、組織の文化として根付かせることが、繁盛店づくりへの第一歩なのです。