「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

飲食店を経営する中で、「スタッフとの1on1ミーティング」を取り入れている企業が増えてきました。本来、1on1とは上司と部下が信頼関係を築き、成長を支援するための大切な時間です。

しかし、現場を見ていると、1on1が「1on1(対話)」ではなく「1vs1(対決)」のようになってしまっているケースが少なくありません。なぜ、建設的な対話の場が、いつしかピリついた空気になってしまうのでしょうか?


【1】「評価される場」という誤解が緊張感を生む

最も多いのは、1on1が“評価の場”として認識されているケースです。

本来は、フィードバックや相談を通じて部下の成長を支援するための時間。しかし、部下からすれば、

•「変なことを言うとマイナス評価されるかも」
•「弱みを見せたら損をするかも」

という警戒心から、本音を隠すようになってしまいます。

その結果、上司は「本音が引き出せない」、部下は「話しても無駄だ」と感じてしまい、両者の関係は硬直していきます。


【2】詰問型コミュニケーションが信頼を崩す

現場の忙しさから、つい上司も“問題解決モード”で1on1に臨んでしまうことがあります。

•「で、どうするの?」
•「いつまでにやるの?」

といった問いは、一見的確に見えても、部下にとっては詰められているように感じることも。気づけば、1on1は「相談の場」ではなく、「言い訳の応酬」のようになってしまいます。


【3】目的が共有されていない1on1は、ただの作業になる

もう一つの落とし穴は、「1on1の目的が社長やマネージャー側だけに共有されている」こと。

目的や期待が伝わっていないまま始まる1on1は、部下にとっては意味不明で、形式的な時間に感じられてしまいます。
•「なぜこの時間があるのか分からない」
•「やらされているだけ」

そんな気持ちでは、前向きな対話にはつながりません。


【4】過去の失望体験が、本音を閉ざす

過去に話したことが、

•否定された
•外部に漏れた
•評価に悪影響を及ぼした

という経験があると、部下は「話すことで損をする」と感じるようになります。こうした経験が重なると、1on1は形骸化し、誰も本音を話さない空虚な時間になってしまいます。


【では、どうすればいいのか?】

1on1を「対決の場」ではなく「成長の場」にするためには、まず上司(社長やマネージャー)が1on1の目的を再定義することが必要です。

•「評価するための時間」ではなく、
•「育成と相互理解のための時間」だと、明確に位置づけ直すこと。

そして、話の7割は“聴くこと”に徹し、3割は“問いかける”という姿勢を意識してみてください。

さらに、
•相手の悩みや感情を否定せず、まずは受け止める
•未来に向けて一緒に考えるスタンスを持つ

こうした「伴走型の対話」に切り替えていくことで、1on1はようやく本来の意味を持ち始めます。


終わりに:現場を変えるのは“信頼”から

飲食店の現場は、日々の営業で忙しく、トラブルも多い。それでも、スタッフとの1on1の時間だけは「安全で安心な場」でなければなりません。

1on1の質は、組織の信頼関係を映し出す鏡です。まずは対話のあり方を見直すことから、職場の空気と未来が変わっていくはずです。