『ペルソナ 三島由紀夫伝』(猪瀬直樹)読了。
本書は、元々は1995年に文芸春秋社から発行されたものが、今回、中公文庫から発
行された(※文庫化は文藝春秋に続き2回目)。猪瀬直樹の著作を読むのは、過去に
『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』に続いて3冊目だ(と思う)。過去のものにつ
いては、特に強い印象は残っていないのだが、今回、題材に惹かれて購入した。
オレがガキの頃、教育ママだったオカンは、オレに文学作品や偉人の伝記といった
本を読むよう、強く背中を押した。マンガなどは全く買ってもらうことが出来なか
ったが、オカンがOKを出す本は、ほぼ無制限で買うことが出来た。
幼児の頃の児童文学全集(正確なシリーズ名は忘れた。革の装丁の立派なやつだっ
た)に始まり、伝記のシリーズなどなど。周囲のガキがジャンプコミックやファミ
コンの攻略本を楽しそうに読む中、何でオレはリンカーンの伝記を読んでますかね。
その流れは中学に入った頃も続いており(さすがに小学校高学年の頃からはジャン
プコミックを隠れて買っていたが)、ひたすら国語の資料集とかに載っている文学作
品を読め読めと薦められた。太宰治とか島崎藤村とか、そんなんですよ。
ただそうして読んだ名作の多くは、オレにとって、心の底から全く面白くなかった。
とにかく辛気臭いというか、陰々滅々としたヤツが陰々滅々な悩みの果てに陰々滅
々とした行動をして死んだり逃げたり希望を見出したりする話がやたら多いな、と
か感じていたように思う。
ただ不思議なことに、内容は同じように陰々滅々としていても、この作家はまだ読み
やすいといったケースもあり、オレにとっては、三島は比較的読みやすかったので、
代表的な作品はおおよそ読んだ。ガキの頃は背景は理解できていなかったが、三島
が自衛隊に乱入して割腹自殺したという知識も、何となく興味を惹いたのだろうと
思う。
さて本書は、三島由紀夫の祖父:平岡定太郎に遡って、平岡家がどういう家であっ
たか。その中で平岡公威(三島由紀夫)がどのように育ち、どのように生きること
になったのかを追いかけている。これは面白かった。1人の人物の人生を追うノンフ
ィクションとしては、佐野眞一っぽい構成とも感じた。
三島由紀夫の祖父と父(平岡梓)が官僚だったこと、祖母が三島の人間形成に大き
な影響を与えたことなどは、大まかには知っていたが、本書を読んで詳細を知ると、
驚くような内容も多かった。
三島本人の話ではないが、平岡定太郎がどういった人間で、原敬と関わる中でどうい
った活動をしていたのか。平岡梓がどういった人間で、三島の死後、その著作でどう
いったことを述べていたのかなど知ると、三島があのような生き方になったことが
何となく分かるような気がする。
また、三島自身が処女作を発行するために必死に動いた姿、名を挙げる中で年相応
に調子に乗っていく姿を見ると、三島にも楽しい時間があったのだと、ちょっとホッ
とした。
三島事件に突入していく頃の描写にはやや納得のいかないところもあるが(オレは
三島が森田必勝に引きずられた面もあるのではと考えているので。ただ、この点の
言及が無いのは、本書があくまで三島の評伝だからとも思える)、大変、面白い本
でした。オススメです。