岸田総理は今度のASEAN会議で、ASEAN諸国とデジタル人材育成をしよう!と提唱するらしい。しかし日本はDXの分野でも、生成Aiの分野でも欧米からは致命的に遅れていることは否めない。そんな国から誘われても何のメリットもない。どうせなら欧米先進国から誘ってもらいたいはず。実は日本だっておなじなのだ。既にアジア諸国は優秀な人材をどんどん育成しているので、日本はまだそんなことを言っているのか? と呆れられるのがオチではないだろうか。
昔から日本の会社の中では、コンピュータによる事務処理部門の人たちに「システムの人」というレッテルを貼り、出世街道から外れた人たちのように見る風潮がありました。例えば、営業部門では使えないような人や上司から切り捨てられた人たちの掃きだめのようなポジションです。これはとても失礼なことです。
そもそも「システムの仕事とか言って、ゲームで遊んでるんじゃないのか?」という誤った認識の高齢経営者が多かったからです。これこそ「老害」です。
私は銀行員時代に、多分、酒が飲めないから営業には向かないという理由で支店の営業からこの部門に飛ばされました。当時は「あいつも終わったな」などと陰口をたたかれたものです。その後5年間塩漬けになりましたが、運よく本店の企画部門に抜擢され、行内の情報化プロジェクトチームの事務局を任されました。私はこれからはこの分野が大事なのだと信じてましたから、文句も言わずに黙々と働きました。自分でも自腹で高いパソコンとソフトを買い、パソコン通信も始めたりしました。当時はバブルの真っ最中でしたから予算はいっぱい付けて貰えたので、私は役員に率先してパソコンを使ってもらおうと考えました。
ある日、一人の専務の執務室にパソコンを設置しに行くと、専務からこう言われました「そんなものは、私には必要ないよ。これだけで充分」と言って、小さな手帳を取り出して振って見せました。なるほど、この人は大した情報を扱っていない人なのかと大いに幻滅したものです。他の役員も似たようなものでしたから、100万円ぐらいしたパソコンセットはその後、それぞれの役員室の片隅に埃を被って放置されていました。だから情報化なんて一歩も進みませんでした。
日本はパソコンは作っていましたが、それをビジネスに利用する人や会社が少なく、失われた30年の間に世の中がインターネットを中心とするネット社会にどんどん発展していく意味を理解できず、欧米から決定的な遅れをとってしまいます。その間、日本のメーカーはパソコンもスマホも撤退し、半導体も液晶画面も撤退し、産業界としては完全な負け組に陥っていきました。いったい日本の企業何をしていたのでしょうか。
話を変えて今度は人材育成に目をむけてみましょう。
こちらはもっと悲しい現実です。いわゆる「デジタル人材」を育てるには、高校生が志望しなくては始まらないのですが、高校教育は相変わらず古い受験教育に染まっていて、そんな勉強にいくら力を注いでもDXやAiの展望が開けることは全く期待できない。
第一、英会話が身につかない英語教育ですから、何の役にも立ちません。だから日本は教育改革から手を付けるべきなのです。Asean諸国と相談する前に、「まず隗より始めよ」ではないでしょうか。今までの日本の若者は受験勉強に明け暮れ、大学に入ると遊びまくる。本当に身につけるべき学問はどこでいつ学ぶのか? かく言う私もそう言うダメな学生でした。しかしその後の仕事人生を長く経験して振り返ると、あの頃の時間の使い方が-本当にもったいなかったことを悔やみます。
猫も杓子も有名大学を目指して、一流企業に入ることを目標にしてきましたが、もうそういう生き方は昭和の時代までで終わったのです。これからは専門性を身に着けることを目標にして、自分で会社を起業する方がいい。
