「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

2025年度、最低賃金の全国平均は 1,055円から1,118円へと過去最大級の引き上げ幅(63円) となりました。さらに「106万円の壁」問題も再び注目されており、パート・アルバイト人材の就業調整が懸念されています。

特に人件費依存度の高い中小規模店舗や多店舗展開業態にとって、これは単なるコスト増ではなく、収益モデルの再設計を迫られる事態 と捉えるべきです。加えて、政府は今後1500円を目標に段階的な引き上げを掲げており、この流れは不可逆的です。

こうした状況下で、飲食店が優先的に取り組むべき対策を5つに整理しました。


1. 人時売上(人件費生産性)の徹底改善

最低賃金が上がったとしても、それ以上の 「人時売上」 を確保できれば、人件費比率を維持することが可能です。
•ピークタイムの集中稼働
•仕込みや清掃の事前化
•マルチポジション化による柔軟な人員配置

といった取り組みにより、スタッフ1人あたりの生産性向上を図ることが急務です。


2. 「106万円の壁」を見越したシフト戦略の再構築

年収106万円を超えると社会保険加入義務が発生し、手取り減少を懸念するスタッフが「働き控え」を選ぶ可能性があります。
その対策としては、
•短時間シフトの組み合わせ
•繁忙期・イベント要員の再配置
•雇用形態の多様化

を通じて、現場の柔軟性を高める必要があります。


3. メニュー戦略の転換による客単価・粗利の引き上げ

価格転嫁が難しい中で生き残るには、「数量」ではなく 「付加価値」 で勝負する発想が欠かせません。
•話題性や満足度を重視した限定商品
•リピートを促すセット設計
•テイクアウトやデリバリー展開

により、粗利額の最大化を目指すことが重要です。


4. 離職抑制とエンゲージメント施策の強化

時給が上がるほど、スタッフにとって他店への転職ハードルは低下します。
賃上げだけで定着を図るのは限界があり、以下のような 「非金銭的報酬」 を重視する必要があります。
•働きやすさ(待遇・制度整備)
•働きがい(評価制度・成長機会)
•仲間意識(心理的安全性の確保)

職場環境の魅力を高めることで、定着率とエンゲージメントを向上させられます。


5. 非接客業務の自動化・外注化の加速

限られた人材を「接客と商品提供」に集中させるため、非接客領域は自動化・外注化が必須です。
•レジのセルフ化、モバイルオーダー
•食器洗浄や夜間清掃の外部委託
•発注や在庫管理のデジタル化

これにより、労働集約型モデルから脱却し、持続可能な運営体制を築くことができます。


まとめ

「最低賃金引き上げ=コスト増=ピンチ」と捉えるだけでは、守りの経営に陥ってしまいます。むしろこの変化を、
•生産性の見直し
•組織設計の再編
•顧客単価向上

といった 経営体質強化のトリガー として活用できる企業こそ、次の競争優位をつかみます。

最低賃金が上がる時代を「逆風」ではなく「追い風」に変えられるかどうか。それが、飲食店の未来を大きく分けることになるでしょう。