「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

飲食店経営者にとって、「店舗数」や「年商」は成長を示すわかりやすい指標です。売上規模が拡大し、店舗が増えていく姿は、自らの努力やビジョンが形となった証であり、大きな喜びでもあります。しかし、その数字に対する感情的な焦りは、しばしば経営を誤らせる原因となります。

「もっと早く出店しなければ」
「売上を一気に伸ばさなければ」

こうした焦りに駆られて拡大を急ぐと、組織体制や人材の準備が整わないまま出店を繰り返すリスクが高まります。

焦りが招くリスク

準備不足のまま出店すれば、既存店舗のオペレーションに大きな負担がかかります。教育体制が整わないまま新店舗に人員を振り分ければ、サービス品質が落ち、クレームや不満が増加。さらに、過度な負担はスタッフの離職を招き、既存店の安定性すら失ってしまいます。数字を追う気持ちは自然なことですが、焦りに流されて進めた拡大は、長続きしない“土台の弱い成長”に終わってしまうのです。

優先すべきは「組織の成熟」

経営者が真に優先すべきは、目先の数字ではなく「組織の成熟」と「安定した収益構造の確立」です。1店舗ごとにしっかりと利益を残せる仕組みを作り、教育制度を整え、人材育成を進める。これらの土台があって初めて、次の出店は「リスクの高い挑戦」ではなく「成功確率の高い投資」へと変わります。

経営は短距離走ではなく、マラソンに近いものです。数年先を見据えて、足元を固めながら一歩ずつ進んでいく姿勢こそが、持続的な成長を実現する力となります。

成長スピードを決めるのは「外部」ではなく「自社」

市場環境や競合の動きは確かに気になる要素ですが、経営のスピードを決めるのはあくまで自社の準備度合いです。組織、人材、収益構造のいずれかが未熟な状態で拡大すれば、どんな好機も逆風に変わります。焦りは感情であり、外的要因です。しかしそれを力に変え、自社の基盤を冷静に固めることができれば、焦りは大きな推進力にもなります。

まとめ

飲食店経営において、「出店数」や「年商」を追いかける姿勢は間違いではありません。ただし、焦りに任せて進めた拡大は土台を揺るがし、結果的に数字を守るどころか崩してしまう危険があります。

大切なのは、組織が成熟し、収益構造が安定したときにこそ出店を進めること。自社の準備度合いを冷静に見極め、一歩一歩積み重ねる経営こそが、持続的な成長を生み出します。数字に振り回されるのではなく、数字を超える「基盤づくり」に時間を投資すること――それが繁盛を長く続ける唯一の道なのです。